M*log

  

続・友人は恩人

2009-01-19 | ●M*log ・・・ 

「ありがとう」

そういって電話を切ったあと、私は目を閉じた。

そして彼女にカウンセリングしてもらったときに引き出した
あの頃の私を想った。

小さい頃のわたし。


ものごころついた時には『お姉ちゃん』だった。


弟たちはかわいい。
大好き。

でも、どうして?

私ばかり叱られるのは。

何をしても、褒められるのは弟で、私はとがめられることの方が
多いのは。

そうだ『私が悪いんだ』きっと『私がちゃんとしていないから』

そういう風にしっかりと思っていたのかどうかはわからないけれど

子供の私が『自分には価値が無い』と卑屈に考えるのには
じゅうぶんな材料がそろっていた。

私は弟に依存した。

弟のために、弟が褒められるように、弟が叱られないように振舞い
弟が私を必要としてくれることで、やっと私の存在価値が確認できる。

そうすれば両親にも、いいお姉ちゃんだと言ってもらえる。

私は弟たちにとって必要な存在なのだから、この家族にとっても必要。

見捨てられることはない・・・よね?


気づけば『誰かのなか』にしか自分の存在価値を見出せなくなっている
私がいた。


過剰なおばあちゃん子になったのも、そのせいかもしれない。

おばあちゃんはいつも私を褒めてくれた。

「あたたには才能がある、あなたはかわいい、ずっといっしょ」

おばあちゃんは、私を好きだといってくれた。
ただ、そのままの私を、必要としてくれた。

言いようのない自信がわいた。
おばあちゃんに絵を褒めてもらられる。歌を褒めてもらえる。
「きっと、なんにでもなれる才能があるね」
うれしくて、自分が少し好きになった。

おばあちゃんがいれば、私にはいつだって居場所がある。


・・・でも、おばあちゃんは亡くなってしまった。

今も・・・思い出すと苦しい。

まだまだ、亡きおばあちゃんに依存している。


カウンセラーの彼女は核心を言いたげに切り出した。

「そうだ、昔からおばあちゃん子だったもんね」

「そうなの」

「まあ私も同じようなことで、悩んでぶつかったことがあるんだけど・・・

 でもね、もう私たちもけっこうな歳だからわかるでしょ・・・? 

 当時『親も若くて、完璧ではなく、未熟な部分も多くあった』ってこと」


小さい頃、両親の存在は絶対で、完璧で、世界のすべてだった。

認められない、ということは、世界から追放される恐れがあった。


―だけど、今ならわかる。

もう、母が私を生んだ歳を、2年追い越した。

私だったら、正しく子供を育てられる?正しいとはどういうこと?

小さい子よりも、率先してお姉ちゃんを褒めるかしら?

お姉ちゃんだけを叱るのは、お姉ちゃんなら理解してくれるだろうから
そう思い込むことはないか?

だからといって、お姉ちゃんが可愛くないなんてわけがない。


そうなんだ。

お母さん、お父さんごめんね。

せっかくの愛情を、ひねくれて受け取ってしまっていたんだ。


そして、自分の価値は、誰の中でもなく、自分で見つけて
自分で育てるものなんだね。


遅いね、気づくのが。

あのね、友達が教えてくれてやっと気がついたの。

馬鹿だし鈍感だし、いい歳してまだ子供なんだ。


でもね、今はそういう自分も認めてあげたい気分なんだ。




―閉じた目から、ここのところ流していたものとは
 ぜんぜん違う涙があふれた。


 そして、目覚めた翌朝、とてもおなかがすいている事に気がついて
 起きしな、すぐに食料を物色したのだった。



「ありがとう・・・ってさ、今月だけで何回言ったかな?」

「さあね?」