八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚61

2021-12-11 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

共同生活が始まって約一週間。

道明寺が、初めてお土産を持って帰ってきてくれた。

 

お土産ってケーキとかお寿司ってイメージだけど…。

なんだか、とっても大きい箱。

でも、お土産ってスゴク嬉しい。

 

私は昨日のことを謝った。

「昨日のビンタ。ごめん、ね。それと、お土産ありがと。」

 

道明寺は私が謝るなんて思っていなかったみたいで、目を一瞬大きくした後で

「あれは最強だったぞ。」

綺麗に笑って言ってきた。

 

こいつって学生時代は独特?いや強烈な反抗期だっただけなのかな?

西田さんも基本は優しいって言っていたよね。

でも、こんなことを思った1分後。

私はやっぱり道明寺は根性悪って思うんだ。

 

この大きい箱。

化粧箱ではなく段ボールに入っているお土産。

 

重いわけではないけど、軽くも無い。

こんなことを思いながら、段ボールを開けて最後の上にかぶせてあるらしい発泡スチロールを取った。

 

!!!

私が初めて見る電化製品。

円い形の掃除機。

掃除機の中にロボットが内蔵されているものだ。

 

なんで?

ここにはコードレスの吸引力がスゴイ掃除機があるのに?

どうして?

こんな高級家電をお土産に持って帰ってくるの?

 

こんなことを思っていると

「こいつはスゲー良い奴だぞ!!」

こう道明寺が力説しだした。

 

そして、続けて言ってきた言葉が!!

「こいつは、どっかの誰かみたいに文句もいわねーで黙って掃除をする。しかも、お前みたいに俺様に向かって邪魔とか言わねぇし掃除機で威嚇もしない。

 

「そして、仕事が終わると黙って元の場所に戻って自分で充電する。スゲー健気な奴だ。

 

「間違っても、風でスカートが舞ったからって、俺の頬を叩いてなんかこねぇ。お前とは大違いだろ?

こんな可愛くない事を言ってきたの。

 

しかも、嬉しそうに!

所々、私に対する嫌味を強調しながら。

最後に「充電も十分だ。」って嬉しそうに笑いながら言ってきた。

 

こいつって、もしかして…。

これで私に仕返ししているつもりなの?

 

こんな高い家電を買って?

お土産ってわざわざ私に渡して?

嫌味な奴!

嫌な奴!!

むちゃくちゃ根性の悪い意地悪な奴!

 

道明寺はスゴク嬉しそう。

きっと、すごく仕返しをしたって思っているんだろうな。

道明寺って日本語が壊滅的にダメだけじゃなく、性格にもやっぱり問題があるんだよ。

 

なんとなく、疲れた私は大きく溜息をついて、お風呂に入って寝ることにした。

もう、あのバカ男に付き合ってられない!

 

なんであんな無駄使いをするんだろ?

お金って大切だよ。

無くなった時、本当に辛いんだから。

 

使える掃除機があるのに、新しいのを買ってくるなんて!

しかも、外箱の段ボールまで変えて。

 

あいつが結婚に興味が無いとかより、あいつは誰とも結婚もできないよ。

あんな性格だもん。

私の未来の本当の旦那様は、温厚で優しい人でありますように。

こんなことを思いながら私はいつの間にか寝ていた。

 

そう、この日。

道明寺の金銭感覚の無さや、何を考えているのか全く分からない行動に呆れてしまった私は、初めて自分の部屋のカギをするのを忘れてしまっていたの。

 

夜中に珍しく目が覚めた私。

この時におかしいって思ったら良かったんだよね。

 

一度寝るとなかなか起きない私が夜中に起きた理由。

廊下で音がする。

道明寺が歩いているの?

 

何の為に?

私、部屋の鍵───するのを忘れていたっ!

ガバっ!

勢いよく起きた私は、西田さんに付けてもらったカギをしようと思ったのに!

真っ暗な部屋だから、手を伸ばしてもカギの位置がわからない。

 

焦ってしまって変に力が入ってしまって、よりによってドアを開けてしまったの!

ドアを開けてしまったと同時に、私の足の指先に冷たい冷気と私が初めて感じる感触。

 

「イヤッー!!」

私は声と同時に思いっきり足を蹴り上げた。

 

ガッシャーン!!

私の足を蹴り上げた後、直ぐに聞こえてきた音。

 

・・・なに?

何の音?

私は、そぉーとドアを開けた。

 

ドアを開けたと同時に、道明寺の部屋からスゴイ足音と一緒に

「どうした?何があった?大丈夫か?」

道明寺の焦った声が聞こえた。

 

道明寺が廊下の電気をつけると…。

そこには、ブーって小さいモーター音を出しているお掃除ロボが転がっていた。

 

 

 

翌週末。

俺の部屋に、朝っぱらからノックもしねーで掃除機と一緒に入って来る牧野。

 

「早く起きなさい。いつまで寝ているのよ?」

このデカい声と掃除機の音で目が覚める。

 

「さっさと起きないと、脳みそ腐ってくるよ?」

起きないからって脳みそが腐るわけねーだろ。

 

そして、このクソ寒い季節にまた窓を開けられたらたまったもんじゃない、と思った俺はリビングへ避難しようと思いベッドから下りた。

 

歩いて数歩。

「はい!その無駄に長い足、邪魔っ!!」

ドスを効かせて言いながら、掃除機で俺の足どころか体全体を邪魔扱いしてくる。

俺はゴミじゃねーぞ!!

 

牧野の最強の蹴りを受けた被害は酷かった。

スゲー音したもんな。

 

健気なあいつは現在修理中だ。

高性能のロボットだからな。

牧野より繊細なはずだ。

 

親父や西田が言うように、女はマジで最強なのかもしれねぇ。

家電を蹴りで瞬殺してしまうんだからな。

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。