百合とオレンヂ城Ⅱ

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大菩薩峠(だいぼさつとうげ)

2006-04-04 20:27:51 | 歴史小説
 
 大菩薩峠の作者・中里介山によると大菩薩峠には
特定の主人公はいないそうでつまり、群像劇だ
そうですが、
「人間界の諸相を曲尽して大乗遊戯の境に参入
するカルマ曼荼羅の面影を大凡下の筆にうつし
見んとするにあり」
 と作者様はむずかしーい事を言うとります。
 要するに人いっぱい書いたよーいろいろ
するよー、です。(おい)
 
 大菩薩峠は宮沢健治と谷崎潤一郎がファン
だったそうです。
 
 >ストーリー
 時は幕末。
主人公の一人机龍之助が大菩薩峠で
一人の老巡礼を斬る場面から始まります。
大菩薩峠の由来が語られたり、猿の群れの
恐ろしさが伝奇風に語られます。 
 斬られた老巡礼の孫娘お松、そのお松を
支える義賊・七兵衛。
 机龍之助は剣客・宇津木文之丞を奉納試合
で殺し、その妻お浜を娶ったと思いきや
またも殺害。
 更に悪行を重ねる机龍之助。
そして、机龍之助を仇と狙う宇津木文之丞の
弟・兵馬。悪徳旗本・神尾主膳などなど他にも
様々な登場人物が出て壮大な群像劇を展開
します。
 
 かなり登場人物が多いので、書くのは
机龍之助ひとりに絞りますが
 机龍之助はかなり冷たい性格です。
 宿で心中しようとする人を見ても何も行動
しません。
まるっきりの悪党でもありませんし、心中で述懐
も葛藤もしますが冷とく突き放した感じです。
 いや、
そんな簡単な心中ではなく作者中里介山曰く
「大乗遊戯の境に参入するカルマ曼荼羅の面影」
でしょう。
 彼の複雑な内面を表している、かもしれません。 

 デスノ-トのライトみたいにわざとらしく
小悪党ぶる事がないだけ清いかも。

 机龍之助のモデルは元祖・音無しの剣の使い手
であった高柳又四郎だそうです。
 山田風太郎の指摘だったような。
 
 登場人物が多いという事は誰を主人公にして
見てもいいわけですし、そうすると様々な見方
解釈ができます。
 とにかく風雲児たち、みたいに大勢の人が
いろいろな場所で会い影響し合い分かれたり
また出会ったりします。
 個人的には祖父を斬られ、その後可哀相な
運命をたどるお松(それだけじゃないですが)
、そのお松を支えながら復讐の助けも
するしお松の為には盗みもする義賊・七兵衛、
あたりに次はスポットライトを当てて読み
たいです。
 

大菩薩峠の舞台は幕末なので新撰組もちろん
出てきます。
 新選組が清河の命をば狙い、
駕籠に近づいた、その時、中から出てきたは
なんと剣豪・島田虎之介!(勝海舟の剣の先生)
 はい、歴史的にはウソです。ですが山風は
「中里介山は知っててわざとやってるんだろう」
と武蔵野水滸伝で言っています。 
 こういうユーモアとか知識に裏付けられた
トンデモをわかるのはイキですね。
クソリアリズムだけが全てではないです。
山風、こういう作品等から色々学んだ、と
思います。
 
 でその新撰組ですが、
はっきり言って外道な集団です。
(机龍之助が入隊するくらいだから)
芹沢鴨が普通の悪党ですが鴨を暗殺する時
平助や沖田が鴨を闇討ち同然で暗殺しお梅さん
には「いい女だな」と言ったり蹴っ飛ばしたり
する最低の奴らになってます。

 山崎蒸クンも出てくるのですが、水戸の烈公・斉昭
の攘夷棒を装備しています(棒術使いですから)
 それに、登場人物紹介にも載っています。
 大菩薩峠にしろ吉川英治の「貝殻一平」に
しろ近藤以外で描かれる事のあまりない新撰組隊士
の中では結構優遇されているのではないでしょうか。


今までの感想は全て大菩薩峠の一巻の内容ですが
一巻はわりと新撰組が出てきまして、
他に「壬生と島原」という章がありまして、
壬生はもちろん新撰組の事ですが、
島原についての描写もあるのですが、
これが意外にも、汚い汚い。
昔の光、今いずこ?です。
 滝沢馬琴も「塀が傾いている」と詩に書いた
と本文中にあるのですが随分、廃れて時が経って
いるんですね。
 島原なので当然(?)輪違屋さんも出てきます。
 
 
 山南「これがホントの傾城でしょうか?」
 土方「笑えねぇこと言うんじゃねぇ」
 
 幕末に志士が来て、おのぼりさんが、
「島原さ、行くべぇ」と再びの島原フィーバー
が来たとも書いてあります。
「なんでぇ、きどりやがって」
「古くとも流石は島原」
と両極端な感想を持ちましたとさ。
 
 1巻の「壬生と島原」の章を読んで思い出したの
が「大島渚」の新撰組映画・「御法度」
(というか前髪の惣三郎)でした。
 偶然ですが富士見書房の時代小説文庫版の
大菩薩峠で大島渚があとがきを書いている巻があり
まして当時の思いでも語っていました。
 なので結びつけてしまいましたが、いくつか
共通点があります。

 「御法度(前髪の惣三郎)」にも島原や輪違屋も
出てきますし、もちろん新撰組隊士も出てきます。
 大島渚は「壬生と島原」みたいな雰囲気が作り
たかったのか、もしかして御法度は監督なりの
大菩薩峠だったのでしょうか?
 全てただの推測ですが。

山南「輪違屋さんが間違い屋さんにならないと良いですね」
土方「島原は男をおかしくするのかよ?」 
 
 甲源一刀流は時代劇であまり良いイメージがない
のは机龍之助が甲源一刀流の使い手であるこの
小説から来てるのでしょうか?
 燃えよ剣の六車宗白、燃えよ剣をバイブルと
する、るろうに剣心のいとうみきお(比留間も
実は実在の甲源一刀流の使い手から取られている)
などなど。
 

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