2008年2月24日(日)
#24 メアリー・ウェルズ「In The Midnight Hour」(Two Sides Of Mary Wells/DBK Works)

メアリー・ウェルズといえば「My Guy」。もうほとんどその一曲という感じだが、60年代前半はシュープリームスのダイアナ・ロスあたりと並んで、トップ・レベルの人気歌手だったのだよ、お若いの。
64年にリリースした「My Guy」がナンバーワン・ヒットになってしまったばかりに、その後が続かずジリ貧の印象があるが、モータウンの稼ぎ頭的存在であったことは間違いない。
しかしですな、人気歌手かならずしも名歌手にあらず。ウェルズも与えられた曲をソツなく歌うものの、強力な「サムシング」をついに持ち得なかった。その声質はあまりに硬く、表現も平板で、ポップな曲は歌えても、時代の熱い潮流「ソウル」にはそぐわなかった。
「My Guy」の後は、人気も次第に下がっていく。よりソウルフルな味わいをもった後進の歌手たちに追い抜かれていってしまったのだ。
そんな彼女が、あえて古巣モータウンを離れて、66年にアトコレーベルで出したアルバムが「Two Sides Of Mary Wells」。
これまでのポップな彼女に加えて、ソウルな面も強調した選曲になっていて、この「In The Midnight Hour」はまさにその代表例。
ウィルスン・ピケットとスティーブ・クロッパーの共作による、ソウルの名曲中の名曲に果敢にも挑戦したわけだが、結果は‥残念ながらイマイチな出来である。
バックはアトコのミュージシャンたちだから、バリバリのソウル。でも、歌が月並みなんだよなぁ。
それなりに頑張ってソウルっぽさを出そうとはしているのだが、どこかしっくりと来ないんである。
やはり、資質というものであろうね。「クイーン・オブ・ソウル」の称号はアレサ・フランクリンという後輩歌手にのみ与えられ、メアリー・ウェルズに与えられることはなかった。
ただただ奇麗に歌うだけでは、心をゆさぶるようなソウル・ミュージックとはなりえない。ウェルズのこの意欲的な試みが示してくれたのは、そういうことなのであります。