夕日の彼方 松原敏夫
生きてきた時を振り返るように
その夕日が
ほのかに朱い運命を散りばめながら
水平線に落ちていく。
今日 幻となった あのひと。
夕焼けが広がって
弔いの声をあげていたのに
もう聞こえない。
喪服の夜が言葉なくやってきて
星が遠くから歩いてくる。
少しずつ小さな光を出し
またたきはじめている。
やがて星座たち
きらきら ちらちら と
死の夜空を編んでいくんだね。
銀河を見上げると
珍しくおセンチに
そこに佇むおまえは
これからの不在に向かって
宇宙の寂寥を歌うがいい。
流れる星や風の輪廻を思いながら
死生の果てにいたあのひとを
看取っていた事などを。
知っているかい。
落ちたあの夕日は
遠い海の向こうの国では
朝日となって昇っている。
その国では
落日が朝日となって生まれ変わり
人々に新鮮な朝を与え
一日を約束する光になっているんだよ。
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