遠きみなみの島の灰色の
青空に突き刺す割れたセメント瓦の
屋根に取り付いた雑草の葉の先の
海からそよぐ風に震えるそよそよと
潮鳴りの海に近き寂しい村の
人の捨てた割れた石垣の廃屋の
壁のコンクリートのふち果ての
さらに腐蝕の思い出そうそうと
フクギの木々の下の
濃き影にあかあかの日射しの
太陽は真上から降る光のスコールの
神無月と交わる汗の季節に夏は残り
蔦の茂る森の彼方の潮騒の
村はさびれて秋空の
人影のない白道に幽かに響き来る歌の
いずこともなく聞こえくるかウガン通り
バタヤンの「ふるさとの灯台」漏れ来たり
人はみえぬが村の呼吸のささやき感じ
暗い抒情の静けさが寡黙の道を覆い
はずれの畜舎から山羊が不意に鳴き叫び
ある声のささやき声のラジオの声にあらざるの
不思議と思いし空耳の
どこやら女がひとりごとつぶやけり
闇の匂う風に耳あたり
何の内容のひとりごとか視えぬ思いの
民家のなかの暗きところに
言葉ゆらめき耳を刺激の霊魂うごめき
幻を視て 闇の底のここで狂い死にの
遠きも近き幻聴の
異界もそば立ち不思議がる蜻蛉は宙を舞い
やがて白い蝶が音もなく蜘蛛の巣にひっかかり
古代琉球の神々がそこにありやかと
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