LiveInPeace☆9+25

「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

(ベネズエラ連帯) ベネズエラ・ラテンアメリカ短報No.105 ハイチの現状

2024-04-19 | ラテンアメリカ
ベネズエラ・ラテンアメリカ短報No.105
( 2024年4月18日報告)


(ハイチの現状 要点)
・ 革命勢力が2月29日に武装蜂起し、ケニヤを訪問していたアンリ暫定首相兼大統領代行の帰国を阻止し、革命政権を樹立しようと闘い続けている。 / 他方で、米帝が主導する「コア・グループ」の手先として「カリブ共同体(CARICOM)」が「暫定大統領評議会」を設立し、新たな傀儡政権をつくろうとしている。 / 現在、革命勢力と反革命勢力がせめぎあい、どちらも他方を打倒できない状態にある。
・ 複雑で混乱した状況の下で報道も錯綜し、メディアでは「〝ギャング″による暴力が横行している」と報じられることが多いが、INTERNATIONALIST 360°(APRIL 11, 2024)に「現在ハイチを襲っている暴力は4つの異なるカテゴリーに分けられる」という論説が出た。それによると「(1)人民の怒り (2)不規律、無知、統制の欠如 (3)偽旗または心理作戦 (4)日和見主義的な犯罪」だとしている。 / (1)と(2)は人民・革命勢力の闘い。革命勢力の側は、まだ十分に組織されておらず、革命権力を形成できるまでには至っていない。 / (3)は帝国主義・反革命の側が意図的におこしているもの。革命勢力を抑え込むことができていない下で、「ハイチ危機」を外国軍導入・軍事侵攻の口実にしようとしている。 / 加えて付和雷同的な犯罪も多発している(4)。
・ 民主的選挙で大統領となったアリスティドの政権がクーデターで倒された2004年に、その後のハイチを支配する「コア・グループ」がつくられた。米国、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、EU、ブラジル、米州機構(OAS)の代表で構成される帝国主義の影の組織である。 / 現在、CARICOMの議長国が親米のガイアナであり、同じく親米政権のバルバドスとともに、表向き進歩的な言辞を弄しながらCARICOMが「コア・グループ」の手先としてハイチの新政権創出構想を主導している。 / そのCARICOMの活動に「コア・グループ」が資金提供している。
・ ハイチには豊富な地下資源がある。米帝をはじめとする帝国主義は、その支配に強い関心を持っている。 / 特に稀少金属イリジウムはラ米カリブ最大の埋蔵量。ボーキサイトは世界第2位。多大な石油の埋蔵も指摘されている。
・ 最後に、INTERNATIONALIST 360°(MARCH 21, 2024)「欧米は今もハイチ黒人を恐れている」という長文の記事を収録。そこでは、現在のハイチ情勢をとらえるうえで重要な諸点が述べられているが、特に注目すべき点として、米国がハイチにおける軍事的プレゼンスの強化を推進してきたことの指摘がある。「今日、米国がハイチ支配を維持する必要があるのは、ハイチが地政学的目的にとって戦略的に重要だからである」「その目的とは中国との対決に備えたラ米カリブ地域のさらなる軍事化の実施である」と。

【なお、「リブ・イン・ピース☆9+25」の過去の記事にハイチの詳しい歴史を述べたものがある。(2010年)「ハイチ地震で23万人超もの犠牲者が出たのはなぜか」 <その1> ~ <その4>
https://www.liveinpeace925.com/latin_america/haiti_quake_series1.htm
https://www.liveinpeace925.com/latin_america/haiti_quake_series2.htm
https://www.liveinpeace925.com/latin_america/haiti_quake_series3.htm
https://www.liveinpeace925.com/latin_america/haiti_quake_series4.htm

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(ハイチの現状)

Orinoco Tribune APRIL 12, 2024
CARICOM, Regional Arm of the Core Group, Sells Out Haiti Again
(「コア・グループ」の地域アームであるCARICOMが再びハイチを売り渡す)
By Kevin Edmonds – Apr 10, 2024 / 「カリブ共同体(CARICOM)」の指導者らの「進歩的な」レトリックに騙されてはいけない。彼らがハイチでやっていることは、恥知らずにも米帝国の利益に貢献している。 / ハイチで展開している状況について混乱するのは無理もないことだ。国内でさまざまな動きがあり、国外でCARICOM主導の「暫定大統領評議会」の構築と迫りくる「ケニアによる」(そして米国采配の)軍事介入がある。これは偶然ではない。注意深く精巧につくられた錯乱である。ハイチで進行中のプロセスが、「ハイチ主導」のイニシャチブの結果であるかのように見せるために、多大な努力が費やされてきた。そのイニシャチブは、CARICOMの地域同盟諸国によって主導されているが、ハイチとその国民に対する真の懸念からであるかのように見せかけられている。 / 諸事実を根本から検討すると、CARICOMが再び米帝国のために働いていることが明らかになる。バルバドスのミア・モトリー首相とガイアナのイルファン・アリ大統領は、米国を援護して「移行評議会」を担当し、それがハイチにおける「コア・グループ」の最新の規則ではなく独立したCARICOMの構想であるかのように見せかけようとしている。【「コア・グループ」: 米国、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、EU、ブラジル、米州機構(OAS)の代表で構成される帝国主義の影の組織。2004年設立。】 / 残念なことに、多くの観察者は、一見反植民地主義的なレトリックで宣伝しているモトリーやアリのようなカリブ海の指導者に騙されている。だが、ハイチに対する彼らの行動は、彼らが帝国の使い走りに過ぎないことを明らかにしている。なぜなら、彼らの背後で「コア・グループ」が公然と資金提供し、このCARICOM主導の介入とされる軍事訓練や外交支援を提供しているからである。 / 【この後、昨年2月から今年3月までの詳細が語られている。】

INTERNATIONALIST 360° on APRIL 11, 2024 Kim Ives
Revolution’s Human Costs and Unintended Consequences
(ハイチ: 革命の人的コストと予期せぬ結果)
【注目点のみ】 現在ハイチを襲っている暴力は、4つの異なるカテゴリーに分けられる。 / 1).人民の怒り: 18世紀の奴隷の反乱のように、ハイチの現代の賃金奴隷の大衆は、何十年もの間、自分たちを抑圧し搾取してきた人々に対して深い怒りを抱いている。 / 2).不規律、無知、統制の欠如: 「Viv Ansanm連合」(反政府勢力の連合体)を構成するさまざまな武装グループの「兵士」は、訓練や規律のレベルが異なる。ほとんど軍隊的な準備と構造を持つものもあれば、より非公式で無秩序なものもある。 / 3).偽旗または心理作戦: 「Viv Ansanm」の指導者たちは、警察が「Viv Ansanm」のせいにするために貧困地区を攻撃していると主張している。【その背後には米帝とコア・グループがいるものと思われる。】 / 4).日和見主義的な犯罪とその決着・諸結果(Opportunistic crimes and the settling of scores): どんな革命や戦時下でも、国家は弱体化し、警察は戦闘に忙殺され、その状況を利用して盗み、奪い、不法占拠し、ライバルに仕返しをする人々がいる。多くの場合、戦争の霧の中で犯人ははっきりしない。
【「ラテンアメリカの革命的大衆闘争」(2024.04.16 Tuesday)に全訳あり】

INTERNATIONALIST 360° on APRIL 11, 2024 Chris Martin
Haiti and Soup Joumou: The Taste of Freedom, Independence, and Self- Determination
(ハイチとSoup Joumou: 自由、独立、自己決定の味)
【Soup Joumou(ハイチ料理「スプジュム」): かぼちゃピューレ仕立ての具沢山スープ】
現在のハイチの革命/反乱は、ゲリラ/反乱軍が勝利を収めれば、ハイチ人にとってこの国をより良い場所に変える可能性を秘めている。適切なリーダーシップがあれば、ハイチは他のカリブ諸国と同等の成長と発展を経験することができる。 / ジュムは、奴隷制度に根ざした歴史的背景を持つハイチの珍味だ。アフリカ人/黒人奴隷はフランス人の主人のためにスープを用意したが、自分たちで食べることは許されていなかった。1791年にハイチ革命が始まり、奴隷たちはフランスの抑圧者を打ち負かした。ハイチは1804年1月1日、独立宣言後、西半球初の黒人自由共和国となった。ジャン・ジャック・デサリーヌの妻は、新しく解放された奴隷たちに、これまで禁止されていたジュムを楽しんでもよいと告げた。このスープは、自由、独立、自己決定を象徴し、奴隷の自立に貢献したという点で重要だ。 / 2022年、ジミー・"バーベキュー"・シェリジエとそのゲリラがハイチの港を封鎖し、ポルトープランスのガソリンスタンドに燃料が送られなくなった。【以下の諸事情の詳細省略】 / 2024年2月29日、アリスティドが追放された2004年の同じ日に、革命、クーデター、または体制変革がハイチで始まった。当時、アンリ首相は、ケニアで、いわゆる「ギャング」と戦うハイチ警察を支援する国際治安部隊に関して、政府とケニア政府の間の合意の最終調整を行なっていた。シェリジエは、ハイチ国民に利益をもたらすであろうさまざまな目的に向かって活動するためにゲリラを集めた。 / ハイチでは、現在革命または反乱が起きている。 / 「ハイチ暫定評議会」は、安定に必要な地域社会の支援が不足しているため、破綻する危険にさらされている。

teleSUR Published 3 April 2024
Haiti: Establishment of transitional council on hold
(ハイチ: 暫定評議会の設立は保留)
水曜日(4/3)、ハイチ「大統領暫定評議会(CPT)」の最終的な設置は、メンバーの意見の相違と要求のために今日も保留されたままであり、この事実はカリブ海諸国の政治的再編成を遅らせている。 【反動勢力の中で対立している。】

teleSUR Published 29 March 2024
Barbacue Presents His Demands to Negotiate Peace in Haiti
(〝バーバキュー″、ハイチで和平交渉のための彼の要求を提示)
もし外国軍がこの国に到着すれば、それは侵略者とみなされ、躊躇なく血祭りにあげられるだろう。国際勢力についても、また「誰であろうと自分たちの独立を踏みにじろうと企む者」については、そうである。 / ハイチの「G9ギャング」のリーダー、〝バーベキュー″として知られるジミー・チェリツィエは、国際社会に対し、ハイチのための詳細な計画を提示するよう要求した。

teleSUR Published 28 March 2024
Washington Interested in Fueling Haitian Crisis: LaCroix
(ハイチ危機を煽るワシントン: LaCroix)
ハイチの政治学者Jeffers Pierre LaCroixは、木曜日(3/28)、teleSURに寄せた声明の中で、ワシントンは軍事介入を正当化するために現在のハイチ危機を煽ろうとしていると述べた。 / 米国政府は、ハイチが直面している多次元的な危機を解決することに関心がない。それどころか、内戦を勃発させ、それを軍事侵攻の口実にするために、より複雑な状況にしようとしているのだ。 / ワシントンの関心はハイチの資源を支配することにあると付け加えた。そのために、ハイチを破綻国家として見せることで、ハイチ人は自分たちで解決策を見つける能力がないという考えを広めているのだ。 / ハイチはラテンアメリカ最大のイリジウム埋蔵国であり、その量は50万トンと推定される。イリジウムは希少な鉱物で、1トンの価値は非常に高い。また、航空機の製造に不可欠な鉱物であるボーキサイトの埋蔵量は、南アフリカに次いで世界で2番目である。 / 研究によれば、ハイチには莫大な石油の埋蔵量があると述べた。それはベネズエラに匹敵するものである。 / 彼は、また、提案されているCARICOM暫定評議会のメンバーの要件が、外国の介入を受け入れることであるという事実に注意を促した。これは、帝国主義がハイチの資源を支配する計画を持っているもう一つの兆候である、とハイチの政治学者は考えた。

INTERNATIONALIST 360° on MARCH 27, 2024
The Tragic History of the World’s First Post-Colonial Black Nation’s Struggle for Freedom and Autonomy
(世界初の植民地独立後の黒人国家の自由と自治を求める闘争の悲劇的な歴史)
https://libya360.wordpress.com/2024/03/27/the-tragic-history-of-the-worlds-first-post-colonial-black-nations-struggle-for-freedom-and-autonomy/
ハイチに関する現在の国営報道では、現在の状況を、人身売買からレイプ、食人に至るまで、凶悪な行為を含む〝ギャング暴力″がはびこっているものだと描き、その首謀者の一人が「バーベキュー」のニックネームで呼ばれる元警察官のジミー・シェリジエだとしている。そのように非難された暴力が、犯罪に反対するハイチ最大の民兵組織の指導者(シェリジエ)に経済制裁を加えたり、また、国家掌握のためのケニア軍などを利用した米国支援の介入をサポートするという、疑わしい正当化の役割を果たしている。 / 暴力加害者に対するシェリジエの抵抗グループ(G-9として知られる)の行動に関するプロパガンダは、米国の軍産複合体の帝国主義的野望を覆い隠してきた。 / ハイチにおける米国に同調する指導者たち、ブルジョワが支援する暴力的なギャング、西側メディア、介入を準備している米国政府など、さまざまな当事者からの敵対にもかかわらず、ジミー・シェリジエは、腐敗したブルジョワ体制に対する統一されたプロレタリアート革命というビジョンを堅持し、同時に、 西側諸国、特に米国による外国介入に反対している。 / この記事では、国家の経済的および社会的発展を積極的に妨げてきたヨーロッパと米国の介入と占領に対処してきたハイチの長い歴史を探求していく。ハイチの混乱状態に関連するこの帝国主義の歴史を理解することが、他の外国占領に反対する統一的な呼びかけと、シェリジエのビジョンに似たプロレタリアート中心の抵抗運動への統一的な支持を通じて、この国の自律を確実にする上で不可欠だからである。 / 【以下、1804年の革命と独立からの歴史を叙述している。長文、略。】【「ラテンアメリカの革命的大衆闘争」(2024.04.07 Sunday)に全訳あり】
【「リブ・イン・ピース☆9+25」の過去の記事にハイチの詳しい歴史を述べたものがある。(2010年)「ハイチ地震で23万人超もの犠牲者が出たのはなぜか」 <その1> ~ <その4> 】

teleSUR Published 27 March 2024
Haiti: Situation Remains Complex, High Levels of Violence
(ハイチ: 情勢は依然複雑、暴力も多発)
現在のハイチの状況は、ギャングの暴力が引き続き多発し、「大統領暫定評議会」の設置プロセスが停滞しているため、複雑さを増し続けている。 / 地元メディアによると、ポルトープランスでの銃撃戦は衰えることなく続いており、死者は首都のさまざまな通りで横たわり、焼却されている。 / 問題の連鎖に拍車をかけているのが、500万人近くが苦しんでいる食料不安である。 / ほとんどすべての活動が麻痺しており、一部の銀行は半日しか営業しておらず、多くの支店は、近隣での銃撃戦のため、従業員の手が届かず、サービスを提供できないでいる。行政も学校も機能していない。 / ハイチの政治秩序を担当する「大統領暫定評議会」の議長選挙は72時間延期された。

INTERNATIONALIST 360° on MARCH 21, 2024 Jemima Pierre
The West is Still Afraid of Black Haitians
(欧米は今もハイチ黒人を恐れている)
2024年3月初め、キングスタウン(セントビンセント・グレナディーンの首都)で開催されたCELAC首脳会議の前に、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領はハイチ人民に対する新たな脅威を糾弾した。「公然であれ、カモフラージュであれ、我々は侵略に同意しない。ラ米カリブ諸国にとって、解決策は、ハイチが独自の道を歩み、独自のモデルを実行し、独自の国家と制度を再建するのを支援し、チャベスが開始した低コストのペトロカリベ石油プログラムなど、あらゆる形態の協力を再開することだ」と。 / その3日後、カラカスで彼はこう続けた。「米国は、ハイチでどれだけの軍事介入を行なってきたか。今世紀初頭にハイチ人民の再生が起こったとき、私たちは、米軍機がアリスティド大統領を誘拐し、国外に連れ去ったというニュースで目を覚ました。ハイチは帝国主義の介入主義によってバラバラにされ、殉教し、内部から破壊された。今日、犯罪組織の蜂起が話題になっている。しかし、誰が彼らに銃を装備させたのか? これらの武器は米国から大量にもたらされた。誰が混乱から利益を得るのか? 誰が侵略を望んでいるのか? ハイチで起きていることは、ここベネズエラでも極右が国を不安定化させたときに試されたことであり、今年もまたここでそれをやろうとしているのだ」と。 / キューバとベネズエラが糾弾する「帝国主義的実験室」を明らかにしたハイチ人類学教授ジェミマ・ピエールの分析を以下に掲載する。
 ハイチについての知識が西側メディアから得たものだけであれば、次のような主張を信じるのも無理はない。 / 〇 ギャングの暴力に蹂躙された破綻国家ハイチは、外国軍の侵攻によってのみ安定を取り戻すことができる。 〇 ハイチには主権政府があり、ギャングと戦うために軍事侵攻を要請する法的権限を持っている。 〇 米国は、ケニアとCARICOM諸国にハイチへの外国軍侵攻を推し進めることで、ハイチとカリブ海地域の平和と安定の確保に尽力している。 〇 CARICOMはハイチ国民と連帯して行動し、ハイチの主権を支持する。 / これらの声明はどれも真実ではない。実際、これらはハイチへの外国からの介入を求める最近の声の背後にある動機を曖昧にしているだけでなく、ハイチの現在の政治経済的現実の本質と、この国をこのような状態にまで至らせた歴史を曖昧にする役割を果たしている。世界の多くの人々がハイチへの外国の軍事介入に拍手を送るように騙されている。実際は、ハイチを助けるという名目で、ハイチの主権と独立が阻害されているのだ。 / ハイチで起きていることを理解することは、ハイチ国民とハイチの主権に対する帝国的、西洋的な侵略が、これまでそしてこれからも不変であることを理解することである。この侵略は、ハイチが現在そして20年もの間、外国の占領下にあるという事実に反映されている。これは誇張ではない。現在のハイチの危機に対する唯一の解決策は、現在の外国による占領を終わらせることである。 / 2004年、ハイチは独立200周年を迎えた。この年にハイチの独立は外国勢力によって阻止された。その1年前、フランス、カナダ、米国は、「ハイチに関するオタワ・イニシアティブ」の会合で、選挙で選ばれたハイチ政府を転覆させようと画策していた。その日(2004.2.29)の朝、ジャン=ベルトラン・アリスティド大統領が米海兵隊に拉致され、中央アフリカ共和国の軍事基地に送られた。その日、ジョージ・W・ブッシュは「国の安定化を助ける」ためにハイチに軍隊を派遣すると発表し、夕方までに米・仏・加の軍隊2,000人が現地に到着した。 / このクーデターはその後、国連によって糊塗された。国連は、安全保障理事会の常任理事国である米国とフランスの主導のもと、ハイチへの「平和維持」ミッションの派遣を決議した。 国連は、米軍から引き継ぎ、「国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)」を創設し、「平和と安全の確立」という名目で軍事占領を担当した。 / 数十億ドルを投じたMINUSTAHの軍事部門はブラジルが主導し、ブラジルは部隊の大半を提供した。 しかし、この多国籍軍の占領軍には、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ジャマイカ、グレナダ、ベナン、ブルキナファソ、エジプト、コートジボワール、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、ギニア、カメルーン、ニジェール、マリなど、カリブ海諸国、南米諸国、アフリカ諸国の兵士も含まれていた。 / MINUSTAHのもとでの国連の占領は、ハイチ国民に対するその残虐性によって特徴づけられた。国連兵は飲み水として使われていた川に人間の排泄物を捨て、コレラの流行を引き起こし、1万人から4万人が死亡した。国連はハイチ国民に対するこうした犯罪の責任を問われたことはない。 / 占領は、「コア・グループ」の創設と運用によって強化された。「コア・グループ」は、ブラジル、カナダ、フランス、スペイン、米国、ドイツの外国人からなる選挙で選ばれたわけでもないグループで【これにEUと米州機構も加わる】、ハイチ政治の仲裁者であることを宣言している。「コア・グループ」は、中立でも受動的でもなく、ハイチの日々の政治問題において積極的で介入主義的な役割を果たしている。ハイチで外国の経済的利益を拡大し、保護しようとしてきた。 / この占領は2017年、MINUSTAHミッションの公式撤退によって正式に終了したと主張されている。しかし、国連は新たな頭文字をとった新しい事務所「BINUH(国連ハイチ統合事務所)」を通じてハイチに留まった。現在、ハイチは非ハイチ人の外国人グループ「コア・グループ」と「BINUH事務所」によって運営されており、まさにハイチの民主主義を破壊した張本人たちである。「コア・グループ」による占領が、現在のハイチの苦境の根底にある。 / 米国とその同盟国であるフランスとカナダが、2010年の地震後の2011年にネオ・デュヴァリエ主義者のミシェル・マルテリーを、2016年にマルテリーの後継者であるジョヴェネル・モイーズを、そして2021年にモイーズが暗殺された後、現在の選挙で選ばれたわけでもない事実上の首相であるアリエル・アンリを擁立したのも、この占領下であった。 / 「コア・グループ」の占領下で、平均的なハイチ人の生活は悪化した。しかし、はっきりさせておきたいのは、ハイチ人民は占領を軽んじてはいないということだ。現在のハイチの「危機」のあまり知られていない側面のひとつは、占領に反対し、自決を求めてハイチ人民が続けている抗議行動である。人々は、2004年にアリスティドが米国、フランス、カナダによって退位させられた後、数十万人規模のデモを行なった。2015年と16年には、別の非合法大統領ジョベネル・モイーズの押し付けに抗議した。2018年と19年には、米国が押し付けたマルテリーとモイーズの政党PHTKの汚職に抗議した。 / この2年以上、米国はハイチにおける軍事的プレゼンスの強化を推し進め、アリエル・アンリの選挙で選ばれたわけでもない不人気な傀儡政権を、彼の最近の辞任まで守ってきた。ハイチを支配し続けるためにこの政権を守ってきたのだ。実際、ハイチの傀儡政権は米国によく貢献してきた。例えば、IMFの支援を受けた燃料補助金の廃止を国民に押し付けたのはアリエル・アンリであり、これは米国が何年も前から主張していたことで、ハイチ人民をさらに貧困に陥れた。 / 今日、米国がハイチ支配を維持する必要があるのは、ハイチが地政学的目的にとって戦略的に重要だからである。その目的とは、中国との対決に備えたカリブ海地域とラテンアメリカ地域のさらなる軍事化、「Global Fragilities Act」の実施である。しかし、米国は自国の軍隊を現地に投入することを望まず、まずカナダに、次にブラジルに、またCELACとカリコム諸国に振り向けた。それらすべては、軍事介入の要請を支持していたにもかかわらず、作戦を主導することに消極的だった。ウィリアム・ルト率いるケニア政府は介入を主導するチャンスに飛びついた。 / ハイチには米国の武器があふれ、米国は、武器を輸入するハイチと米国のエリートに対する武器禁輸を求める国連安保理決議の効果的な実施を求める声を一貫して拒否してきた。さらに、「ギャング」と言うとき、この国で最も強力な「ギャング」は米国自身の補助的組織であることを認識しなければならない。 / ハイチがまた新たな侵略に直面している。今回は、名目上はケニアとカリコム諸国が主導している。私は、カリブ海地域の人々に、ハイチの主権に対する新たな攻撃を喜んで受け入れるよう世界の他の国々を説得するために米帝国が保持している自由に使える膨大な兵器について考えてもらいたい。また、今日ハイチについて耳にすることの多くが、ハイチの社会的・政治的現実の歪曲、あるいは全くの捏造であるという事実を考えていただきたい。 / 外国軍や欧米の干渉に反対するハイチ・コミュニティの継続的な抗議行動は、その揺るぎない勇気を証明している。ハイチは、黒人解放と反植民地独立のための世界で最も長い闘いの舞台である。このことは、米帝国がハイチ国民に対して絶えず反動的な攻撃を加え、主権を得ようとする彼らの度重なる試みを、米国の覇権を保証し拡大するために計画された数十年にわたる不安定化で罰してきたことを説明している。
(筆者Jemima Pierreは、ハイチ出身で、UCLA、ブリティッシュ・コロンビア大学社会正義研究所の人類学教授であり、ヨハネスブルグ大学人種・ジェンダー・社会階級研究センターの研究員でもある。また、平和のための黒人同盟(Black Alliance for Peace)ハイチ/アメリカ担当コーディネーター。)
【「ラテンアメリカの革命的大衆闘争」(2024.03.24 Sunday)に全訳あり】


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