俺のバレンタインの疑問は解決した。
あいつの自己申告さえ嘘でなければ、あいつは男にチョコを渡したのは俺だけだ。
あとは、家族と西田にコンシェルジュだ。
西田は義理。
そもそも、西田には嫁がいる。
コンシェルジュは、ジジイだ。
後の奴らは、俺の親父に牧野の親父に弟。
こいつらは、世間一般的に家族のグループに入る。
って事は!!俺も家族の中に入っているのか?
クソっ。
あいつに早く俺を男だって所から意識させねーといけねぇな。
そもそも、バレンタインのお返しっつーのをホワイトデーに渡すって事も、今日初めて知った。
これは仕方ねーことだ。
俺はバレンタインみてーなクソ甘い匂いがプンプンする日はキライだった。
女たちから不必要に後を追いまわされる行事なんて大キライだったんだ。
ま、そんなことはどうでもいい。
俺は、バレンタインのお返しっつーのを、ホワイトデー当日にイタリアに特注したからセーフだろ。
待ってろよ、牧野。
そして、俺の疑問②
《毎週土曜日になると、可愛い服装で出掛けるようになった。》
俺は、これに関しては西田に一切聞かなかった。
そもそも、俺の嫁の牧野のことを、西田の方が詳しいっつーのが気に入らねぇ。
こう思った俺は、3月末の最終土曜日。
直接、牧野に聞くことにした。
「そんな(可愛い)服を着て、どこに行くんだよ?」
可愛いっつーのは、声に出さなかった。
俺の言葉にキョトンとした牧野は
「あれ?あんた知らなかったの?西田さんが、前に言っていたでしょ?私、お行儀見習いで、あんたの幼なじみに色々と教えてもらっているの。」
俺が知らないことが不思議だっつーような口調で言ってきた牧野。
「あ?幼なじみ。」
俺の幼なじみってあいつらだよな?
俺の疑問に
「そうそう。あんたの幼なじみ。あの赤札のお仲間!」
完全に小バカにしたような牧野の口調。
てめー、他に言い方があるだろ。
赤札のお仲間ってなんだよ?
「美作さんがマナー。西門さんがお茶と着付け。花沢さんからはフランス語を教えてもらっているの。」
なんて、のん気に言い出すこいつ。
ってか、あきら・総二郎・類に教えてもらっているってことは!!
ヤローの中に女が一人!
急に不安になりだす俺。
「お前、大丈夫なのか?」
俺はマジで心配になって聞いてみた。
マダムキラーに一期一会に寝太郎だぞ!
総二郎なんて千人切りを座右の銘に掲げているんだぞ!
俺はマジで心配しているのに
「お稽古とかってむずかしいのかな?とか、大変かな?とか思っていたけど意外に楽しいの。」
なんて、嬉しそうに話し出すこいつ。
あいつらと過ごすのは、楽しいのか?
こいつが楽しく過ごしてることは良いことだってことくらいわかってる。
でも、どこかでモヤモヤしたものを感じる。
いや、モヤモヤじゃない。
イライラして焦っている気持ちだ。
俺以外の男が牧野といるっつーことに、急にイライラしだす。
幼なじみのあいつらに感じた初めての苛立ち。
ガキの頃から一緒だったあいつらに抱く憎悪。
こんな思いをあいつらに抱く日が来るなんて思ったことが無かった。
「私は余計な事一言も言ってないけど…。あんたが、余計なことベラベラ喋るから結婚のことバレてるよ。多分、契約ってことはバレてないと思うけど。もう、これ以上、余計なこと言っちゃダメだからね。」
少し説教くさい口調で話してくる牧野。
俺は、牧野が怒っているのをスルーする。
バレているんなら、調度いい。
あいつらも俺の嫁に手を出すことはねーだろ。
「頑張れよ。」
「うん。ありがと。あんたって、時々良い奴だよね。」
俺の言葉に一瞬ポカンとした牧野。
それでも、速攻でムカつく返事を返してくるのがこいつらしい。
そして、牧野は玄関のドアを開けながら…。
「私の未来の本当の旦那様の為に頑張る!」
こう言ってきた。
あいつの未来の本当の旦那に対して抱く殺意。
俺は、いつの間にか────。
牧野に近づく男に対して嫉妬心が芽生えだした。
幼なじみのあいつらにさえ抱く思い。
そして、俺のこんな思いに全く気が付かない牧野に対してもイラついた気持ちを抱くようになっていた。
お前もこんな気持ちになってみろ。
この気持ちが、どれだけ辛くてイライラすると思っているんだよ。
この想いをコントロールするのが、どれだけ大変だと思ってるんだよ。
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