八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚65

2021-12-15 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

また月曜日がやって来た。

俺と牧野の平日は─────

朝は、牧野が飯を作り出すころに、俺は起きる。

 

もしくは、起きているのに時々起こしてもらうようにして、一緒に飯を食う。

好きな女に起こしてもらうのはサイコーだな。

 

ま、別の問題では大変だけどよ。

思わず細い牧野の体を、ベッドに引き摺りこみたくなるっつーのは秘密だ。

 

朝は、牧野が徒歩で行くっつーので俺より少し先に出る。

女は準備に時間が掛かるってイメージがあるのに、あいつは飯を食った後、片付けをし、さっさと仕事へ行く。

まるで男の身支度並みだ。

 

俺は今まで始業後に会社に着くようにしていたが、それに気付いた牧野に

「早く仕事しろ。」だとか「重役がふんぞり返る時代じゃない。」なんてことを言われるようになった。

 

しばらく無視していると

「あんたって2・6・2の法則だと良くない方の2じゃないでしょうね?」

なんて訳のわからねーことを言われた。

 

良くない方の2ってなんなんだよ?

この言葉が気になった俺は、始業時刻までに出社するようになった。

 

俺は通勤時、車を運転する。

牧野に一緒に乗るように声をかけると

「それだけはイヤ。」って返事が返ってきた。

 

日中は、お互いに仕事っつーのもあり完全に別行動。

俺が社内をウロウロしてもあいつにはなかなか会うことは無い。

あまりウロウロすると、西田がスゲー冷たい目で見てくるから要注意だ。

 

その西田からは、結婚をした翌日に毒ヘビ島へ出張に行くように言われた。

あいつ、マジで俺を毒ヘビ島に出張へ行かすつもりだったのか?

 

俺には一年しかねーから、出張なんて行っている場合じゃねーんだ。

しかも、ライバルは存在しねー人間だ。

架空の人間とどうやって戦うんだよっ!

 

結婚してから、俺の残業は一時間から一時間半と決まった。

西田が言うには「男性が早く帰宅すると家庭内での揉め事が増える。」らしい。

 

その為、西田はあいつの社員証を加工した。

なんでも、牧野の入退室のデータが西田のメールに連絡が来るようになっているらしい。

お蔭で、俺まで牧野より一時間後に帰るように西田から仕事を渡されるようになった。

 

絶対に牧野は知らねーシステムだ。

牧野は入退室だけを西田に管理されているから気楽でいいよな。

俺なんて俺自身が、メガネ(西田)に管理されている。

 

この西田の、牧野退社後一時間して俺が帰宅するのが良かったのか?

それはわからねーけど、帰宅すると牧野が『もうすぐご飯だよ。』っつーのが多い。

 

ちなみに、この

『もうすぐご飯だよ。』は

『あんたもお箸とか出しなさい。』が含まれている。

 

それと、『いただきます。』と『ごちそうさま。』を言わねーと、

次の食事抜きって宣言もされている。

 

でも、正直、俺にはこれが新鮮だ。

『いただきます。』や『ごちそうさま。』も一緒に食う奴がいるから言えるんだ。

メシを食っている時に、こいつが話すどうでもいい話も俺からすると楽しい時間だ。

 

牧野は酒を飲まない。

飲まない?じゃねぇ、飲めねーみたいだ。

直ぐに酔うとか言っていた。

 

だから、ここで暮らすようになっても一口も酒を口にしていない。

そもそも、どのくらい飲めるのかも全く知らねーらしい。

酔ったらどうなるんだ?

そんな姿、他の男に見せられねーよな。

 

「弱いんだったら飲むなよ。絶対、ここ以外で飲むな。俺以外の奴の前で飲むんじゃねーぞ。」

「そんなことまで指図しないでよ。私だって、飲み会に参加したい!」

俺の言葉に、速攻で反抗してきた牧野。

 

この女は絶対に素直に「うん。」とは言わねーんだよな。

でも、禁止は禁止なんだ。

 

「酒は弱いんなら絶対に禁止だ。もし、お前が酔って口を滑らせたらどうなるんだよ。お前の未来の旦那に俺たちの秘密が漏れると、お前が一番困るんだろ?」

俺は、こいつの弱い所を突いた。

この俺の言葉に渋々頷いてきたこいつ。

 

そんな牧野に俺はもう1つ命令を出す。

「今、教師と出会っても恋愛は禁止だからな!それにそいつは、絶対に未来の本当の旦那じゃねーから!教師以外も恋愛は禁止だからなっ!!恋愛はするな。」

 

取り敢えず、この一年が勝負なんだ。

こいつが男と出会うのは片っ端から潰さねーといけねー。

未来の本当の旦那は俺なんだ─────。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。