NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#356 パイロット「Magic」(EMI)

2024-03-27 07:56:00 | Weblog
2024年3月27日(水)

#356 パイロット「Magic」(EMI)






パイロット、74年9月リリースのシングル・ヒット曲。バンドメンバーのデイヴィッド・ペイトンとビリー・ライアルの作品。アラン・パースンズによるプロデュース。

スコットランドのロック・バンド、パイロットは73年エディンバラにて結成。ベースのペイトンとキーボードのライアルのふたりはもともと、メジャー・ブレイク前のベイ・シティ・ローラーズのメンバーだった。

彼らが再会し、ギターのイアン・バーンスン、ドラムスのスチュアート・トッシュが加わることで、パイロットが始まった。ただし、当初は契約の関係でバーンスンはサポート・ミュージシャン扱いであり、3人編成バンドとしてデビューした。その後、翌年に正式メンバーとなっている。

デビュー・アルバム「From the Album of the Same Name」(米国では「Pilot」)は74年10月にリリースされた。この中から先行リリースされたシングル「Just a Smile」が全英31位、全豪31位の小ヒット。

そして第2弾、同9月に英国でリリースされた「Magic」がとんでもないヒットになった。

全英で11位、全豪で12位、カナダで1位、そして全米では、なんと5位!

米国では翌年の4月リリースだったので、だいぶんタイムラグがあったものの、全世界的なヒットとなったのである。

これにより、無名のバンド、パイロットはベイ・シティ・ローラーズに続く、スコティッシュ・ロックの旗手となった。

続いて75年1月に英米でリリースしたシングル「January」は、初めて全英1位を獲得した。全米では87位止まりで、米国ではその後4月にリリースした「Magic」でついにブレイクしたかたちである。

本日はパイロットが当時出演した、オランダのテレビ番組でのパフォーマンスを観ていただこう。すぐに分かると思うが、この曲での主役は明らかにペイトンである。

堂々とリード・ボーカルを取り、しっかりカメラ目線で視聴者に微笑みかけている。実はすでに結婚していたとはいえ、完全にアイドルスター的な扱いである。さすが、元ローラーズ・メンバー(笑)。

ともあれ、この曲はポップ・チューンとしては、ベストな出来映えだなと感じさせる。キャッチーなメロディラインと、それを最大限に活かすペイトンの伸びやかな歌声、そしてライアル、トッシュたちの爽やかこの上ないコーラス。バーンスンの流れるようなギター・フレーズも、実にキャッチーだ。

まさに、ビートルズが完成させたコーラス・ポップの再来といえよう。ある意味、ベイ・シティ・ローラーズ以上に、ビートルズのラインをきちんと継承している。

しかし、残念ながらパイロットは「Magic」の大ヒットに続く大当たりを、その後まったく出せなかった。77年までコンスタントにシングルをリリース、アルバムも4枚出したものの、セカンド・アルバム「Second Flight」がかろうじて48位に入ったぐらいであった。

プロの音楽界は、まことに無情な世界だ。ヒットというものは滅多に出ない。たとえ幸運にもビッグ・ヒットを出せたとしても、それと同レベルのヒット曲を出し続けていかない限り、すぐにリスナーたちから忘れ去られてしまう。

それが、移り気なティーンエージャーが主な対象であるポップ・ミュージックならば、なおさらである。

70年代にはポスト・ビートルズを狙って、彼らをはじめとする無数のポップ・ロック・バンドが乱立したが、その中で現在もわれわれリスナーの記憶にしっかりと残っているバンド、ヒット曲はごく稀である。パイロットの「Magic」はその、数少ない一例であると断言できる。

70年代半ばに生まれた「神曲」。ポップ界に突然登場した、笑顔の爽やかな飛行士たちの生み出す、サウンド・マジックを楽しんでくれ。

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