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シリーズ PKO「駆けつけ警護」の危険(その六) 戦場での自衛官死傷者を想定した救護体制を検討

2015-11-13 | 集団的自衛権

 防衛省内では、戦争法の成立前から、自衛隊が前線で戦闘を行い戦傷者が出たときの救護体制の構築をどうするのかという検討が行われていました。「防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会」(以下、検討会)が立ち上げられ、4月22日、6月17日、7月23日と三回行われています。驚くべき内容です。安倍政権が本気で自衛隊を戦場に送り込み、殺し殺される危険な任務につかせようとしている、戦争する国に変貌させようとしていることを確信させるに十分な内容です。その裏付けとして、戦場での戦闘に対応する救護体制を急ピッチで整えようとしているのです。

※防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/kyumei/gaiyo.html

4月22日現在の委員は以下
石井 正三 日本医師会 常任理事
遠藤 久夫 学習院大学経済学部 教授
折木 良一 富士通株式会社 常任顧問
織田有基子 日本大学大学院法務研究科 教授
◎佐々木 勝 東京都立広尾病院 院長
田邉 晴山 救急振興財団救急救命東京研修所 教授
山口 芳裕 杏林大学大学医学部 教授
山本 保博 東和病院 院長
行岡 哲男 日本救急医学会 代表理事
◎は座長

検討項目
(1)防衛省・自衛隊における適確な救命に必要とされる救急救命処置
(2)必要とされる救急救命処置に対する教育体制
(3)救急救命処置を行うために必要となる資器材等
 前項に掲げるもののほか、適確な救命に関して必要と認める事項

最近の開催実績
第1回 2015年4月22日
・自衛隊の第一線救護における適確な救命について
第2回 2015年6月17日
・第一線救護における適確な救命のために必要となる緊急の処置及び教育・訓練について
・第一線において衛生科隊員が医療行為を行う体制について
第3回 2015年7月23日
・防衛省のメディカルコントロール体制について
・有事緊急救命処置(仮称)のプロトコール(案)・教育カリキュラム(案)に ついて

 検討会がされていた当時戦争法は成立しておらず「戦闘地域」での戦闘は禁じられていたというだけでなく、戦争法においても安倍首相は、自衛隊員の派遣は「現に戦闘を行っていない現場」に限り、戦闘が発生した場合は活動を中止・または撤収すると言明しています。これが全くウソであることがわかります。「弾が飛び交っているいるような危険な現場」での戦傷者の救護活動を検討しているのです。

 第二回(6月17日)の検討会では、「戦闘地域の中では第一線救護は医療が主体となる場面ではなく作戦が主体となり、通常の医療の考え方とは異なる」「戦闘地域の中でどれだけの救護措置ができるかということ」との前提条件が提起されています。
※第二回防衛省・自衛隊の第一線救護における適確な救命に関する検討会
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/kyumei/sonota/pdf/02/sanko_001.pdf

 以下は検討会で出された「第一線救護に係る防衛相CMC体制のイメージ図」です。CMCとはコンバット・メディカルコントロール(Combat Medical Control)の頭文字をとったもので、「戦傷者」を対象とします。国内の大規模災害時の自衛隊派遣での民間災害負傷者の救護とは全く違う、「戦闘で負傷した自衛官」の救護です。すなわち、銃弾が飛び交う戦闘場面において、軍事作戦を遂行しながらいかに戦傷者を後方に運搬し、緊急救命処置を行うかが検討対象になっているのです。

 以下では「敵との交戦下において、実施する救護の状況を説明するもの」として山間部、平野部、沿岸部または島嶼部のそれぞれの戦闘地域からの安全地域への待避が示されています。

 もう一つは、米の3つの大規模侵略戦争での負傷者とその救護を検討対象としていることです。検討会資料はベトナム戦争に比べ、イラク・アフガン戦争では負傷者の死亡率が15.8%から9.4%へ格段に下がったとしています。防護装備の発達やヘリコプターなど後送手段の改善に加え、TCCCガイドライン(Tactical Combat Casualty Care 戦術的戦傷救護)の標準化が大きく貢献しているといいます。それを日本の自衛隊も学ぼうというのです。

 ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争での米軍の死傷者の類型分けを行い、どのような負傷と応急処置が必要であったかなどを検討しています。英文の参考文献も大量に紹介されています。
※【資料5】第一線において適確な救命のために新たに必要となる緊急の処置のエビデンス(PDF:622KB)
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/kyumei/sonota/pdf/02/005.pdf
※【資料3】第一線救護の状況(PDF:603KB)
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/kyumei/sonota/pdf/02/003.pdf
※【参考資料2】関連論文一覧(PDF:41KB)
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/kyumei/sonota/pdf/02/sanko_002.pdf

 興味深いことに、参加委員からは「米軍全体あるいは第75レンジャー連隊を参考にしているが、今回自衛隊が想定する戦傷の種類はこれらに近似しているという想定でいいのか」などの質問が出されています。つまり自衛隊の海外派兵で想定しているのは、イラク、アフガン型の戦闘への参加・協力なのかと問うているのです。

 それに対してどのような回答があったのかは書かれていませんが、検討会では2004年イラク・ファルージャの戦闘において、負傷した兵士を2人が助けに入り安全地域に引っ張ろうとしたが救護者も武装勢力に撃たれてしまった事例を紹介し、“自分の安全を確保しながら救命活動を行う困難さ”を指摘しています。
 ここから、防衛省が、ファルージャの大虐殺のような米軍の軍事作戦に自衛隊を派遣し自衛隊員を危険に晒すことさえ全く排除していないということを読み取ることができます。

 言うまでもなく、戦場へ自衛隊を海外派兵しなければ、このような救護体制の検討は必要ありません。逆に海外で武力行使をしようとすれば、単に戦闘部隊だけでなく、戦傷者の発生を前提とした本格的救護・医療チームの派遣が迫られるということです。PKO「駆けつけ警護」とは、戦闘現場に自衛官が突入していくということで、死傷者の発生は避けられません。 

 自衛隊の戦時医療体制の構築という点からも戦争法の危険を明らかにし、廃止を求めていきましょう。

 (ハンマー)


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