波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

Tsuyoshi HasegawaのRacing the Enemy(2005)を捲って

2005-08-11 22:49:18 | 雑感
Tsuyoshi Hasegawa著"Racing the Enemy: Stalin, Truman, and the Surrender of Japan"が太田述正氏の網誌(http://ohtan.txt-nifty.com/column/)で8月2日から3日にかけて掲載された「原爆と終戦」(#819-821)で取り上げられていた.Hasegawa氏は,当網誌の5月2日付の記入で触れた米PBS放送のVictory in Pacificにも識者として登場していて,同番組の終戦に至る経緯の部分は彼の同書に依っていたようだ.同書では8月15日ではなく9月2日をもって日本の終戦と認識し,降伏文書署名後も続いた千島列島でのソ連による火事場泥棒的占領についても紙幅を割いている.北方領土云々と主張を続けるのであれば,本土での戦闘の記憶継承を沖縄で止めるのではなく,8月から9月まで続いた千島列島での戦闘まで含めるべきだ.しかし,何分8月15日の終戦の詔書の放送以降の事なので,北海道は兎も角,他の地域に住む日本人には,先の大戦は8月15日で終戦という「認識」の檻から未だ抜け出せないままだ.前述のPBSの番組での発言,そして同書中の昭和天皇についての記述から判断すると,日系とは言え所詮米国人であるのか,日本の歴史,特に近代における天皇と臣民の関係を理解していないのではないか,共和制の下で育った者の立憲君主制への偏見が何と無く窺われてならなかった.
© 2005 Ichinoi Yoshinori. All rights reserved. [Last Update:08/11/2005/ EST]