三月に入り、いよいよ言われていた花嫁修業が始まる。
これを始めないと、会長や社長、椿お姉さんから不思議に思われてしまうもんね。
正直、あの優しい会長・社長、そして椿お姉さんに、これ以上嘘をつくのは申し訳ない気持ちでいっぱいなんだよね。
また、嘘かぁなんて思ってしまう。
でも、正直。
未来の本当の旦那様に操を立てると、私の家族・そして道明寺の家族に嘘をつくことへの罪悪感が出てくる。
本当に早く、この生活から脱出したい。
西田さんからは二月末に、今回の花嫁修業が始まるってことを言われた。
あの時は、結婚式を回避できるのなら何でもしますって思えていたんだけど。
いざ、始まるってなると少し思うことがある。
だって、そもそも《花嫁修業》なんて名前がイヤ。
これは《お行儀見習い》にでも自分の中で変更しようかな。
花嫁修業改め《お行儀見習い》は、きっと私の苦手分野になると思うの。
私のイメージを損ねたらいけないから小声で言うけど「だるい。」って、思ってしまう。
しかも、道明寺家の花嫁修業だよ!
そもそも、パパがギャンブラーだった私なんだから、そんなの全く教えてもらってない。
未来の本当の旦那様の為に覚えおうとは思うんだよ!
だから、正直ハイレベルの花嫁修業じゃなくて、その下の下くらいのレベルのお行儀見習いでお願いしまーすって感じでしょ。
そして、一番気になっているのが、講師の先生から私の事がバレる事。
そのことを西田さんに相談すると─────。
「牧野さんが心配すると思っていましたので、こちらとしても講師は選りすぐって口の堅い方にお願いしています。」
こう言ってくれたんだよね。
やっぱり西田さんって素敵でしょ。
安心安定の西田さんって感じでしょ。
だから、私は大船に乗ったような気分になって聞いてみたの。
「良かったです。安心しました。で、どんな先生なんでしょうか?」
「年は牧野さんの1つ上で、3名の男性にお願いしています。」
こんな西田さんの返事に、私の頭は「うん?」ってなった。
なんとなく、嫌な予感がしない?
なんとなーく、不吉な予感がしない?
「えっと、その3名の方って…。まさか、あいつの幼なじみじゃないですよね?」
私の質問に西田さんはニッコリ笑って
「牧野さんは察しがいいので助かります。私の上司には残念ながら無いのです。」
なんて言ってきた。
西田さんの上司って、道明寺じゃないですか?
確かに、道明寺は察しがいいとは言えないだろうけど!!
道明寺と私を一緒にしないでー!
「講師は、西門様にはお茶と着付けを。美作様にはテーブルマナーとダンスを。花沢様にはフランス語をお願いしています。」
西田さんは、あっさり言ってきた。
えっー!
まさかの。まさかのっ。
あいつの幼なじみに私がお世話にならないといけないなんてっー!!
いや。
人として、これ以上赤札野郎になんてお世話になりたくない。
「あのっ。西田さんもご存じだと思うんですが、あいつの幼なじみって赤札とかして信用なんて出来ない人間なんですよ?」
私の言葉に
西田さんは堂々と言ってきたんだ。
「大丈夫です。彼らも社会に出て司様よりよっぽど!!しっかりしています。日本語にも不自由していません!」
そんな太鼓判いりません。私は心の中で唱えた。
そして、西田さんは自信満々で言ってきたの。
「あの四人から秘密が漏れることは絶対に無いです。鉄壁の守りです。」
・・・・。
「西田さんの事を疑っているわけではないのですが…。」
私は遠慮がちにこう言った後で、聞いてみた。
「私が知っているのは彼らの学生時代は酷かったと思います。それなのに、どうして、その彼らから秘密が漏れないとか鉄壁とか思われるのですか?」
「彼らは小さい頃から、友と呼べるのはお互いにその四人しかいないのです!」
ってガッツポーズして言われても…。
友達が自分を入れて4人って少なすぎでしょ。
この後、私は西田さんが言った言葉に絶句する。
「あの方たちには、毎週土曜日でお願いしています。ですが、マダムや一期一会・昼寝という理由で急な変更も多々あるかと思いますので、牧野さんもそのつもりで。」
なんなのよっ!もう!!
マダムに一期一会?
不倫に一夜限りってこと?
どんな乱れた生活なのよっ!
その上、昼寝?
それは、本当の昼寝なの?
それとも、昼間っからホテルに行っているってこと??
もう、やだ。
そんな乱れたのが講師とか終わってるじゃん。
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