NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#434 ロバート・ジュニア・ロックウッド「Take A Little Walk With Me」(Delmark)

2024-06-13 07:54:00 | Weblog
2024年6月13日(木)

#434 ロバート・ジュニア・ロックウッド「Take A Little Walk With Me」(Delmark)







ロバート・ジュニア・ロックウッド、1973年リリースのアルバム「Steady Rollin’ Man」からの一曲。ロックウッド自身の作品。ロバート・G・コスターによるプロデュース。

米国のブルースマン、ロバート・ジュニア・ロックウッド(ロバート・ロックウッド・ジュニアの呼び方もある)は、1915年アーカンソー州ターキー・スクラッチ生まれ。

ロックウッドは、8歳の時に父親の教会でオルガンを弾き始める。両親は離婚し、彼は母親エステラに引き取られた。のちに彼女のパートナーとなった相手が、伝説のブルースマン、ロバート・ジョンスン(1911年生まれ)であった。

わずかに4歳年上で、父親というよりは兄のようなジョンスンから手ほどきを受けて、ロックウッドは10代からギターを弾き始める。

15歳までに、ロックウッドはアーカンソー州ヘレナ一帯のパーティでプロとして演奏出来るようになる。継父ジョンスン、サニーボーイ・ウィリアムスンII、ジョニー・シャインズらとも共演する。

30年代、ロックウッドはミシシッピ・デルタ中のジューク・ジョイント、パーティ、街角などで演奏を続ける。30年代末にはメンフィスでハウリン・ウルフ、B・B・キングと共演、あるいはセントルイス、シカゴなどへも赴いた。

初レコーディングは41年、26歳の時にイリノイ州オーロラのブルーバードレーベルで、シンガー、ドク・クレイトン(1998年生まれ)と共演して2枚のシングルをリリースした。

41年、盟友サニーボーイと共にヘレナのラジオ局KFFAの番組「キング・ビスケット・タイム」のレギュラー出演者となり、これがロックウッドの知名度を大きく高めることになる。メンフィスでB・B・キングのバンドに参加するようにもなる。

50年にアーカンソーからシカゴに移住して、よりメジャーなシーンで活躍する。マーキュリー、JOBといったレーベルよりレコードをリリース。54年よりリトル・ウォルターのバンドに3年ほど参加。

50年代後半にはサニーボーイとチェスレーベルでレコーディングし、エディ・ボイド、ルーズベルト・サイクス、J・B・ルノアー、マディ・ウォーター、サニーランド・スリムらとも共演する。彼のキャリアが一番華やかだった時代でもある。

60年、サニーボーイと共にシカゴを離れてオハイオ州クリーブランドに移り住み、以降の人生の大半をそこで過ごす。60年代半ばに一時引退するが、72年に57歳でカムバック。

以降、ロックウッドは自身のバンドを率いて、地元で定期的にライブを行う。そして、日本でも70年代半ば、ジ・エイシズと共に公演を行い、多くのファンの歓待を受けている。80年代にはジョニー・シャインズとも再び共演している。

27歳没と短命であった継父ジョンスンとは対照的に、ロックウッドは長生きして、2006年、クリーブランドで91歳で亡くなっている。

さて、本日の一曲は、彼がソロ・アーティストとして初めてリリースしたアルバム「Steady Rollin’ Man」からのナンバーだ。

クレジット上はロックウッドのオリジナルということになっているが、聴いてすぐにお分かりいただけるように、亡き継父、ロバート・ジョンスンの代表曲「Sweet Home Chicago」の改作にほかならない。

そのメロディが共通しているだけでなく、歌詞の一部には「Back to same old place, baby where we long to be」と、元ネタに繋がるフレーズを含んでいるのだ。

レコーディング・メンバーは、ギターのルイス・マイヤーズ、ベースのデイヴィッド・マイヤーズ、ドラムスのフレッド・ビロウ。すなわち、シカゴ・ブルースを代表する名バンド、ジ・エイシズである。

彼らの生み出すステディなビートに乗って、飄々としたボーカルを披露する58歳のロックウッド。

上手いというよりは、味わいがある歌声だね。

途中のギターソロも、特にテクニカルなことをやるのでなく、淡々と自然体で弾いている。

この緩めのテンションが、実に耳に心地いい。

ブルースにもさまざまなスタイルがある。ゴリゴリのギター・プレイやリキみまくりのハイテンション・ボーカルも、それはそれでブルースの醍醐味のひとつではあるが、こういう日常のワン・シーンを描いたようなゆるいブルースも、なかなか魅力があると思う。

ロックウッドは、70年代後半には12弦ギターを弾くようになり、彼独自のサウンドを生み出していくことになる。12弦弾き語りバージョンでも、本曲は演奏されることになる。これもまたいい感じだ。

「Take A Little Walk With Me」は喧騒の都会シカゴよりも、片田舎の趣きのある地方都市クリーブランドを終の住処、スウィート・ホームとして選んだロバート・ジュニア・ロックウッドならではの曲だ。今後もずっと聴き続けたい一編である。

ロバート・ジョンスンのような短く波乱に満ちた一生も傍目で見る分には面白いと思うが、誰にも真似出来るものではない。

ゆるゆるとマイペースで音楽を愛して、ギターを奏で続けたロックウッド翁のような生き方、これもまた理想の音楽人生だと思うよ。

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