建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

建築紛争を解決するための裁判外手続き、あれこれ。

2014年11月09日 | 法制度
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

今週は、住宅紛争審査会の紛争処理委員向け研修に参加しました。
(豆蔵は委員ではないのですが)
毎年やっている(らしい)この研修、今年は前半が騒音トラブル、後半がマンションの建替えがテーマで、
仕事の都合で、後半のみ参加です。

マンションの建替えは、先週も書きましたが、今後も大いに問題になりそうなテーマ。
そう簡単に手を出せる問題ではないけれども、ケンチクベンゴシとしては、概略を押えておく必要はあります。
(昨年、本を書いた時に多少は勉強したはずなのですが)

さて、本日は、裁判所以外の紛争解決のための第三者機関がテーマ。

まず、
住宅紛争審査会とは、安価な手続費用で、住宅会社と施主の間のトラブルを和解で解決するという機関です。
但し、対象が、住宅性能表示を取得しているか瑕疵保険に加入している「新築住宅」のトラブルに限られるところが残念。
紛争処理委員として当事者の間に入るのは、弁護士と建築士。
法律のことは弁護士が、建築のことは建築士が、それぞれの専門性を生かして対応します。

つまり、先の研修会には、一定以上の経験を有する弁護士と建築士が数百人も集まったわけです。
(独特の雰囲気でした)

住宅紛争審査会で成立した和解には、裁判所の判決や裁判所で行う和解のような強い強制力はありませんが、
開催の日程や間隔、進め方などで比較的融通が効くというイメージです。裁判所に行くよりも気軽に使えると思います。

似たような手続きでは、建設工事紛争審査会というものもあります。
こちらは、住宅に限らず、また、発注者とのトラブルに限らず、元請・下請関係などにも使えます。

同様に一定の経験を経た弁護士と建築士が紛争処理に当たってくれるのですが、
複数県で仕事をしている会社(特定建設業)とのトラブルは、中央、つまり国土交通省の扱いになるので、
その道の第一人者と言われる有名な先生(大学教授や建築家)が出てこられて、ビックリする場合もあります。

さらには、弁護士会で行っているADR(裁判外紛争解決手続)で調停をする場合もあります。
諸々の制約がなく、いろんな紛争やリクエストに応じてくれる代わりに、お値段はやや高め(数十万円とかにもなる)。
しかも、弁護士会によって値段が違う!
東京の場合は、弁護士会が3つもありますから、お値段で比較するなんてこともあるでしょうかね。

ベテランの先生方は、こうした機関に重ねて委員の登録をしていらっしゃるので、
別なところでまた出会う、という先生も少なくありません。
数が多い東京でもそうなのですから、地方では、さらにお馴染みのメンバーになってしまいそうですね。

通常、裁判で訴える前の手続きとしては、裁判所の調停を思い浮かべるところでしょうけれど、
建築紛争だと、こういった別の手段もまず検討してからになります。
この事件、この依頼者では、どれが一番利益になりそうか? 
調停委員としてどのような方が出てきそうか?などということを想像しながら、考えます。

ただ、こうした裁判外の手続には時効を止める効果はありませんから、時効が問題になりそうな時には使えません。
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