2024年3月9日(土)
#338 ジミー・ロジャーズ「Rock This House」(Chess)
#338 ジミー・ロジャーズ「Rock This House」(Chess)
ジミー・ロジャーズ、59年リリースのシングル曲。。ロジャーズ自身の作品。レナード・チェス、フィル・チェスによるプロデュース。
黒人ブルース・ミュージシャン、ジミー・ロジャーズは1924年ミシシッピ州ルールヴィル生まれ。アトランタ、メンフィスで育ち、ハープとギターを習得する。
イリノイ州イースト・セントルイスに移って、プロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタート。仲間にはロバート・ジョンスンの義理の子、ロバート・ロックウッド・ジュニアがいた。
40年代半ばにシカゴに移住。ここからいよいよトップ・プロへの道が始まった。ハーレム・レーベルで46年ごろ初レコーディング。当時はハーピスト兼シンガーであった。
47年、マディ・ウォーターズの最初のバンドに、リトル・ウォルターと共に加入。ここでのギター・プレイが注目され、その一方でソロ・シンガーとしてもレコーディングするようになる。
50年のシングル「That’s All Right」がヒット、その後も少しずつリリースし、54年の「Chicago Bound」が代表曲となる。
マディ・バンドには54年まで在籍、その後ソロで独立、「Walking By Myself」を56年にヒットさせる。アルバムは長らくリリースしていなかったが、70年にチェス時代の編集盤「Chicago Bound」を発表、ロング・セラーとなる。筆者もそのアルバムでロジャーズの音を初めて聴いている。
本日取り上げたのは、59年にリリースしたシングル曲。アルバムとしては、84年の編集盤、チェス・マスターズ・シリーズの「Jimmy Rogers」に収められている。
のっけから、彼のスピーディなプレイが炸裂するジャンプ・ナンバーで、とにかくノリがいい。それと、ボーカルもなかなかキレ味がある。
一般的には、ロジャーズの歌声はのほほん、ほんわかとした癒し系と見られているが、この曲では早口でビシッと決めている。
ビル・ヘイリーの「Rock Around The Clock」にも通ずる、ノリの良さがある。
ギターについても、他の彼の代表曲やマディ・バンドでの演奏に比べると格段にスピーディで、ところどころジャズィなイデオムも交えたテクニカル・プレイだ。
「ド」が付くぐらい、50年代シカゴ・ブルースの典型みたいな、いつものロジャーズとはひと味違った世界が味わえるのだ。
ロジャーズは、アップテンポでロッキンなこの曲を、T・ボーン・ウォーカーにとっての「T-Bone Shuffle」のような、彼自身を代表するようなナンバーにしたかったのだと思う。スローやミディアム系のイメージの強いロジャーズではあったが。
せっかくこの曲を取り上げたので、チェス時代よりずっと後の時代のバージョンも取り上げておこう。
93年リリースのライブ盤、「Jimmy Rogers with Ronnie Earl And The Broadcasters」(Crosscut)における演奏である。91年録音。
1953年生まれの白人ブルース・ギタリスト、ロニー・アールとそのバンド、ザ・ブロードキャスターズをバックに行ったライブ、これが本当にご機嫌な出来なのだ。
ジミーはオリジナルの持つジャンプ風味を生かしながらも、モダンなブルース・ギター・スタイルを織り込んだ至芸を披露する。そして、若い頃に比べると、だいぶん塩辛味の増したシブいボーカルも。
バックのノリも最高だ。ドラムスのパー・ハンスンの叩き出すシャッフルはさすがの本場モノ。ハープのシュガー・レイ・ノーシアも、かつてのロジャーズの盟友リトル・ウォルターを彷彿とさせる深いトーンでブロー。極め付けは、デイヴ・マックスウェルの転がるようなピアノ・ソロ。まさに、絶好調のサウンド。
若いロジャーズも、67歳のロジャーズも、甲乙つけ難い好演。ノレる、ノリまくれるブルースとは、まさにこいつだ。