mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

与謝野晶子和歌 【瑠璃光】その十一 

2014-05-26 02:30:52 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
地震の夜半人に親しきこほろぎのよそげに鳴くも寂しかりけれ


月もまた危き中を逃れたる一人と見えぬ都焼くる夜


みづからの乱れ心の相をして都の半燃え立ちにけり


誰見ても親はらからのここちすれ地震をさまりて朝に到れば


空にのみ規律残りて日の沈み廃墟の上に月上りきぬ


傷負ひし人と柩が絶間なく前わたりする悪夢の二日


人あまた死ぬる日にして生きたるは死よりはかなきここちこそすれ


露深き草の中にて粥たうぶ地震に死なざるいみじき我子


都焼く火事をふちどるけうとかるしろがね色の雲におびゆる


こころをばいまだ知らねど妖雲のたつみの方に盛り上りたる

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