携帯電話。メールボックス。
送信・受信ともに埋めつくす、同じ名前。
じゅもんのようにつらなっている。
久しぶりに見るその光景を
でもやはり以前とはちがうその光景を
きっかけにしてしまった。
感情の堤防が決壊した。
涙がこわいくらい止まらなくなった。
声をころしてもころしても、しなない。
あの頃を想うの?未練があるの?戻りたいの?
そうじゃない、せきを切るきっかけをつかんでしまっただけ。
ぎょっとして、びっくりした衝撃で、もろくなっていた所が
壊れてしまっただけ。
恐怖にちかい心細さと、罪悪感のようなものも混在して
なにがなんだかわからなくなってきた。
つらくなってきた。
規則正しく並ぶそれをこわしたくて、「違う名前」に
数件、他愛のないメールを送る。
なにをやっているの? 私。
波がおさまるのを待とう。