八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚62

2021-12-12 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

健気で繊細なお掃除ロボは、大至急の修理から戻ると西田宅に引き取られていった。

 

西田の家の掃除機の調子が悪いっつーのを聞いた牧野が

「良いのがあるんです!私がまた蹴り飛ばすと、今度こそ壊れそうだから使ってください。」

っつーて勝手に渡した。

 

あれ、俺が買ったんだぞ!

なんで、牧野が勝手に西田にあげているんだ?

 

しかも、西田があの掃除機を手配したんだ!

だから、俺が支払ったっつーのを知っているだろ。

牧野と西田。

あいつら二人は、何考えてやがる。

 

俺がこんなことを思っているのに

「あんた、早く食べなさいよっ!」

っつーて、折角の休日の俺の睡眠を、邪魔してきた牧野が偉そうに言ってくる。

 

・・・・・。

俺の目の前には、クソが何個もつきそうなくらい甘そうなパンケーキ。

これが今朝の朝メシらしい。

 

パンケーキにはバターやメープルシロップだけじゃなく。

「タワーか?」って突っ込みたくなるほどのホイップとフルーツがデコられていた。

 

「冬って、甘いの食べたくなるよね。」

ニコって笑いながら言ってくる牧野からは悪意は感じられねーけど。

俺は甘いのが苦手なんだ!

 

「あっ!ごめん。私、道明寺にチョコチップのせるの忘れてた!」

急いで俺の所にチョコチップを持ってこようとする牧野を手で静止する。

 

いらねーよっ!

これ以上、甘くされたら食えねーよっ。

 

牧野はこの契約結婚と当時に、ハウスキーパーの変わりに家事をすると言った。

確かに、家事をしている。

 

いつも、綺麗な状態。

風呂は毎日綺麗になっていて、

シャワーしかしねーって言っても、毎日バスタブに湯が溜まっている

 

キッチンも、こいつが来てから毎日使っているのに、前と変わらずピカピカだ。

そして、こいつは料理が上手だ。

俺が食ったことねーのばかり、毎朝・毎晩出してくるけど全部美味いって思った。

ただ、今朝の甘すぎるパンケーキは要らねーけどな。

 

洗濯物も仕事から帰った後で、疲れていても毎日干している。

ペントハウスのルーフバルコニーの一角に作られたサンルーム。

 

「お日様の力で乾くのに、乾燥機で乾かすなんて勿体ない!」

なんて牧野が言い出したんだ。

 

ここを何階だと思っているんだっ!

「洗濯物なんて干したら飛んでいくだろ?」

っつー俺の意見は、西田と牧野の二人によって却下された。

 

俺の自慢のルーフバルコニーの一角には、洗濯物を干すためのサンルームが陣取っている。

「夏は暑いんじゃねーか?」

俺の意見も

 

「夏は風が無いから、普通にバルコニーに干せるじゃん。」

こんな牧野の返事。

この言葉で、夏には俺の自慢のバルコニーがますます狭くなることが決定した。

 

俺が納得できねーことがある。

俺は自慢のルーフバルコニーに、洗濯物の為にサンルームを設置した。

 

俺がベッドシーツや枕カバーを毎日変えろって言うと、

「自分で洗濯カゴに入れといて。じゃ、洗濯するわ。」

こんな可愛くねー返事が返ってきた。

 

それだけじゃなく、

「きちんとファスナーしないと洗濯してあげないんだからっ!」

こんな訳のわからねーことまで言ってきた。

 

ファスナーをするってなんなんだよっ!

俺はそんなことわかんねー!

 

こんなことを思っているのに、こいつは…。

「人に頼むときの命令形は止めなさいっ!本当に、口のきき方も知らないんだから!」

こう言って、俺を怒ってきたんだ。

 

しかも、リビングの部屋を出ていく直前、俺の方へ振り返って

「基本、あんたの部屋に入らないことにしているからシーツは自分でつけなさいよ。」

こんな可愛くねーことを言ってきたんだ。

 

てめー、掃除の時は勝手に部屋に入って来るじゃねーかっ!!

お蔭で俺は、毎日シーツを付けている。

なんつー、ダルイ作業なんだよ。

 

シーツの件から数日後、次はお願いすることにした。

「俺のクリーニングから戻ってきたスーツのジャケットの左ポケットにハンカチ入れといてくれないか?」

 

俺が頭を下げてお願いしたっつーのに!

「そのくらい自分でしなさい。私も自分のハンカチは自分でします!保育園児でも自分でするわよ。」

こんな可愛くねー返事をしてきたんだ。

 

あいつ、クソだろ!

こんなハウスキーパーいるのか?

いや、ハウスキーパーじゃないな。

こんな嫁いるのか?

あんな妻がいるのか?

 

俺はこの契約結婚が始まった俺の誕生日に、こいつが好きだと思った。

俺の好きなこの女は、俺が今まで出会った女とは全く違う。

俺の態度や言動、全てに対して遠慮なく文句を言ってくる。

 

好きな女との共同生活を楽しみにしていた俺だったが、日々大変なのを実感している。

世の夫婦は、どんな生活を送っているだ?

 

こんなに大変なのに西田はなんで結婚したんだ?

こんなに大変なのに、なんで結婚なんてするんだ?

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。