あるいは魔法の箱

　透明なポリプロピレンの道具箱を持っています。
　シャープペンの芯、ホチキスの針、ボンド、糊、テープ。
　いろいろな物を、適当に放り込んでいます。
　あまりにも乱雑で、何が入っているのかわからないうえ、蓋が閉まらないこともあるので、ときどき整理をします。
　散らばっているクリップを、さらに小さいケースに入れ、入りきらないものは捨てます。
　どうしてか、クリップは増えていきます。
　気づくとまた散らばっていて捨てます。
　テープもたくさんあります。
　セロテープ、貼ってはがせるテープ、マスキングテープ、メンディングテープ、ドラフティングテープ、両面テープは幅が違うものが3つ。
　のりはヤマト糊とスティク糊。
　ええと、これはなんだろう？

細かいこだわり

　1日の大半を家で過ごすためか、スリッパが短期間でへたります。
　底が減るのはもちろんのこと、両脇が切れたりします。
　きっと日に5000歩は歩いている、そんな気がします。
　新しいスリッパを探すと、気に入るものがなかなか見つかりません。
　探さないとサクッと見つかるので、そんな時は迷わず買います。
　常に2、3足のストックは欲しい。
　ルームウェアに合わせて、コーディネイトをするのもいい。
　外では履けないような、派手な色を選ぶのもいい。
　でも、トラの手のスリッパは履きたくない。

これは何かあった時のためなので

　棚の奥に置いてある、ペットボトルの水を調べました。
　非常用に保管しているものです。
　来月で消費期限が切れてしまうものが何本かありました。
　買った時には、ずっと先のことだと思っていたのに、あっという間にその日はきます。
　非常用のビスケットも同じです。
　気づいたら、もう食べなくてはいけない。
　水もお菓子も、食べるのが辛い、というようなものではありません。
　こんな機会でもないと、ビスケットは食べない。
　抹茶味も、早く賞味期限が来ればいいのに。
　そう思うのなら食べればいいのに。
　でも非常用なのです。

お世話になる季節到来

　カッターで紙を切っていたら、紙で手を切ってしまいました。
　手が乾燥しています。
　去年買ったハンドクリームが、まだ残っています。
　あれ？　ない。
　チューブをいくら絞っても、何も出てきません。
　切れてしまった。
　ハサミでチューブを切ります。
　中を見ると、チューブの縁に、まだ少し残っていました。
　2つに分かれたチューブを、つないでフタをします。
　試供品のように小さくなったハンドクリーム。
　本当になくなる前に買ってこよう。

身近な発見

　薄暗くなってきた夕方、家に向かって歩きます。
　公園の脇の歩道は、犬を散歩させる人、仕事帰りの人、わりと多くの人が通っています。
　普段、こんな時間にこの道を歩きません。
　ちょっとした発見です。
　公園内の木々の間に、橙色に染まった空が見えます。
　しばらく行くと、木が途切れ、空が広く見える場所に出ました。
　強烈なオレンジ色と、上空、濃紺に変化していくグラデーション。
　それと、連なる山のシルエット。
　ここから遠くの山が見えるなんて知らなかった。
　この時間、この場所に来なければ気づかなかったこと。
　ちょっとした発見。