Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ルネッサンス

2008-10-13 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2006年/フランス・イギリス・ルクセンブルク 監督/クリスチャン・ヴォルクマン
「モノクロームの美学」


モノクロームの美しさに酔いしれました。最初はモーション・キャプチャーなる技術を駆使した人物たちの動きに目を奪われるのですが、案外それは見ているうちに慣れてきてしまいます。むしろ、強烈に惹かれるのはシンプルなワンカット。特に、光と影のコントラストが鮮やかな人物の横顔です。主人公カラスが思慮深げに雨降る夜の街を眺める。その時、スクリーンの右半分は真っ黒で、左半分にはカラスの横顔の輪郭と小さな雨粒しか映っていない。この圧倒的に情報の少ないモノクローム画面が美しいことこの上ないのです。モノクロ好きには、堪らないカットが満載でした。日本の切り絵がふと頭をよぎったのは、私だけでしょうか。

また、街の全景や小物のディテールが、この手法だからこそ違和感なく見えます。例えば、空中に現れる小型モニター画面。最近のハリウッド映画でもよく出てきますが、どうしても嘘っぽいんです。でも、このメタリック・モノクロームの世界では、未来の乗り物も尖塔のような建物も小型のハイテク機器も、その存在感がとてもリアルで臨場感豊かに映ります。

物語が似ているからと、SF映画の金字塔と言われる「ブレード・ランナー」と比べるのは、ちょっと酷な気がします。近未来映画の新たな表現方法として十分に評価されるべき作品ではないでしょうか。すでに何でもアリとなってしまったCGで誤魔化したハリウッドの近未来大作を見るより、よっぽどお勧めできます。エキセントリックな美しさを堪能しました。




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