M*log

  

つづき

2009-03-07 | ●M*log ・・・ 

男友達と付き合ってみた、が、よくわからなくなった。

友達だった頃、私たちは、周囲から「めおと漫才」などとひやかされたりして
そのくらいに、掛け合いがうまくいっていたのだ。
彼が何か言えばすかさず私が突っ込みを入れたし、その逆もまたしかり。

しかし「付き合」ってからがうまくいかない。
私がわざと狙ってすっとぼけたことを言ったりしても、彼は隣りで微笑み
ただただ優しいまなざしをこちらに向けてくる。

しっくりこない。調子が狂う。
ゲラゲラと笑いあえる仲こそが、私たちの自然のカンケイだったに違いない。
これが「付き合う」というものならば、すぐさま解消したいぜ。
そんな気になったりもしたが、嫌いなわけではないし、言えなかった。

あるひのこと。
その、いわゆる私のカレシが、真顔で突然問うてきた。

「あいつのこと、どう思ってる?」

「へ?」

へ? であった。
「あいつ」とは、かの出木杉くん的存在の彼のことだった。
どう思っているとは、いかに。

「どう思っているとは、いかに」と聞き返したかったが、ここは中学女子らしく
「えー? なんでそんなコト聞くのぉ?」と、好奇の表情を浮かべ聞く。

「や、別に」
なんだかむすっとして、言った。
私と違って、感情の動きのわかりやすい表情をしていた。
友達の頃はそんな風にまじまじとは見たことがなかったが、よくよく見ると
けっこうかっこよい。むっとした顔がかわいい。まつ毛が長くて羨ましい。
そんなことを考えながら、質問のことはたいして気にとめていなかった。

しかしその問いは、その後も幾度となく投げかけられることとなった。
そのうちに問答が頭の中でぐるぐると反復され、時々、その意味について
考えてみたりした。考えてはみたものの、結局よくわからなかった。

付き合う、ということはあまり楽しいことではないのか。
友達だった頃の方が、ずっと楽しかった気がする。
よくわからないままにして、デートに出かけてみたり、電話で話してみたり
ふたりだけのひみつごとをつくったりしていた。

それから数週間が経ち、部活の終わりにいつものように待ち合わせをして
いっしょに歩いて帰る途中、またしても、同じ質問をうけた。

終に本当のことを言え、と言われたので、なまじ本当のことを言ってみたら、
突然怒り出し、私を置いて猛ダッシュで帰り去ってしまった。

取り残された私は、何が何だかよくわからなかったが、マズイことを
言ってしまったらしい、という事は、わかった。


―そして、数日後、カレシの友達(代理人)の口から「別れ」を告げられた。
 私は、いともあっさりフラれてしまったのだ。

そのときはやっぱり悲しくて、家に帰ってからベッドに突っ伏して泣いた。
けれど、少し泣いたら「なんでやねん!」という気持ちが強く沸いてきて
だんだんそちらの気持ちのほうが大きくなり、悲しくなくなった。


「かっこいいしサッカーもうまいし、前は好きだったけど、でもあきらめた」
聞かれたから、本当のことを言えというから、正直にそう答えたのだ。

なんでやねん!


・・・今ならわかる。
私の発言は、彼の自尊心を傷つけてしまったのだろう。
さらには、彼にとって気が気でない事実が、背景に迫っていたことも。

だけど、その時は何が何だかわからなったし、付き合ってから1ヶ月ほどで
突然フラれてしまったことで、私の自尊心にも傷が付いたのだ。

こうなった以上友達にも戻れないし、学校で会ったときに互いに無視を
決め込むのが辛かった。
「なんでやねん!」
そう言って笑い合って、何事もなかったように、もとの状態に戻れたなら
どんなによかっただろう。
付き合う、ということは、同時に、何かを失うこともあるのだということを、
知った。


―それから少し経ったある日、私の青春史上、最大の事件が起こる。


<つづく>




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