NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#360 ジョン・リトルジョン「Dream」(Arhoolie)

2024-03-31 07:44:00 | Weblog
2024年3月31日(日)

#360 ジョン・リトルジョン「Dream」(Arhoolie)






ジョン・リトルジョン、69年リリースのファースト・アルバム「Chicago Blues Stars」からの一曲。リトルジョン自身の作品。クリス・ストラクヴィッツによるプロデュース。

米国の黒人ブルースマン、ジョン(またはジョニー)・リトルジョンことジョン・ウェズリー・ファンチェスは1931年ミシシッピ州レイク生まれ。父親の友人、ヘンリー・マーティンからギターの手ほどきを受ける。

彼は10代半ばに家を出て各所を旅して回り、ミシシッピ州ジャクスンに移住。20代ではさらにシカゴに近いインディアナ州ゲイリーに住み、演奏活動を続ける。

リトルジョンは有名なグループ、ジャクスン5のファミリーとも知り合い、彼らのリハーサル・バンドをつとめたこともあるという。

30代、シカゴのクラブで定期的に演奏を続けるうちに、レコーディングの機会を掴む。66年にマーガレットレーベル、テレルレーベル、68年にTSDレーベル、ジョリエットレーベルといった小レーベルでシングルをリリースしている。本日取り上げた「Dream」も、元々はジョリエットでシングル・リリースした曲である。

ようやくブルースマンとしての知名度を上げたところで、カリフォルニアに本拠地を置く新興レーベル、アーフリーと契約、一枚のアルバムをレコーディングすることになる。それが今では名盤の誉れ高い「Chicago Blues Stars」である。

参加ミュージシャンはボーカル、ギターのリトルジョンのほか、ギターのモンロー・ジョーンズ・ジュニア、ベースのアルヴィン・ニコルズ、ドラムスのブッカー・シドグレイヴ、テナー・サックスのロバート・ピューリアム、ウィリー・ヤングである。

プロデューサーはアーフリーの創設者クリス・ストラクヴィッツ。そしてウィリー・ディクスンも加わっており、ディクスン作のナンバーも一曲やっている。

「Dream」はリトルジョン自作のスロー・ブルース・ナンバーだが、一聴して感じられるのは、63年に45歳の若さで亡くなったエルモア・ジェイムズの強い影響だろう。

その粘っこいスライド・ギター・プレイといい、エモーショナルなボーカルといい、曲の雰囲気といい、エルモア臭がぷんぷんとしている。

エルモアの作品のカバー・バージョンだと聞かされても、そのまま信じてしまうくらいの似ぐあいである。正直、筆者はこの曲を初めて聴いた時にそう思っていた。

でも、リトルジョンならではの個性もある。その歌い口は、エルモアほどのアク、妍はなく、ずっと聴きやすいまろやかなものだ。ギター兼業のブルースマンとしては、なかなかうまい歌い手だと思う。

スライドは、エルモアのようなアコギにピックアップという組み合わせでなく、レスポールというソリッドギターを使っているので、響きにも微妙な違いがある。わりとクールなエルモアよりはオーバードライブ感があり、より今日的といいますか、ロック・リスナーにも違和感なく受け入れられる音だと思う。

またそのサウンドは、伝統的なシカゴ・ブルースを踏襲しつつも、時代の推移もあってBBやアルバート・キングのようなモダンな要素も感じられる。60年代末ならではの、アップデートされたブルースなのだ。アルバムを通して聴いてみると、そのことが感じられる。

これはリトルジョンが20年近くにわたって、シカゴとその周辺のブルース界でバンド活動を続けてきた経験から、自然と蓄積されたものなのだろうなと思う。

そのライブ・ステージでは、自作以外にも彼に影響を与えたミュージシャン、エルモアをはじめとしてジミー・ロジャーズ、エディ・ボイド、ローウェル・フルスンといったシカゴ・ブルースマンの曲をカバーしていたリトルジョン。

キング・オブ・スライド・ギター、エルモア・ジェイムズの後継者と呼ぶべきジョン・リトルジョンの、デビュー・アルバムながら十分に成熟したサウンドを、じっくりと味わってほしい。

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