2024年3月5日(火)
#334 ジェフ・ベック&ロッド・スチュアート「People Get Ready」(Epic)
#334 ジェフ・ベック&ロッド・スチュアート「People Get Ready」(Epic)
ジェフ・ベック、85年リリースのアルバム「フラッシュ」より。カーティス・メイフィールドの作品。ベック自身、ナイル・ロジャーズ、アーサー・ベイカー他によるプロデュース。
昨日に続いて、メイフィールドのジ・インプレッションズ時代の、シングル・ヒット曲のカバー・バージョンである。
ギターのベックとボーカルのスチュアートのつながりは、一般的に第1期と呼ばれるジェフ・ベック・グループ(67-69年)の結成以来である。
その後、ふたりは別々のグループで活動して、大きな成功を収めていくことになるのだが、時にこのような形で共演をして、旧交を温めている。
オリジナルはインプレッションズ、65年リリースのシングル曲。アルバム「People Get Ready」よりカットされている。
その歌詞は、当時盛り上がっていた米国の公民権運動をモチーフとしている。公民権運動とは平たく言えば、さまざまな差別を受け続けていた黒人に、基本的人権を認めるよう政府に要求する社会運動だ。
インプレッションズは甘いラブソングを歌う一方で、こういった社会問題に切り込んだ曲をもいくつも作っていたのだ。
ゴスペルの影響の強いメロディ・ラインを持つスロー・バラードである本曲は、全米14位、R&Bチャートでも3位と、堂々たるセールスを達成した。メイフィールドがソロで独立した後も、彼のライブにおける重要なレパートリーとなっている。
今日はジェフ・ベック公式のミュージック・ビデオを観ていただこう。米国の片田舎の民衆に混じってギターを弾くベック、歌うスチュアートのふたりが描かれる。
ベックが携えるのは、当時愛用のテレキャスター。これをフィンガー・ピッキングしているのが印象的である。ベックばアルバム「フラッシュ」以降、ビック弾きよりも指弾きがメインとなっていく。
指弾きならではの微妙なニュアンス表現を、そのギター・プレイに感じとって欲しい。
歌いながら女性とダンスするスチュアートに、微笑みを禁じえない。モテ男ロッド・スチュアートといえば、やっぱりオンナっ気なしじゃ彼といえないしね(笑)。
本曲は 、98年にグラミーの殿堂入りを果たした。20世紀の名曲のひとつと、認められたのである。作者メイフィールドが、57歳の若さで亡くなる1年前のことであった。
ベックがこよなく愛したメイフィールドの音楽を、盟友スチュアートがその強力なハスキー・ボイスで歌い上げて、曲の魅力をフルに表現した一編。
オリジナルバージョン、メイフィールドバージョンと共に、いつまでも聴き継がれていくに違いない。