京浜東北線から撤退した209系は後期車を中心にしたグループが千葉支社管内向けに転用されましたが、最初期に製造されたウラ2編成は在来線車両の技術開発を行う試験電車に改造されました。この編成は多目的試験車を意味するMUltipurpose Experimental Trainを略したMUE-Trainの愛称を与えられ、2008年に川越車両センターに配置、以降は首都圏近郊路線で試運転を実施しています。先月は東北本線大宮〜小金井間で試運転を立て続けに実施している姿が目撃された為、生憎の空模様ですが情報を頼りに撮影して来ました。
試験走行を終えて川越車両センターに戻るMUE-train。本来は7両編成でしたが、台車の性能向上試験を目的とした4号車は2010年で廃車され、その後は現在まで6両編成で試運転を継続しています。外観デザインは明るい未来、希望を表現した白で、ブロックパターンは凡ゆる分野の輝く技術が結集して新しい鉄道システムを構築するイメージを具現化した斬新な意匠になりました。
「車両の性能向上に関する開発」「次世代車両制御システムの開発」「営業用車両を用いた地上設備の状態監視用機器の開発」を行うとされ、E235系が搭載する次世代車両制御システム"INTEROS"も本編成で実用試験を行って来ました。試験終了後は動向が注目されましたが、現在でも何らかの実証実験の為、試運転は継続されています。
MUE-trainは試験電車という事もあり、何度か主制御装置を始めとした機器の換装を実施していますが、一番気になるVVVFインバーター制御装置は編成内のユニットでそれぞれ異なり、モヤ209・208-3には三菱電機製を搭載しています。
モヤ209・208-4には日立製作所製VVVFを搭載。同社製の制御装置を既に採用しているE233系3000番台などとは磁励音が僅かに異なるので半導体素子が違うのかも知れません。
次世代車両の開発に向けて使用される多目的試験車への転用ということで、登場時は話題になったMUE-Trainですが、既に運用開始から13年、旅客車時代から数えると29年の歳月が経過し試験車としては異例の長命になり現役の209系としても数少ない川崎重工業で製造された編成で最古参になりました。現在はATCからATACSへと保安装置が更新された埼京線池袋〜大宮間には入線不可能となった他、車体も経年なよる傷みが目立つ事などから試運転終了も近付いている事を伺わせ、今後に注視したい車両です。