新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

ジッドの時代を掘り下げた大冊「ジッドとその時代」

2019年01月14日 | 新刊書
ジッドとその時代
吉井 亮雄 (著)

ジッドはフランスの戦後文学と戦後思想に大きな影響を及ぼしているのですが
そのことはあまり明確にされてこなかったように思われます。
本書は674ページの大冊で、ジッドにかかわるさまざまなテーマを掘り下げていて
読み応えがありそうです。
わたしたちの知らないフランスの時代の諸相や文学事情も解き明かされそうで、楽しみです。
お値段もはるので、図書館に注文したいですね。



単行本: 674ページ
出版社: 九州大学出版会 (2019/1/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4798502499
ISBN-13: 978-4798502496
発売日: 2019/1/11
¥ 9,720



目次
 凡例・略号一覧



   第Ⅰ部 「自己」の探求と初期の文学活動

第1章 自伝による幼少年期・青年期の「再構成」
      『一粒の麦もし死なずば』の冒頭と末尾について  

第2章 青年期のジッドとヴァレリー
      ふたりの関係は「危うい友情」だったのか  

第3章 ジッドとエドゥアール・デュジャルダン
      「内的独白」の創始者との交流  

第4章 ジッドとナチュリスム
      サン=ジョルジュ・ド・ブーエリエとの往復書簡  

   第Ⅱ部 文学活動の広がり

第1章 ジッドとポール・フォール
      詩人にして文芸誌主宰者との交流  

第2章 「デラシネ論争」「ポプラ論争」の余白に
      ジッドとルイ・ルアールの往復書簡をめぐって  

第3章 「状況に想をえた小品」
      『放蕩息子の帰宅』の生成、作品の読解、同時代の反響  

第4章 「新劇場」か、それとも「小劇場」か
      『カンダウレス王』ベルリン公演をめぐって  

第5章 ジッドとトルストイ
      伯爵家での『放蕩息子の帰宅』朗読をめぐって  

   第Ⅲ部 批評家・外国人作家との交流

第1章 ジッドとチボーデ
      一九〇九年から一九二〇年代初めまでの交流  

第2章 ジッドとガストン・ソーヴボワ
      第一次大戦前後の交流  

第3章 ジッドとリルケ
      『放蕩息子の帰宅』ドイツ語訳をめぐって  

第4章 ジッドとタゴール
      『ギーターンジャリ』フランス語訳をめぐって  

   第Ⅳ部 「現実」への関心

第1章 ジッドとポール・デジャルダン
      一九二二年の「ポンティニー旬日懇話会」を中心に  

第2章 ジッドとアンリ・マシス
      一九二四年の論争を中心に  

第3章 蔵書を売るジッド
      一九二五年の競売  

第4章 ジッドの『ポワチエ不法監禁事件』
      現実探求のなかでの位置  

   第Ⅴ部 晩年の交流

第1章 ジッドの盛澄華宛書簡
      中国人フランス文学者との交流  

第2章 ジッドと「プレイアッド叢書」
      『日記』旧版をめぐって  

第3章 ジッドとジャン・カバネル
      「アマチュア文芸批評家」にしてレジスタンスの闘士との交流  

第4章 ジッドの『アンリ・ミショーを発見しよう』
      一九四一年のニース講演中止をめぐって  

第5章 ジッドとアンドレ・カラス
      若き文芸ジャーナリストとの交流  

結 語

《補遺》 ジッド書誌の現状  参考文献一覧に代えて  

 初出一覧
 あとがき
 索 引

日本人の死生観を問う「増補 死者の救済史: 供養と憑依の宗教学 」

2019年01月14日 | 新刊書
増補 死者の救済史: 供養と憑依の宗教学 (ちくま学芸文庫 イ 61-1)
池上 良正 (著)


元版は2003年に角川書店から出版されたものです。
それに「靖国信仰の個人性」を増補したもの。
民間信仰の死生観から日本人の根っこのところにある思想を取り出そうとするのは
柳田や折口以来の民俗学の伝統にのっとったものですが
本書はとくに宗教学の観点からこの問題に取り組むもののようです。
西洋のキリスト教の教えはかなり明確ですが、
私たちは死んだらどうなると思っているのでしょうか。
そのことは私たち日本人にもよく分かっていないことなのかもしれません。



文庫: 338ページ
出版社: 筑摩書房; 増補版 (2019/1/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480098992
ISBN-13: 978-4480098993
発売日: 2019/1/9
文庫 ¥ 1,296



内容紹介
未練を残しこの世を去った者に、日本人はどう向き合ってきたか。民衆宗教史の視点からその宗教観・死生観を問い直す。「靖国信仰の個人性」を増補。

著者について
1949年、長野県生まれ。東北大学大学院文学研究科宗教学専攻博士課程単位取得退学。宮城学院女子大学専任講師、弘前大学教授、筑波大学教授などを経て、現在は駒澤大学総合教育研究部教授。博士(文学)。専門は宗教学、とくに民俗・民衆宗教の宗教学的研究。おもな著書に、『悪霊と聖霊の舞台』(どうぶつ社)、『民間巫者信仰の研究』(未來社)、『近代日本の民衆キリスト教』(東北大学出版会)などがある。

まことにタイムリーな一冊「人口問題の正義論」

2019年01月14日 | 新刊書
人口問題の正義論
松元 雅和 (編集), 井上 彰 (編集)


人口の減少に悩む日本のような国もあれば、
人口の爆発的な増加が深刻な問題となるアフリカ諸国のような国もあります。
どちらにとっても人口は重要な社会・経済的な問題に、そして政治的に問題になってきました。
人口の総数だけではなく、世代的なバランスの問題も重要な倫理的な問題を引き起こしています。
「人口の問題は正義の問題である」と断言する本書は
まことにタイムリーな一冊と言えるでしょう。



単行本: 264ページ
出版社: 世界思想社 (2019/1/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4790717259
ISBN-13: 978-4790717256
発売日: 2019/1/11
¥ 3,888


内容紹介
人口の問題は正義の問題である!

どれくらいの人口規模が理想的なのか?

どのような人口政策が正しいのか?

哲学、倫理学、法哲学、政治哲学、経済学がそれぞれ進めてきた知の蓄積を結集して体系化した、最良のガイド。

哲学的基礎から、生殖と家族計画、世代間正義、移民・外国人労働者問題まで。


◆序章より

本書の特徴は、人口問題を正義論の観点から論じることである。正義論とは、個人の選択や判断、社会の政策や制度など、個人や社会のありように関して、規範的に考察する学問分野である。正義論はその考察対象として、「今ある」社会よりも「あるべき」社会を探求する。そこで、人口問題について正義を論じるとは、あるべき人口規模、あるべき人口政策といった規範的問いに中心的に取り組むということである。本章第一節で概観するように、人口論は過去から現在まで、すぐれて正義の問題でもあり続けてきた。

とはいえ、正義論の一テーマとして、人口問題が独立した位置を占めてきたわけでは必ずしもない。むしろ、多くの研究者がそれを重要なテーマと捉え、研究を重ねてきたにもかかわらず、これまで「人口正義論」としてその体系的な知の蓄積はなされていないのが現状である。その結果、人口問題についての考察はこれまで、環境倫理学、生命医療倫理学、グローバル正義論、世代間正義論といった各テーマの一部分として、倫理学者、法哲学者、政治哲学者らによって、同時並行的に進められてきた。

こうした問題意識のもと、私たちは各テーマ、各領域を横断する新たな学際的領域を切り開くような、国内の知の蓄積を結集する編著を企画した。本書の刊行により、正義論研究者にとっても、同様に人口問題に関心を抱く他分野の研究者や一般の読者にとっても、「人口正義論」に関する最良の知の手引きができるものと信じている。

目次
人口問題の正義論―研究動向の道案内
第1部 人口問題の哲学的基礎
第2部 人口規模の問題
第3部 生殖と家族計画の問題
第4部 人口移動の問題
第5部 世代間正義の問題