建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

免震ゴム交換中の法的扱いについて

2015年08月02日 | 法制度
ケンチクベンゴシの豆蔵です。

免震ゴムの不正発覚後、4か月半が経過し、
現在のところの対応としては、製造会社が全数を交換することになっていますが、
全部交換するのに少なくとも数年は期間がかかると言われています。

というのも、
交換するための免震ゴムの大臣認定も取り消されていますので、再取得が必要ですし、
それから製造に着手するとしても、
対象となる棟数が100棟程度と非常に多く、必要な免震ゴムの個数も数千個程度に上るようですから、
とてもすぐに製造できるような分量ではない、ということのようです。

一方、製造会社は、建物の設計はできませんので、
不正材料を使用した建物の構造上の安全性の検討は、設計者に協力を求める形で行われているようです。
また、免震ゴムの交換の具体的な施工方法や、工事中の構造検討なども、
施工者や設計者に委ねられている状況です。

免震ゴムは、不測の事態に備えて交換できるように設計しなければなりませんので、
理論上は交換が可能ですが、
現実には、施工や搬入スペース、ジャッキアップの箇所や方法など、いろいろ難しい問題があるようです。

工事に際しては、
所有者・設計者・施工者・製造会社で合意書を作成して、
費用やリスク等を製造会社が負うことを明確にする必要がありますが、
具体的にどのような工事を行うのかが、一部の設計者・施工者以外に見えにくく、
不安をさらに広げていたようです。
(合意書を作成する弁護士に理解させるのは、とにかく大変でしょう)

今般、国交省が、
新築工事中に事件が発覚した建築物に関する「仮使用認定」の取扱い等について
「免震材料の交換改修工事中の建築物の安全性のガイドライン」というものをまとめ、
その中で、具体的な交換方法のモデルケースを示しました。
ガイドライン

共通理解の前提となるものであり、
また、紛争になった場合の評価基準となり得るものとして注目したいです。

また、6月に会社が発表した外部弁護士による第三者委員会報告書に続いて、
7月末に、国交省の第三者委員会の報告書が公開されました。
国交省 第三者委員会
大臣認定という制度がそもそもどうなのか?など、
会社側の目線とは全く違うので、なかなか興味深いものです。
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