「いつか書きたかったUDONの話」で何度かご紹介してきた映画「UDON」ロケ地…跡。映画の舞台となった松井製麺所の古びた建物は移築され、代わりにご覧のような記念の柱が立っていた。ロケ地見学で賑わった頃を思うとやはりスコーンと抜けた空間は寂しい。
しかし、妙なもので、この池の前でぼーっとしていたら、やはりこれで良かったのではないかという気がしてきた。池は静かに風の波紋を描き、鳥たちが水に揺れる。遠くの讃岐富士には、ぽこぽこと大らかな雲がたなびいては消えてゆく。名残は小さな記念柱が二つ、赤いベンチが二つ、それが証し。いいじゃないか、一つの時代が過ぎ去り、また元の静けさを取り戻したのだろう。
やがて人々がすっかり忘れかけた頃、昔懐かしい映画として紹介される。その頃、池のほとりにはビルや住宅が立ち並ぶだろうか。いや、たぶんそんな事はない。いつの時代が来ても、静かなままできっとそこにあると思いたい。何もない所だけど、この風景が好きだから、そっと逃げて来られる場所だから。思いつきでふと訪れてみたくなる静けさだから。