Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

Ricky(リッキー)

2012-01-02 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2009年/フランス 監督/フランソワ・オゾン

「実に不思議な感覚」

「しあわせの雨傘」とほぼ同時期に公開されており、何か対にでもなっているのかなと思いきや、
そんなことは全然ないのでした。
私は「しあわせの雨傘」よりこちらの方が断然好きです。
初期のオゾン作品の香りがぷんぷんしますね。
娘が乱暴にぬいぐるみを投げつけたりとか観客の不安を煽るようなカットが多い。
中でも、廊下からバスルームをのぞく固定カメラで主人公が衣服を脱いでいるシークエンスがたびたび出てきますが、
オゾンのカメラは女性のヌードに対してとても冷徹じゃないですか?
ぶっちゃけて言うなら乳房の撮り方がさ。
すごく乱暴なの。
ラストシーンもずぶ濡れになって帰ってくる主人公の乳房がワンピースにピッタリと張り付いていて、
なんかこう心がざわつく、といいいますか。
あんま、本題とは関係ないんですけど、こういうカットを見ると初期作品を思い出しますね。

さて、本題。
生まれてきた赤ん坊に羽が生えてきた。
そのグロテスクな描写たるや、ファンタジーとは全く言えず、
主人公がトイレで済ませてしまった後におそらく工場で毒性の高い商品の香りをかいでしまって懐妊、
ってこともあり、なんかホラーチックな展開でもあります。
主人公の娘は生まれ来る赤ん坊のことを深層心理では疎ましく思っていることもあり、
リッキーは「天使」という厳かな存在というよりも奇形や異形の存在とも受け取れる。
ところが、このリッキー坊やがとてもかわいらしいんですよね。

リッキーはこの家族に災厄をもたらし、しかしながらも、その存在によって、
真の愛を教えてくれたのかも知れず。
見る人によっていかようにも解釈できる作品だと思います。

この放ったらし感がとても味わい深いです。




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