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Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

残穢 -住んではいけない部屋-

2017-08-03 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2015年/日本 監督/中村義洋

(WOWOW)

中村義洋も竹内結子も苦手だが、思いのほか楽しめた。
短絡な怨念にまとめず、その連鎖の元をたぐり寄せながら調査するという物語(原作の力)が面白い。
また、主人公2人の女性がぎゃあぎゃあわめかず、淡々としているのがさらに怖さを増す。
津山32人殺しから、嬰児遺棄事件など、およそ現代的日本ホラーのモチーフになりそうなものを
てんこ盛りしながら、しっかりとまとめあげた中村監督の力量を見た。
静かにひたひたと恐ろしさが迫り来る。品の良いホラーだ。

Seventh Code

2016-12-30 | 日本映画(さ行)
★★☆ 2013年/日本 監督/黒沢清

黒沢清なら、たいがいの作品は面白いと思えるんだけど、これは全然ダメ。無双の前田敦子も清とは合わなかった。そもそも、これって前田敦子のPV企画なの?前田敦子がアサシンなワケないじゃん。無理があり過ぎ。

スクラップ・ヘブン

2016-12-25 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 2005年/日本 監督/李相日

2005年ってことで、オダジョーが美しかった頃。すてき。中盤までの展開はファイトクラブを思わせる。まあ、社会を憎む若者の青臭さがちょっと鼻につくけど、公衆便所での汚物漂うようなシーン多く、意欲作であることは間違いなし。

不知火検校

2016-11-02 | 日本映画(さ行)
★★★★ 1960年/日本 監督/森一生

チャンネルnecoでやっていたのでラッキーってな感じで観賞。座頭市の元ネタだと思ってたら、主人公がすっげえ悪いヤツでビックリ。いわゆるピカレスクロマンってやつですが、全く感情移入できないほどの根性悪。女を犯してでも、人を殺してでも出世を企む検校を演じる勝新太郎の熱演はすばらしい。そして、中村玉緒が可愛い。

その夜の侍

2014-08-14 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 2012年/日本 監督/赤堀雅秋
DVDにて観賞

最近の堺雅人はハイテンションの役ばかりで見飽きていたのですけど、
本作では交通事故で死んだ妻のブラジャーを持ち歩いている人生どん底な男を好演しておりました。
虎視眈々と復讐のカウントダウンをする堺雅人、そして、クズ野郎の山田孝之。
二大俳優の演技合戦が見物のような体の作品なのですけれども、
私はどうしようもないクズ野郎から離れられない周囲の人物の有り様の方が興味深かったなあ。
田口トモロヲ演じるタクシー運転手と谷村美月演じる警備員のふたりは、酷い目に合わされたにも関わらず
ずっと縁を切ろうとしない。クズ友達の綾野剛も。
ひき逃げを起こした山田孝之よりも、この周辺人物の方の孤独の方が恐ろしい。
ここをもう少し掘り下げてくれたらもっと面白かったなあ。

仁義なき戦い

2014-07-18 | 日本映画(さ行)
★★★★ 1973年/日本 監督/深作欣二
DVDにて観賞

みんなが傑作、傑作っていうもんで見てみた。
ゴッドファーザーも好きだし、アウトレイジも好きだし、ヤクザ映画は嫌いじゃないし。
本作が傑作と言われるのもわかるけど、私の好みじゃないかなあ。
たぶん、暑苦しいのがダメなんだなあ。暴力映画は特に。
弱腰の金子朝雄がいちばんのワルって、くだりはかなり笑えた。
この荒々しさ、ダイナミズムが醍醐味なんだね。
いろんな暴力映画の原点であることは十分に堪能いたしました。

さんかく

2014-01-05 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 2010年/日本 監督/吉田恵輔
(DVDにて鑑賞)

「見事な方向転換」

彼女の妹にフラフラしちゃうどうしようもない30男の話がメインストリームだと思っていたら、
あれよあれよという間に違う流れに乗せられ、予想外の物語が展開し始めた。
しれっと話の方向性を変えていく、その饒舌な語り口がお見事。
まさか、こんな展開が待っていたとは。
とぼけた顔してやってくれたな!って感じで、デビュー作「机のなかみ」の鮮やかなどんでん返しを思わせる。
冒頭、佳代が親友から妖しげな商品の勧誘を受けることから物語は始まり、
これは今後の展開の種まきかと思わせておいて、ところがどっこい、そっちじゃないんだよねってか。
してやられたわ~~~。

ロリコン、ストーカー、マルチ商法と奇抜なアイテムが並ぶが
見かけは普通の暮らし、普通の男女のすれ違い。
この組み合わせ方が絶妙。

中3の女の子にフラフラしてしまう百瀬は確かに痛いのだが、
私は「仕方ないんでないの?」と思うわけ。
同じ部屋でブラジャーも付けずに短パンで足を投げ出すオンナの方が悪いよ。
正直この桃って子、ものすごくムカつくもんなあ。
その後の展開も含めて。確信犯だしさ。

とにかく登場人物はみんなイタイのだけど、
そのイタさの描写を面白可笑しく見せる映画ではなく、
あくまでも何となくそこいら辺にいそうな普通の人の物語のように、
スイスイと物語が流れていく、語りの巧さにに唸るのでありました。

先生を流産させる会

2013-08-26 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2011年/日本 監督/内藤瑛亮
(WOWOWにて鑑賞)

「私の体は誰のものか」

これはとても気に入りました。
映画としての絵づくりがきちんとできています。
60分程度の作品で、こんなに暗い話はこれくらいが限界だろうという感想もあるようですが、
私はむしろ120分かけて、5人組のそれぞれの立ち位置や
カリスマの女の子がだんだんと孤立する様をじっくり見たかったです。
首謀者を思春期の女子生徒にすることで妊娠への嫌悪という構図は、
ある意味わかりやすくなります。
女はみんな気持ち悪い生き物。
その共感と嫌悪がうまく表現されていました。
このじめじめした女子ならではの複雑な関係を男性監督が撮っているというのが面白いです。

妊娠した女性教師を気味が悪いと思う、女性中学生。
これはやはり、女性特有の身体性の物語なんですね。
園監督の「恋の罪」と同じモチーフではないでしょうか。
妊娠によって、赤ん坊に体を乗っ取られる女。
初潮によって、違う体に変わる中学生。
自らの意思とは関係なく、変貌する体へのとまどい。
私のこの体は、私のものなのか。その不安が恐ろしい

さて、実際の事件は首謀者は男子中学生です。
これ、男子だとまたずいぶん物語の核は変わってきます。
男子生徒だとどういう映画になるのだろうと不謹慎ながら考えてしまいました。

ションベン・ライダー

2012-01-06 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 1983年/日本 監督/相米慎二

「アントキの中学生」

勝手なイメージでこれが相米監督のデビュー作だと思ってたんだよね。
なぜかというと、学生の自主映画みたいなノリでとても荒削りな作品だから。
もちろん、それが魅力になっているのは言うまでもない。

でも「翔んだカップル」や「セーラー服」の後に作られた作品なんだね。知らなかった。

大好きなカメラを手に入れて、無我夢中で撮った。
そんなみずみずしさにあふれている。
ぴあフィルムフェスティバルで学生たちの作品が入賞したりするじゃない?
あんな感じなんだよね。

本当ならそのたどたどしさが稚拙に感じられるかもしれない
河合美智子や永瀬正敏のセリフまわしも魅力的にうつる。
大人という壁に全力で突撃する中学生たち。
「大人は判ってくれない」。
このモチーフはその後の「台風クラブ」で大きな実を結ぶんだね。

性に目覚め、大人になろうとしている彼らだけど
自分たちがまだ子どもであること、その無力さも知っている。
もがいても、もがいても、大人は相手になんかしれくれない。
ちぇっ、なんだよ、バカヤロー。

そんな中で藤竜也演じるヤクザだけが自分たちを大人扱いしれくれる。
この藤竜也の雰囲気がすごくいいんだよねー。

今そうやってもがいている中学生っているんだろうか。
今の子たちにとって、大人と自分たちとの境界線はとても曖昧だ。
「大人」とは本来、不可解で無寛容な存在なはずで、
だからこそ、その存在の際だちを壁と捉えてきた。
でも、今の子たちにとって、大人はそれだけの存在感を示しているんだろうか。
ふと、そんなことを考えてしまった。


ゼロの焦点

2011-09-20 | 日本映画(さ行)
★★★ 2009年/日本 監督/犬童一心


「女優競演の裏に隠されたもの」


同じ白いパンタロンでも、こうも違うものでしょうか。
「サンダカン八番娼館」においてサキさんを侮蔑するように見えたあの白いパンタロン。

本作では中谷美紀がスクリーンに初めて登場するその時です。
幅広のひらひらした白いパンタロンを履いた佐知子が広末涼子演じる妻・禎子の前に颯爽と現れる。
その白さは目の前でおどおどする新妻を威嚇すると同時に、
己の過去の闇を消し去りたいという決意を身にまとっているように見える。
宣伝ポスターでもどっかと中心に居座る広末涼子の斜め後ろから、私が主役よ!のオーラを飛ばす中谷美紀。
いいですねえ。女優はこれくらい気概がないと。ドラマ「仁」の花魁役、野風の演技でも彼女を見直しました。

そして、犯人がまとう真っ赤なビロードのコートと美しい対比。
時代がかった演出で確かに2時間サスペンス的ですが、こういうのがないと松本清張作品は盛り上がりません。

と、少しばかり褒めてはみたものの、この中谷美紀の存在感あってこその作品。
松本清張と言えば、誰しも野村芳太郎監督を思い浮かべると思うのだけど、
社会的弱者である犯人が抱える苦悩とか、生への執着とか、そういう清張作品の根幹的な部分が弱い。
戦後体を売ることでしか生きていけなかった女性たちの悲しい人生が浮かび上がらないといけないんだけど、
ともかく三人の女優競演を際立たせないといけない事情があるんでしょう。
特に広末が絡むと、そういう作品事情が前面に感じられるのは私だけかしら。
こういうところも、彼女が女性映画ファンから嫌われる大きな理由の1つだと思います。

そして、女優共演にスポットを当ててしまったから、すっぽり抜け落ちてしまったものがもう一つ。
それは、3人の女を天秤にかけていた男の心理。
西島秀俊演じる憲一は、禎子と結婚することですべてを精算して新しい人生を始めたかったって言うんだけど。
あのさ。
じゃあ、なんですかい?
佐知子や久子と付き合っている自分は穢れているとでも?
憲一のやり直したいという思いは、戦後のそういう生き方しかできなかった女性に対する侮辱なんですよね。
だから、この男は途方もなくずるいし、狭量。そのずるさをえぐれば、もっと違った展開が生まれたはずで残念です。

サンダカン八番娼館 望郷

2011-08-26 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1974年/日本 監督/熊井啓


「心の奥底に分け入る白いパンタロン」


悲しい。悲しくてたまらない。
親に騙され、国に騙され、見知らぬ外国の土地で来る日も来る日も体を売らされた「からゆきさん」。
女性としてはもちろんのこと、人間としての最低限の尊厳すらもない毎日。
港に軍艦がやってくる日はかき入れ時となり、次から次へと客を取らされる。
ひどい日は1晩に30人の客を取らされる。その壮絶さに想いを馳せ、胸が詰まるような鼓動の早さを感じるけれど、
果たしてそんなもの、彼女たちが味わった苦しみの何百分の一にも届かないだろう。
外貨を稼ぐため、国が彼女たちを送り続けた。その事実をもっと多くの人が知るべきだ。
悲しくなるのがわかっているから、こういう映画を観るのはつらいんだけども、やっぱり観なきゃいけないんだ。

こんな壮絶な日々の後、辿り着いた汚い小屋暮らし。だのに、老婆のサキさんは無垢で優しい。
田中絹代の渾身の演技に打たれる。
受けた苦しみがあまりにも絶望的だからこそ、人間としてまとわりつく一切の我欲を捨て去ってしまったのだろうか。
そんな風に想像すると、再び悲しさが込み上げる。
何もかも呑み込んで、受け入れて、そして老いて生きる女の孤独。

熊井監督の演出は容赦が無くて、からゆきさんのみじめな実態がこれでもかと迫る。
そんな劣悪な環境で光る高橋洋子のあどけなさや色っぽさ。
その危うさがひょっとすると、こうした運命を受け入れざるを得ない女の無知をあぶり出しているようにも思え、
まさか、とぶんぶん頭を横に振ってしまったりもする。
残念なのは、栗原小巻演じる女性史研究家、圭子。
彼女の行為がまるで隠したい過去に土足で入り込むごとき不快感を感じさせる。

ずっと気になって仕方なかったんです。圭子が履く白いパンタロン。
田舎の小さな集落に通い詰めるには、あまりに似つかわしくないその出で立ち。
その白さは純潔の象徴のように思われ、来る日も来る日も体を売ってきたサキさんを愚弄しているように見えるのです。
しかもね。
私のアンテナが変なところに敏感なのかも知れませんけれど。
スカートではなく、パンタロンであることが、圭子がかたくなに貞操を守っていることを強調しているようにも見えるのです。
きっと、熊井監督はそんなことは狙ってないとは思う。学者として颯爽な出で立ちをさせただけでしょう。
でも、映画作品における衣装って大事だと思うんだ。観客は映像から様々なイマジネーションをしてしまうから。
そこんところがとにかく残念なんですが、多くの方に知って欲しい、見て欲しい作品であることに間違いはありません。



しんぼる

2011-08-06 | 日本映画(さ行)
★★☆ 2009年/日本 監督/松本人志

「半径10km圏内の映画を撮ってみたらどうか」


デビュー作が日本国の話で2作目が神の話だなんて、
松本人志はなんでこうも大層なテーマばかりに取り組むのか、私には理解できない。
いくらなんでも、でかすぎやしない?
描く対象物がでかければでかいほど、それを揶揄する表現がユーモアを帯びるのかも知れない。
その狙いはわかるけど、取りあえげるテーマがこんなだからこそ、
やはりコントの延長線にしか見えないんだな。
「さや侍」は見ていないからわからないけど、あれは人を笑わせるとは何か?
みたいな結構深いテーマを抱えてたりするんだろうか。
なんかこう、もっと身近なことを描けばいいと思うんだけど。
幼少時代きっと周りにうざるほどいたであろう、尼崎のおもしろいオッサンの話とかさ。

実験的で、チャレンジしようって気持ちはすごくわかる。
またそういう作家の作品はつまらんなんていう先入観も全く持っていないよ、私は。
なんだか、無理して作っているように見えるんだよね。
そういう風に観客に思わせてしまう映画ってのはさ、やっぱ根本的にダメなんじゃないかな。

メキシコシーンはすごく雰囲気が出ていていい感じだから、
余計に普通の映画撮ってみれば?と思っちゃうのかもね。

色即ぜねれいしょん

2011-06-29 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 2008年/日本 監督/田口トモロヲ

「法然!法然!法然!」

「アイデン&ティティ」に引き続き田口トモロヲ監督、映画ファンのツボをガッツリ抑えてますなあ。これは、おもしろかったぁ。

前作「アイデン&ティティ」は原作みうらじゅん、脚本宮藤官九郎だったわけです。これで、面白くないワケがなかろうと思っていたら、予想通り楽しい作品で。ところが、今度は同じ原作みうらじゅんでも、脚本を変えてきた。山下敦弘監督の長年の相棒、向井康介。青春の痛み、やるせなさ、エロさを書かせたら右に出る者なしの強者ですよ。これまた、面白くないワケがない。そうしたら、これまた予想通りとても楽しい作品でした。

むさくるしい男子高校生が叫ぶ法然コールが幕開けで、つかみはバッチリ。体育館舞台の裏から現れるあのきらびやかな法然像は、本当に東山高校にあるらしいですね。それから続く、仏教系男子高校生たちが繰り広げる、アホ丸出しの青春ストーリー。フリーセックスの島があると信じて疑わないバカ男3人組、オバチャンの目から見たら微笑ましいの、なんの。はいはい、アンタらの頭の中にあるのは、それだけやな。

バカはバカなりに切ない。それがきちんと伝わってくるところが、この映画のいいところでね。主演の若手俳優3人がのびのびと自然に演技していることに加えて、脇役のミュージシャン俳優がとてもいい演技をしている。ひとりは、家庭教師役を演じる「くるり」の岸田繁。もう一人が、前作「アイデン&ティティ」から引き続きの出演、民宿のオーナーを演じる「銀杏BOYS」の峯田和伸。まあ、このふたりがいい味出してる。演技は決してうまくないけど、見ているものを引き込む絶妙な間や雰囲気があって。この辺は長年脇役をやってきた田口トモロヲ監督の演出の腕、なんでしょうかねえ。主演の渡辺大和くんも本業はミュージシャンらしいしね。田口トモロヲだって、「ばちかぶり」のボーカルなワケで、そういうミュージシャンつながりのあ・うんの呼吸が作品に満ちていて、とても心地いい。

主人公の両親もリリー・フランキーと堀ちえみで、いわば俳優が本業ではないふたり。でも、ひとり息子がかわいくてしょうがない優しくてのんびりした夫婦を自然に演じていてとても微笑ましい。田口トモロヲ監督の素人俳優に対するの演出が抜群に光る1本です。

青春の蹉跌

2011-04-24 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 1974年/日本 監督/神代辰巳

「エンヤートット、エンヤートット」

アメフト部のスター選手の賢一郎(萩原健一)は、かつて学生運動に身を投じたこともあったが今では法学部学生としてエリートの階段を着実に昇りつつあった。名家の令嬢(檀ふみ)との婚約も控え、社会的地位と財産をも手中にしていたが、家庭教師先で知り合った教え子(桃井かおり)と遊びの関係を持ち、彼女が妊娠してしまう…


本作についての批評や感想を読んでいると、ショーケンが(頭の中で)唄っている「エンヤートット、エンヤートット」というフレーズがみんな印象的みたいで、私もこの歌声が映画を見終わってからも頭から離れなかった。「バイブレータ」で頭の中の声に悩まされるのは独身ライター女性だったけど、この頃は若い男たちなんだよね。時代を感じる。自分の中に渦巻く焦燥感やいらだちが、この意味のないエンヤートットというリフレインで実に巧く表現されている。このアイデアはショーケンだった、って話をどっかで聞いたけど。

いいとこのお嬢さんと結婚するために、妊娠しちゃった遊び相手を捨てると言う、ストーリーとしては、本当にありきたりで陳腐なんだけどね。やっぱ、神代監督だけに男と女の切っても切れない関係性をじっとり描いていて引き込まれる。それにしても、ショーケンの演技がすっごいヘタでビックリ(笑)。まあ、演技力よりも存在感が大事ってことかな。

今や皇后様を演じる桃井かおりだけど、若い頃は不器用でバカな女をやらされたら、この人の右に出る者ナシだね。まるで、雨の日に捨てられた子猫のよう。助けてあげないと生きていけないけど、不要になればいつでもうち捨てられるような、そんな薄幸さがにじみ出ていた。




スイートリトルライズ

2011-02-09 | 日本映画(さ行)
★★★★ 2010年/日本 監督/矢崎仁司

「ビョーキな夫婦の観察日誌」

この夫婦はかなりおかしい。病んでいると言ってもいい。一体、いつからおかしいのか。それを示さないことがこの映画のいいところである。どこでどう、ふたりはすれ違い始めたのか。そもそも、人格的に問題があるのか。何もわからないから、いろいろ想像できるのが面白い。だって結婚3年でこの枯れ具合は尋常じゃないもの。

退屈な女だ。家で人形を作り、手の込んだ料理をし、リビングで一緒に過ごすことを拒む夫に何の文句も言わない。こんな退屈な女がいるだろうか。しかし、彼女をこんな退屈な女にしてしまったのは男の責任でもある。呆けた表情でテディベアの目となる小さなボタンを刺す中谷美紀がコワイ。美人だけど抜け殻のようになった女を見事に演じていると思う。

そして見かけは至ってフツーのサラリーマンの南朋くん。最近なぜかビールのCMでも缶コーヒーのCMでもこのスタイルなのだが、悲しいことにあんまり魅力的じゃない。しかし、映画になると俄然違う。後輩に迫られて、三白眼の黒目のところが困ったように右往左往するのがカワイイ。とはいえ、この男のイタさも瑠璃子同様。好きな南朋くんじゃなければ、この男かなりキモいと言える。

さて、原作ではこの不倫は文字通りスイートな寄り道のように描かれているのだろうか。とても気になる。この作品を見て感じるのは、結局、壊す勇気のない、夫婦関係を維持させるための動機付けとして、別の人との恋があるだけ(だから、それはスイートでも何でもない)。夫婦関係を再構築するために、ちょっと別の人とセックスしてみましたってことなワケ。で、私はそれを真っ向否定はしない。そうしないと、互いを確認できない人も存在するからね。しかしそんな馬鹿馬鹿しい作業を経ないと、前に進めないこのふたりは大人になりきれない子どもだ。

瑠璃子は若い男に「愛してるわ」と言うが、これはもうぎょっとして仕方ないのである。それこそ、魂抜かれるようなセックスがあるわけでもなく、何が良くてこの男に惹かれたのか一切の描写はない。一事が万事、ふわふわとしていて、妻は潜在的な心中願望、夫はコミュニケーション不全。ラストは希望でも何でもないよね。一緒に歩くしか選択肢がない、つまり他の選択肢を取ることができない男と女。螺旋階段を登ると言うのは、突破口はどこにもなくて同じところをぐるぐる回るだけというこの夫婦のどうしようもなさを示しているように感じるのだけど。矢崎監督の視点は終始冷徹。だから、とても怖い作品だと思うよ、これ。

それにしても池脇千鶴ちゃん、どうしてそんなにまるまるしちゃったの!むくみまくり。「デブ」ってセリフがあるから、役作りなのかしら?だとしたら凄い。