先日
HPにアップしたピーター・アースキンについて
Peter Erskine (1954~)
ニュージャージー州ソマーズ・ポイント出身。
奥様はMutsukoさん(日本人)
4歳でドラムを始め、5歳で初めてついた先生がスタン・ケントンの1週間のサマー・キャンプ
に行く事を両親に勧めてくれた。当時6、7歳。ドラムの先生はルイス・ヘイズ(優れたビパップのドラマー)
その時ジョー・ザヴィヌルにも会った。その頃のお気に入りはアート・ブレイキーだった。
毎年参加しアラン・ドーソンに会いキャンプとは別に習うようになる。
アランに教わった一番大きな事はドラマーとして「音楽的」である事をわすれないように、ということ。
11歳でインディアナ大学のジョージ・ゲイバー教授からレッスンを受ける。
インディアナ大学でパーカッションを専攻。在学中18歳の時スタン・ケントン・オーケストラに加入。
その後メイナード・ファーガソン・オーケストラに参加。
78~82年にウェザー・リポートに参加。
そしてジャコ・パストリアスのワード・オブ・マウス、ステップス・アヘッド、
ベース・ディザイアーズ
(2番めの動画)への参加などジャズからフュージョンまで幅広く活動した。
92年以降自己のリーダーアルバムをECMから発表してピアノ・トリオ・サウンドを追求してきた。
93、94年にはスティーリー・ダンのツアーにも参加。
また後進育成にも積極的で88年に最初の103ページにも及ぶ教則本を発刊、各地でクリニック
を行っている。
作曲、プロデュースも手がける。
ピーター・アースキンといえば何と言ってもジャコ・パストリアス(b)と組んだウェザー・リポートの
鉄壁のリズム・セクションが今でも蘇る。
中央に配置した動画は下に書いた私の体験したライブと同じ78年のもの。
さらに彼はやはりジャズ・フィールドの人。ストレート・アヘッド・ジャズのプレイは音も美しく
素晴らしい。
HPの私のプロフィールのところにErskine の名前を挙げているが、これは彼が初めてウェザー・
リポートに加入して78年大阪に来た時、演奏終了後フェスティバル・ホールの楽屋を訪ねたら
ホテルの部屋まで招いてくれて話をし、その後ジャコ(上半身裸のまま)、ザヴィヌル、
ショーターとも同席でバーに連れて行ってくれたのだ。
以下彼の過去のインタビューから抜粋してみた。
『テクニックについて』
テクニックはヴォキャブラリーなんだよ。ヴォキャブラリーが増えればそれだけ表現が豊か
になる。だがそれだけではだめだ。単語をたくさん知っているだけでは話をしたり、詩を
作ったりすることはできない。若いドラマーはみんなテクニック・モンスターを目指している。
その結果どういうドラマーができるかというと、2小節のフィルインがあるとすると前後の
音楽性に関係なく自分の手癖とかテクニックを披露するだけになってしまう。(88年)
確かにテクニックは必要ではあるが、それだけで音楽を創り出せるものではない。
より多くの音楽を聴いてその中から自分が感じたものをいかにドラムセットで
表現するかが本当の意味でのテクニックであると思う。
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◯彼はテクニックや練習を軽視しているのではない、それが証拠に彼の教則本は圧倒的な
ボリュームだ。バンドの中にいて音楽的にこういう音が出したいということを瞬時に実現
できる(唄える)ためにはたゆまぬ鍛錬が必要だと思う。
『集中して周りの音を聴く』
80年代後半ECMのレコーディングでプロデューサーのマンフレート・アイヒャー
が「よーく耳を澄ますんだ」と言った。これはどう演奏したらいいのかと迷ったり
せずにひたすら音楽を聴けということ。そうすればどうすればいいかは自ずと見えて来る
わけさ。ウェザー・リポートの頃もどうすればジョー(ザヴィヌル)が気に入るかなんて
考え出した頃、ジャコから「考えすぎちゃだめだ。集中するんだ」と言われた。
集中して音楽が聴こえるようにするにはまずきちんと目を開いて周りに気を配り
背筋をきちんと伸ばして演奏するのが大切だと知った。姿勢を正しくすると
呼吸も正しくなるし周りの状況に対する肉体の反応も良くなって楽に演奏ができるように
なる。こういった規律というのは皮肉なことにとても大きな自由を与えてくれるものだ。(96年)
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◯私も以前は特にジャズをやるときよく目を閉じる傾向があったが集中しているつもりが
かえって自己陶酔に陥りがちになる。目を開いてリラックスすることは非常に大事だと思う。
『理想のドラミングは「俳句」』
音を増やすことよりも減らすことによる音楽づくりのプロセスさ。
ジャック・ディジョネットやポール・モチアンには真似できるようなlick(決まりワザ、
得意フレーズ)がない。そこでフレーズの終わりを毎回異なるストロークで閉じてみる
といった努力を始めてみた。すると常に発見と興奮の伴ったものに感じられて来た。
Don't play what you do know. Do play what you don't know.
(やったことではなく、自分のやってないことをやれ)
ジョー・ザヴィヌルも Always compose when you play(プレイする時はいつも作曲しろ)
と言っていた。すでに身についているフレーズなどは使わずに常にクリエイティヴに
プレイしろということだ。
音符と音符の間のスペースこそがリズムを性格づけるものなんじゃないか。(91年)
いつも誰かがパルスをキープしているわけでなく、それぞれがパルスを感じながら
インタープレイを展開していく、そのための究極的な考え方は「自我を放棄する」
といくことだ。「自分のやっていることが重要だ」という考えを捨てて、ただひたすら
音楽を受け入れる。
ドラマーの理想像は口ずさんでもらえるドラムソロができるようになること。
ドラマーは時としてクライマックスを表現したり聴衆にウケたりするためにあまりにも
多くの音を叩き出してしまう。本当に深みのある演奏はみんなから口ずさんでもらえる
ようなものなんだ。(93年)
僕の理想のドラミングは「俳句」のようなものなんだ。余計なものを極限まで剥ぎ取った
表現、ある枠組みの中でとても自由に表現している。いい作品では詩のような内容を
きわめて簡素な方法で表現している。全く何の制約もないところで、繰り返し聴いても
飽きのこない演奏のできる人は滅多にいない。僕のヒーローであるポール・モチアンは
その数少ない一人だね。(99年)
※この年の映像が
4番めの動画。カルテットでの演奏。
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◯かなり高レベルの話だがジャズ系の音楽を志す人には参考になるはず。
特に日本人には音の洪水のような表現より「俳句」的表現の方が体質に合っているよう
にも思う。
最後の動画は2002年トリオでもの。
教則ビデオ
89年Everything Is Timekeeping
90年Timekeeping2
2005年Drumset Essentials Complete
教育用著書
88年Drum Concepts and Techniques
98年The Drum Perspective
2002~03年Drumset Essentials Vo.1~3(w/CD)
2004年
The Erskine Method(w/2DVD)
2005年Time Awareness For All Musicians
ほとんどの教則本は今は日本版が出ている。翻訳にやや難はあるが十分役にたつ。
おすすめはThe Erskine Method。以前に出したDrumset Essentials3刊を集約し、
さらにDVDが2枚(Drumset Essentials Complete)ついている。
HPの最初の動画はこの抜粋。
日本版で122ページの大作だ。やや高価だがその価値はある。
なお2005年長年付き合っていたヤマハからDWへ楽器を変更している。