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「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[4]

2016-06-09 | 集団的自衛権

「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[4]

http://ikensosyo.org/より

3 後方支援活動等の実施が違憲であること

(1) 後方支援活動等の拡大

 新安保法制法は、重要影響事態法及び国際平和支援法において、その主要な活動として、合衆国軍隊等に対する後方支援活動及び諸外国の軍隊等に対する協力支援活動を規定し(以下、「後方支援活動」と「協力支援活動」を合わせて「後方支援活動等」という。また、集団的自衛権の行使と後方支援活動等の実施を合わせて「集団的自衛権の行使等」という。)、地球上どこでも、また、米軍に対してだけでなくその他の外国の軍隊に対しても、後方支援活動等を行うことを可能とした。
 すなわち、まず、従来の周辺事態法を重要影響事態法へと改正し、これまで、「周辺事態」すなわち「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」に対処する法律だったのを、この定義規定の文言から「我が国周辺の地域における」という限定を外して「重要影響事態」と称し、支援の対象も米軍以外の外国軍隊にも広げて、「後方支援活動」「捜索救助活動」として、武力行使等をする米軍等への後方支援等の対応措置をとれることとした。
 また、これまではアフガニスタン戦争、イラク戦争に際して、テロ特措法イラク特措法等という特別立法をそのつど行い、外国軍隊への協力支援等を行っていたのを、「国際平和共同対処事態」すなわち「国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの」に対し、いつでも、地理的限定なく自衛隊を派遣でき、「協力支援活動」「捜索救助活動」として、武力行使等をする外国軍隊への協力支援等の対応措置をとれることとした。
 これら「後方支援活動」及び「協力支援活動」の内容はほぼ同じであり、自衛隊に属する水・食糧・機器等の物品の提供及び自衛隊の部隊等による輸送・修理・医療等の役務の提供を主な内容とするが、今回、従来の周辺事態法やテロ特措法等の内容を拡大し、これまで禁止されていた弾薬の提供や戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機への給油・整備等、外国軍隊の武力の行使に直結する、より軍事色の強いものが加えられた。

(2) 他国軍隊の武力行使との一体化の問題

 ここで後方支援活動等とされる外国の軍隊に対する物品及び役務の提供は、一般に「兵站」と呼ばれているものである。自衛隊の後方支援活動等において問題となるのは、これらが憲法の禁ずる「武力の行使」に当たらないかという点である。すなわち、直接戦闘行為に加わらなくても、また、自衛隊の活動自体が武力行使に当たらないとしても、他国の武力行使と一体になることによって、結局、憲法9条が禁止する「武力の行使」と評価されるのではないかという問題である。
 名古屋高裁平成20年4月17日判決(判例タイムズ1313号137頁)は、イラクにおいて航空自衛隊が多国籍軍の武装兵員を空輸した行為につき、「他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動であるということができる」と判示した。
 後方支援活動等は、それ自体は戦闘行為そのものではないとしても、相手国から見れば一体として武力を行使しているものとして攻撃の対象となり得るものであり、法的にも武力の行使と評価され得るものである。
 従来の政府解釈では、このような一体化論を前提として(つまり、後方支援活動等が、法的に武力行使とみられることがあることを前提にして)、他国軍隊の武力行使と「一体化」しなければ憲法上の問題を生じないとの解釈が行われていた。
 具体的には、まず平成2年の湾岸戦争での多国籍軍支援のための「国際連合平和協力法案」(不成立)の際に問題になったが、その後、周辺事態法(平成11年)において、米軍の支援を行うことができる地域を「後方地域」すなわち「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」に限定することによって、米軍の武力行使と一体化しない法律上の担保とする仕組みがとられた。同時に、後方地域支援活動としての米軍に対する物品・役務の提供から、弾薬を含む武器の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油・整備を除外した。
 そして旧テロ特措法(平成13年)においても、周辺事態法の上記「後方地域」と同じ文言で定められた地域に協力支援活動等を限定して、多国籍軍との武力行使の一体化が生じないようにすることとされた。すなわち、ここで限定された活動地域は(法律上の用語ではないが)「非戦闘地域」と称され、「戦闘地域」と「非戦闘地域」という区別が議論の焦点となり、自衛隊の活動領域を「非戦闘地域」に限定し、「非戦闘地域」での協力支援活動等は武力行使に当たらないとして、法文上この問題を解決しようとした。旧イラク特措法(平成15年)においても同様の解釈が行われた。
 しかしながら、この立法と解釈自体、相当に危険をはらんでいるものであった。現に、イラク派遣の実態は、「非戦闘地域」とされたサマワの自衛隊の宿営地に迫撃砲やロケット弾による攻撃が10回以上発生していることや、前記のとおり名古屋高裁判決が航空自衛隊による武装兵員の輸送を武力行使と一体化したものと判断しているように、問題を残すものであった。

(3) 後方支援活動等の違憲性

 ところが、重要影響事態法と国際平和支援法は、さらに要件を緩め、従来の「後方地域」「非戦闘地域」に自衛隊が活動する地域を限定することにより他国軍隊との武力行使の一体化の問題が生じない担保とする枠組みに依拠することなく、「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所であれば、そこで実施する我が国の支援活動は当該他国の武力行使と一体化するものではないという考え方を採るとし、状況の変化に応じて、その場所が「現に戦闘行為を行っている現場」になる場合には、その活動を休止・中断すればよいものとしたのである(26・7閣議決定)。また前述したとおり,「脅威が世界のどの地域において発生しても,我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている」という情勢認識のもとであれば,安易に「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」と判断される可能性も高く,「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所であれば,幅広く「後方支援」が可能になる。
 加えて、重要影響事態法と国際平和支援法は、後方支援活動等の内容として、弾薬の提供や、戦闘行為のために発進準備中の航空機に対する給油・整備までも許容する。これは他国軍隊の武力行使への直接の支援にほかならない。
 政府は、それでも「武力行使の一体化」は生じないとするのであるが、これは戦闘の実態に目をつぶった欺隔であると言わざるを得ない。これによれば、自衛隊は、現に戦闘行為が行われていなければ、そのすぐ近くの地域であっても支援活動が可能であることになり、そのような場所で弾薬の提供まで含む兵站活動を行っている自衛隊は、相手国から見れば、武力を行使する他国の軍隊とまさに一体となって武力を行使する支援部隊と見られ、相手国からの攻撃の対象とされることは避けられないであろう。そして自衛隊がこれに反撃し、交戦状態へと突き進む危険性は極めて高い。
 従来の、危ういながら、「非戦闘地域」という枠組みによってかろうじて合憲性の枠内に留まると強弁されてきた後方支援活動等ではあったが、その枠組みさえも取り払われ、弾薬の提供等まで許容した上記2法においては、もはやそのような説明は成り立たず、これによる自衛隊の後方支援活動等は他国軍隊の武力の行使と一体化し、又はその危険性の高いものとして、憲法9条に違反するものであることが明らかである。

(4) 立憲主義の否定

 以上のように後方支援活動等の実施も憲法9条に違反するものであり、そのような内容の閣議決定を行い、また法律を制定して憲法9条の規範内容を改変しようとすることが、立憲主義を踏みにじるものであり、また、憲法96条の改正手続を潜脱して国民の憲法改正に関する決定権を侵害するものであることについては、前記(第2の2(5))で述べたことがそのまま当てはまる。

(ハンマー)


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