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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[7]

2016-06-09 | 集団的自衛権

「戦争法」違憲訴訟 訴状(2016年6月8日提訴)[7]

http://ikensosyo.org/より


(3)戦争に加担させられない権利の侵害

 ア 平和的生存権は戦争に加担させられない権利を含んでいることはすでに述べたとおりである。ただ、加担させられない権利は、一般的な平和的生存権とは別の多様な形をとるので別項をたてて論ずる。

 イ 政府が存立危機事態と認定して、自衛隊法76条によって防衛出動が命じられると、国民に様々な戦争協力義務が発生する。これまで、防衛出動は我国が他国から武力攻撃を受けた場合に発動されたが、今回の「安保法制」により、自衛隊法76条1項2号による集団的自衛権に基づくといわれる防衛出動が加わったことにより、例えば、米軍に対する集団的自衛権による共同軍事行動でも、広汎な国民の権利に影響が生じる。
 同法103条はその典型的なものであり、直接的な戦争遂行のためになされる権利制限が定められ、逆にいうと、権利制限された国民は戦争に加担させられない権利の侵害を受けることになる。具体的には、①病院等政令で定める施設の管理、②土地・家屋・物資の使用、③業務上取扱物資の保管命令・収容、④医療・建築業・輸送業者に対する業務従事命令がある。電気通信設備の優先利用もなされる(同法104条)。

 ウ 重要影響事態及び国際平和対処事態の場合も、国は、後方支援活動等の対応措置に関する基本計画を定めてこれを実施することになるが、その場合、国は、地方公共団体その他国以外の者に協力を依頼することができる(重要影響事態法9条、国際平和支援法13条)が、この「国以外の者」としては指定公共機関(武力攻撃事態対処法6条)や地方指定公共機関(国民保護法2条2項、知事が公共的事業を営む者から指定)が想定される。指定公共機関には、各種独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会、日本郵便、放送事業者、電気、ガス事業者、航空運送業者、鉄道事業者、電気通信事業者、旅客・貨物運送事業者、海運事業者が法人名で個別に指定されている(武力攻撃事態対処法施行令3条、平成16年9月17日内閣総理大臣告示)。
 法文上は協力を求めることができるになっているが、その対象は法人であり、法人が自己の従業員にその業務を命じれば、従業員に対する業務命令であるから拒否できず、結局戦争協力業務は強制されるので、当該協力業務を受けた地方公共団体の当該公務員や、法人の当該従業員は戦争に加担させられない権利を侵害されることになる。

2 人格権の侵害

(1)人格権の内容

 憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定する。
 そして、個人の生命・身体の安全、精神的自由は、人間の存在に最も基本的な事柄であって、法律上絶対的に保護されるべきものであることは疑いがなく、また、人間として生存する以上、平隠、自由で人間たる尊厳にふさわしい生活を営むことも、最大限度尊重されるべきものであって、前記の憲法13条もその趣旨に立脚する。
 このような、個人の生命、身体、精神および生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであり、その総体を人格権と呼ぶ。
 そして、このような人格権の侵害に対してはこれを排除する権能が認められ、また、その侵害が現実化していなくともその危険が切迫している場合には、あらかじめ侵害行為の禁止を求めることができるものと解すべきである(最高裁判所2002年9月24日判決(いわゆる石に泳ぐ魚事件)参照。)。

(2)人格権の侵害

 ア 本件「安保法制」は、集団的自衛権行使を最大の特徴としており、最もありうる行使の形態は、米軍と連携して、もしくは、一体化した軍事行動であるが、世界の現実をみれば、シリア、イラク、アフガニスタンのいずれをとってみても、極めてシビアな利害対立の上に立つ軍事行動であり、我国がそれに関与することは、広く米軍に敵対する国や勢力から攻撃を受ける立場に立たされる。
 仮に、軍事行動が朝鮮半島で生じたとすれば、間髪を入れず我国も戦争当事国となり、直接戦闘行為の中に投げ込まれることを意味する。
 これら予想される事態は、それ自体として我国国民の平和的生存権の侵害となるが、加えて、広い範囲の我国の人々に対して人格権の侵害がなされる。
 イ 敵対国や敵対勢力から真っ先に攻撃の対象とされる可能性の高いのは、米軍基地が集中する沖縄をはじめ全国の米軍・自衛隊基地及びその付近であって、これらの地域に居住する原告らはその攻撃対象となり、生命・身体等を直接に侵害される危険にさらされる。またその前段階を含めて、基地周辺は、自衛隊や米軍の訓練等の活動が集中し、例えば武力攻撃予測事態における陣地その他の防御施設の構築等に伴う土地・家屋の強制使用の対象となる可能性が高く、さらに武力攻撃事態においては物資の収容、指定公共機関への業務従事命令等が、この地域に集中することが考えられる。そして、自衛隊・米軍等の軍事活動と住民の避難等の国民保護活動とが錯綜し、基地周辺地域は大混乱に陥る危険性がある。原告ら基地周辺住民は、集団的自衛権の行使等によって、このような事態に見舞われることを覚悟しなければならないのであって、これらは原告らの人格権を大きく侵害するものである。
 また、戦争体制(有事体制)ないしその準備段階においては、戦争の遂行またはその準備のためや国民保護体制のための措置を実施することなど、地方自治体や民間企業を含む指定公共機関等に協力が義務づけられ、そこで働く公務員・医療従事者・交通運輸労働者などが危険な関係業務への従事にかり出されることになる。これらの業務に従事する労働者は、自分や家族の安全や生活の確保、避難等に優先して、命じられた職責の遂行を求められ、また、身の危険にさらされることになる。

 ウ 海外で人道的活動に従事しているNGO関係者、民間企業の海外勤務者、ジャーナリストらは、その活動が危険または不可能になることが生じる。
 テロの危険は、平和的生存権の侵害であるが、同時に、人格権の侵害をもたらす。

3 憲法改正・決定権の侵害

(1)憲法改正・決定権

 国民主権は、国の政治のあり方を終局的に決定する力(主権)が国民にあるという原理であり、国民の参政権もこの原理から湧出した権利であり、同じく、憲法改正にかかる国民投票権も同様である。
 憲法36条1項の憲法改正手続は、この国民の憲法制定権力に由来する憲法改正権のあらわれである。

(2)憲法改正・決定権の侵害

 ところが、ソフトクーデターといわれる今回の「安保法制」の成立とその施行は、憲法改正手続を経ることなく憲法9条の解釈を変更して、海外武力行使ができる法制を作った。  このことは、明らかに主権者である原告ら国民の憲法改正決定権を侵害したものである。

(ハンマー)


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