月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

「花もよ」「宝生」「Toriino」*9/23追記

2012年09月20日 | 能楽関連書

宝生能楽能の売店に「花もよ」3号があったので買おうとしたら、「宝生」という雑誌の特集も面白そうだったので一緒に。

「花もよ」は薄いのに情報ぎっしりで読みごたえあり。

特にこの号では、三宅晶子氏の「能の現代」という連載に触れられていた〈隅田川〉の公演とその考察が面白かった。

6月に日経能楽鑑賞会で催された、〈隅田川〉の2演出立合いについてだ。

子方を出さない演出には母親の救いはなく、たとえ夜が明けても彼女は狂乱の道をひた走るより他はない。

一方、子方を出す演出ではその一瞬の幻影に母親は救われ、おそらく夜明けに希望が見える。

同じストーリー、同じシーンにまったく異なる存在を描き出すことができるというお能の度量の広さ。

「宝生」の表紙にあった「特集 謡曲鳥類図鑑」の文字にひかれた。お能の中に出てくる鳥を解説している。

鴨川でよくみかけるゴイサギ(五位鷺)の名の由来がわかったのは収穫。

能曲「鷺」によれば、ある夏、帝が神泉苑の池にいた鷺を捕らえさせようとするが、鷺はすばしこく蔵人は何度も取り逃がしてしまう。そこで、これは帝の仰せだと言いきかせると鷺はおとなしく捕らえられた。帝はこれを喜び、鷺に〈五位〉を賜ったとのこと。

なぜかスタンドには「日本野鳥の会」の冊子「Toriino」もあった。こちらはまた、贅沢で美しい冊子。

沖ノ島(一般人は入れない)の写真を添えた藤原新也の「禁忌の島」と、瀬戸内寂聴のエッセイ「蓮の声」がよかった。

追)「宝生」に12/26乱能のご案内。往復葉書で申し込んで抽選のようだ。

9/23追記)

「宝生」9・10月号について書き落としていたが、数年前に「源氏供養」を見たときに抱いた疑問の答がp26にあって感激したのだった。

疑問というのは、「紫式部の罪とは何ですか?」というものだ。お能の中で、紫式部が成仏できずにいるのは何故だったのか。

「虚構を弄んだ」罪を問われているのか、『源氏物語』の中で光源氏の死がうやむやにされていることが問われているのか。

そのヒントが、三浦裕子氏の『 能〈源氏供養〉と仏事「源氏供養」 』という記事に書かれていた。

ここで、〈源氏供養〉は能曲を指し、「源氏供養」は本来の仏事を指す。

その仏事としての「源氏供養」にも二系統あり…という内容で、まだ何度か読み直さないとしっかり理解できそうにもないのだけれども、これはわたしにとってとてもとても大きな収穫で、今回宝生能楽堂に行ってよかったなーとつくづく思ったのだった。


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3 コメント

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隅田川 (きゅうる村)
2012-09-20 19:41:01
前にも書いたような気がしますが、
子方を出さない方がいいと思います。
この点では、原作者元雅よりも、
世阿弥を支持。
というか、子方を使うこと自体が好きではないのだと思う。
でも、いろいろな考え方があるのですね。
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Re:隅田川 (月扇堂)
2012-09-21 03:01:35
どちらにしても、実はあまり感情移入できない曲でして…。
周りの席から啜り泣きが聞こえると、どうしてよいのかわからなくなる…(_ _;)
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トラックバック (月扇堂)
2012-09-25 12:06:18
tamonさん、トラバ申請ありがとうございました。(気づかず失礼いたしました(汗))
鷺つながりの記事、公開させていただきます<(_ _)>
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