地理バカ日誌 ☆*:. 地図の園 .:*☆

地理ネタ、地図ネタなど、いろいろ気ままに書いています。

             by まつおか秘密研究所

センター試験ネタでⅡ

2020-01-25 16:21:56 | 学問
 続いては、2020年度・地理Bの「第2問・問4」から、下の図。

 

 問題の難易度としては、かなり易しい方?

 問題文(一部改変)は、
 図中のカ~クは、米の生産量、輸出量、輸入量のいずれかについて、上位12か国・地域とそれらが世界全体に占める割合を示したものである。 カ~クは、それぞれ何を表しているか?
 ・・というもの。

 私が受験生の頃は、コメの貿易といえば、「輸出はタイがダントツで一位(でもって、アメリカが実は二位なんだよ!)」というのが頭に入れておくべき必須事項という風でしたが、最近はインドが一位で、ベトナムとタイが二位争いをやっている感じでしょうか。 それを知っていれば「キ=輸出」とすぐ解かるところでしょうか。

 もっとも、そうじゃなくとも、コメがどういうところで生産されるか(コメはもともと熱帯から亜熱帯の植物で、比較的湿潤な気候である必要性)くらいはザックリでも知っているだろうから、それで十分正解は導けるという問題。

 まず、「カ」は、中東諸国やシンガポールに●がついているところに注目。 中東のような乾燥地域傾向の地域や、湿潤でも国土の狭いシンガポールでコメを世界上位に入るくらいに輸出できるほど生産しているとは思えないので、「輸入」だと直ぐわかる。

 「キ」は、生産量だとしたら、国土面積が広い中国の値が小さすぎ・・・・ということで、「キ=輸出量」で「ク=生産量」。


 ところで、今回この図をとりあげたのは、わざわざこんなことを書くためではなくて、図の表現法に注目したから。

 統計地図は、そこに表現するデータの形から大きく「絶対分布図」と「相対分布図」に分けられますが、両者の違いは第一義的にはデータを何らかの形で相対化して集計地域(国や都道府県など)の面積の違いによる量の影響を排除できているかどうか。 人口密度(人口を面積に対して相対化)とか構成割合(内訳の量を全体の量に対して相対化)、変化率(変化量を変化前の量に対して相対化)など。 この場合も単位は「%」なので相対化してはいますが、それだけで相対分布図だと捉えるのは早計で、元の数量のまま表現しても基本的に図の姿は変わらない。 ただ、世界全体の量に対する構成割合にすることで標準化され、異なるデータ(生産量、輸出量、輸入量)の間での比較がしやすくなる(そのあらわれとして凡例を共通化できる)わけですね。
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久しぶりにセンター試験ネタで

2020-01-25 09:30:40 | 学問
 今回は、先日行われた2020年度・大学入試センター試験の「地理B」で出題された主題図から。
 ところで、センター試験は今回が最後、次回からどんな形になるのか・・・・ということで、その移行的な意味で教科によっては従来と少々傾向が異なる出題がされたり、との報道も耳にしましたが、地理についてはどうだったのでしょう?

 私は、ちょうどセンター試験が始まったタイミングで大学受験を経験した世代ですが、そのときも共通一次に比べると実施時期が早まるとか、出題傾向が変わるかも、だとかいろいろ言われましたが。 そんな私から見ると、長期的には、地理の出題傾向もだんだん変わってきてて、ざっくりした基礎知識で十分であって、あとは地図や資料の読解力、論理的な思考力(推論力)がある程度あれば高得点できるという、本来的な好ましい姿になっているように感じているのですが・・・・

 前置きはこれくらいにして、今回は地理Bの「第1問・問6」から、下の図。



 問題文(一部改変)は、
 自然災害の種類やその発生頻度は、各地域の自然環境の特徴や生活と密接に結びついている。 図は、いくつかの自然災害(*)について、南北アメリカにおける2008~2017年の発生数(**)を国別に示したものであり、タ~ツは、地震、森林火災、熱帯低気圧のいずれかである。 タ~ツはそれぞれどの災害について表したものか?

 * 死者10名以上、被災者100名以上、非常事態宣言の発令、国際援助の要請のいずれか一つ以上をもたらしたもの
 **一つの災害が複数の国に被害をもたらした場合は、それぞれの国に発生数が加算される

 ・・・というもの。

 受験生一般には、こういうの、どう見るのでしょう?
 「森林火災の件数なんて、教科書に載ってないよ・・・」とか、思ってしまったりするのでしょうか。 もちろん、この解答のために、そんな情報を細かく知っている必要はありません。

 ところで、画的には、円シンボルのサイズがちょっとデカいでしょ!?と思ってしまいますが、3枚セットなので成り立つという感じか。 その円シンボル、凡例をちゃんと見なければなりません。 サイズが統一されていません。 つまり、災害によって、単位期間(今回は2008~2017年の10年間)における発生頻度が違うということ。 こういう部分もちゃんと読み取る必要がありますし、またそこに意識が向けば、これだけである程度見えてくる部分もある。

 「タ」だと、最大値はメキシコで30回くらい? 「チ」は最大で十数回と見ておけば良いでしょうか。 「ツ」は凡例の最大シンボル(6回)よりは多そうにも見えるけど、メキシコとかペルーで7~8回といったところ? そうすると、10年間とはいえ、死者が10名以上も出たりするような地震が「30回」なんて頻度で起きたんじゃあ、たまったものじゃない。 だから「タ」が「地震」というようなことは、まず考えにくい。

 それから、そもそも3つの災害のうち、森林火災は、一件が及ぼす範囲が格段に狭いですよね。 地震や熱帯低気圧(台風など、この問いの場合はハリケーン)は、一件の発生で、複数の国に影響が及ぶことは多い。 中米のカリブ海あたりには面積が小さい国がたくさんありますから、そこでこれらが発生すると軒並み影響を受けることになる。 加えて、熱帯低気圧は毎年起きますから(地震については、幸運にも大きなのは無い年もある)・・・・なんてことも思い浮かべられるかどうか。

 ・・・と考えただけでも、「タ=熱帯低気圧」、「チ=森林火災」、「ツ=地震」とは見えるのだけど、まだちょっと論拠が弱いか・・・

 ハリケーンは、夏、海水が日射で温められて発生するわけで、そうすると中米、カリブ海からアメリカにかけて影響が大きくなるわけですし(つまりは「タ」の分布と一致)、 森林火災は、乾燥度が高いと起きやすいこと、それからこれ大事なポイントですが、国土面積が広いほど発生回数は多くなりやすい(これ、当たり前のことなのだけど、図からそこまで考えを至らせること、生徒さん、学生さん、一般になかなかできないですよね)のでアメリカとかで多くなる(つまり「チ」と一致)、 地震については変動帯(≒新期造山帯)の分布と関連が深いので(つまり「ツ」と一致)。

 さらに補足すると、森林火災の場合は、森林の近くに街があるかどうか(人的被害が出やすいかどうか)も、この問いの場合には関係あるので、ブラジルの熱帯雨林の場合は、乾燥度が低いのでそもそも発生しにくいが、したとして人口密度が低いのでこの問いの「回数」にはカウントされにくいということに。
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