八十八夜

学生時代から大好きなマンガの2次小説です

まやかし婚55

2021-12-05 08:00:00 | まやかし婚(完)

 

 

2021.02

俺が昨日のウエディングドレス姿の牧野を思い出し幸せに浸っていると、執務室に西田が入ってきて全く理解出来ねーことを話し出した。

 

「あっ?なんて言ったんだ?」

俺の言葉に能面秘書(に見えるけど、こいつは絶対に腹の中で笑っている)が…。

 

「ですから、ゴールデン・ランスヘッド・バイバーです。」

西田が呆れて言ってくる。

 

「なんだよ、それ?」

俺の疑問に西田が答えだした。

 

「世界でもっとも危険な毒ヘビの1つでもある、ゴールデン・ランスヘッド・バイバーの最大生息地の島へ行きませんか?」

何の為に?

 

「この島にはかつて灯台管理人と家族が住んでいたそうです。でも、窓から入ってきた毒ヘビに噛まれて死んでしまったという伝説があるのです。どうです?この島へ行って本当にこのヘビが猛毒がどうかを調べてみませんか?」

しねーよっ!

ジト目で西田を睨む。

それは仕事じゃねーだろ?

 

「嫌ですか?これだから、坊ちゃん育ちはダメですね。」

毒ヘビに、坊ちゃんもなんもねーだろっ!

 

「海賊が財宝を守る為に、島にその毒ヘビを置いていったという伝説もあるんですよ?財宝探しに行きませんか?」

西田が真剣な顔をして言ってきた。

 

なんで俺が財宝探しに行くんだよ?

変な壺や、俺でも描けそうな絵も邸にたんまりあるっつーんだよ。

 

「だから、行かねーよ。」

俺の返事に

 

「男に産まれたのにサバイバル精神が無い。だから金持ちは面白味に欠けるんです。」

なんで俺が西田に精神論を唱えられねーといけねーんだよっ!

 

こう言った後で西田から出た言葉。

「では、サバイバルの希望がありませんでしたので、本日からお一人でニューヨークへ一週間ほど出張へ行かれませんか?」

サバイバル、フツーに要らねーだろ?

 

今まで出張に関して何も思わなかった俺から出た言葉。

「行かねー。なんで俺一人なんだよ?」

「いや、私は新婚なので。」

しれって言ってくる西田。

俺も新婚だっつーんだよ。

 

公表してねーだけで。

1年って契約なだけで。

 

そして西田が俺に言ってきたムカつく言葉。

「司様が出張だと牧野さんが喜ぶと思い提案させてもらいました。では、仕方ないので東京で仕事をしてください。」

俺が出張だとなんで牧野が喜ぶんだよ?

 

こんな会話をした後で、西田が言ってきた事は、

「毒ヘビの島は冗談として。」

その能面で冗談を言うな!

 

「これから先、出張はどうされますか?」

西田のこの言葉に俺は即答した。

「行かねー。」

 

俺のこの言葉に、西田は少しだけ目が笑ったような気がした。

が、俺の気のせいか?

 

元のいつもの能面に戻って

「理由を仰って下さい。」

こんなことを聞いてきた。

 

別に俺が出張に行こうが行くまいがどっちでもいいんじゃねーの?

いや、どっちでもいいなんて言うと、西田の事だ。

『半年ほど未開発の奥地へ、司様お一人で出張。』なんて平気で言ってきそうだ。

いつもなら、ここで会話が終了してもいいくらいなのに、西田の追及は終わらない。

 

「どうしてですか?今後のスケジュールの関係もあるので、仰って下さい。」

西田がどうも笑っているような気がしながら、俺は黙り込んだ。

 

俺と西田の付き合いは長い。

俺が中学くらいだったか?

新入社員だった西田が邸に出入りしだしたんだ。

 

だから、俺が学生時代にバカなことをしたのも全部知っている。

親父やババアより、俺の事を知っていると言っても間違いではない。

 

俺が初恋すらしてなかったのも、女と付き合ったことねーのも、この年になってもまだ童貞だっつーことも全て西田にはバレている。

 

俺はこの想いを西田に言うべきかどうか迷い出した。

わざわざ言わなくても西田には絶対にバレる。

もしかすると、既にバレているんじゃねーかって思いも出てきた。

 

西田はスゲー嬉しそうに笑って(こいつのこんな顔は見たくねぇ)

「で、出張に行かれないのはどうしてですか?」

「…。」

俺は頭の中で考えている。

 

「出張に行かれない、行きたくない理由は?」

「…。」

西田は絶対にわざと聞いている。

この嬉しそうな顔が全てだ。

 

「私は愛のある結婚で、尚且つ、新婚だから出張は控えさせて頂きます。ですが、司様は契約結婚。」

わざわざ自分の結婚を愛があるとか、強調して言わなくてもいいんじゃね?

 

「お互いに困っている者同士の愛の無い契約結婚なので、出張に行かれるのに問題はない。むしろ、そのほうが適度な距離を取れると思うのですが?」

西田は嬉しそうな顔をしながら聞いてきた。

 

「言わなくても、お前にはわかっているんだろ?わざわざ言う必要あるのかよ?」

俺の少しばかりの抵抗。

 

俺の言葉に西田は

「じゃ、私は何も聞かなかったという事で。これからも仕事のスケジュール管理はお任せください。」

こんな恐ろしいことをガッツポーズで言いだした。

こいつ、マジで性格わりぃよな。

 

「好きになったんだよ!」

俺の言葉に

 

「誰をです?」

真剣な顔をして聞いてくる西田。

 

てめー知っているだろ。

なんで、こんなのが俺の秘書なんだよ。

 

「俺が牧野を好きになったんだよ。」

俺がスゲー恥ずかしい思いをしながら言った言葉。

 

西田は笑いながら、

「知っています。」

って、一枚の紙を渡してきたんだ。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。