「どこかへ行ってみたいわ」と母がぽつり。こんな時だけ反応の素早い私です。群馬県の四万温泉積善館に宿を取り、親孝行ついでにちゃっかり楽しもうと出かけました。落ち着いた佇まいの宿は心地よく過ごせましたのでちょっとご紹介。
この宿は元禄四年に創設された宿で、1階のアーチの窓の部分が大正時代の面影を残す元禄の湯です。入り口から段の高い階段を5〜6段下り、少し地下にめり込んだような床面から更にまた掘り下げられた四角い風呂が5つ。奥行きも広く、湯船の底から一気にそびえる天井、前方には一面のモダンアーチの明るい窓を眺めます。どっしりとした風情の忘れられないお風呂となりました。
中でも一番奥にあった天然蒸風呂は貴重な体験でしたね。高さ70cmほどの穴蔵に入る真っ暗な半畳ほどの空間です。入り口を閉じると暗闇が本当に怖いんですけど、じっとしてると妙に心が落ち着いてくるのです。母と二人かわりばんこで入ってなんだかんだと感想をね。本当に楽しい思い出となりました。
本館の建物は県指定重要文化財となっていて、左右に並んだ客間を見る事ができます。
また、館内は迷路のようで、風呂まで行く廊下にも、湧き水したたる狭いトンネルをくぐり抜けたりと探検気分で館内を巡りました。
宿の皆さんは始終にこやかな笑顔を絶やさず、てきぱきされるのが印象的でした。大変気持ちよく過ごす事ができ、また珍しい体験ができました。父を亡くしてから数年後、珍しく母の言った言葉で楽しい旅行ができました。母はとても気に入った様子。「もう一度来たいわね」と嬉しそうで何よりでした。