新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

オースティンの古典的な名著の新訳「言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか」

2019年01月13日 | 新刊書
言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか (講談社学術文庫)
J. L・オースティン (著), 飯野 勝己 (翻訳)


言語行為論の開祖とも言えるオースティンの名著「言語と行為」は
ここしばらくは入手しがたくなっていたのですが
このたび新訳が刊行されました。しかも文庫です。
これは朗報ですね。
お値段も手ごろですし、すでに持っている人も、これから読もうという人も、早速注文しましょう。
(おいおい、講談社の回し者かよ(笑))



文庫: 312ページ
出版社: 講談社 (2019/1/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4065143136
ISBN-13: 978-4065143131
発売日: 2019/1/12
文庫 ¥ 1,274


内容紹介
本書は、哲学に不可逆的な影響を与えた記念碑的名著、待望の文庫版での新訳である。
ジョン・ラングショー・オースティン(1911-60年)は、イングランド北西部の街ランカスターに生まれ、オックスフォード大学ベリオール・カレッジに進学した。語学、音楽、スポーツなど多彩な才能に恵まれた中で最終的に哲学を選んだオースティンは、20代半ばには早くも教壇に立つようになる。しかし、カリスマ的な威圧感を漂わせつつ独裁的とも思えるふるまいが目立ったことにも示されているように、当時のオースティンは何よりも「破壊的」な哲学者だった。
オースティンが生涯に発表した公刊論文は、わずか7本。48歳で早逝したとはいえ、きわめて寡作だったオースティンだけに、1955年に行われたハーヴァード大学での講義は、哲学の歴史にとって決定的に重要な意味をもつことになった。それらのうち「ウィリアム・ジェイムズ講義」として行われたもののために書かれたノートが、本書である。ここでオースティンは初めて「構築」に転じ、みずからの哲学の到達点を示している。
本書で提示された理論は「言語行為論(speech act theory)」と呼ばれる。従来の言語論は、命題の真偽を問題にしてきた。それに対してオースティンは、言葉はただ事実を記述するだけでなく、言葉を語ることがそのまま行為をすることになるケースがある、と言う。例えば、「約束する」と発話することは「約束」という行為を行うことである。ここにある「確認的(コンスタティヴ)」と「遂行的(パフォーマティヴ)」の区別は、以降の哲学に不可逆的な影響を与えた。
言語行為論は、ジョン・R・サール(1932年生)といった後継者を生むとともに、ジャック・デリダ(1930-2004年)の批判を呼び起こした。それを契機に巻き起こったデリダ=サール論争は、よく知られている。
オースティン研究の第一人者による訳文は、オースティンの息遣いを伝えてくれるだろう。これからのスタンダードとなる決定版が、ここに誕生した。

著者について
J. L・オースティン
1911-60年。イギリスの哲学者。後世に多大な影響を与えた「言語行為論」の創始者。主な著書に、本書のほか、『オースティン哲学論文集』、『知覚の言語』など。

飯野 勝己
1963年生まれ。東北大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。現在、静岡県立大学准教授。専門は、コミュニケーション論・メディア論・言語哲学。著書に『言語行為と発話解釈』など。

人間の民族と文化について考える手掛かりとなる「文化が織りなす世界の装い」

2019年01月13日 | 新刊書
文化が織りなす世界の装い (シリーズ比較文化学への誘い)
山田 孝子 (著, 編集), 小磯 千尋 (著, 編集), 井関 和代 (著), 金谷 美和 (著), 坂井 紀公子 (著)


わたしたちはどんな社会においても、自分を装います。
ロビンソン・クルーソーのように漂流して
まったくの孤島に生きていたら、装うことはないかもしれませんが
それでもいつか人々のうちに暮らすときのことを考えて、装いの心を忘れることはないでしょう。
それほどまでに装いというものは、人間にとって深い意味のあるものだと思います。
モードという観点からではなく、「人はなぜ装うのか」という観点から編まれたこの書物は、
人間の民族性だけでなく、人間性も明かしてくれるのではないかと、期待されます。



単行本(ソフトカバー): 192ページ
出版社: 英明企画編集 (2019/1/11)
言語: 日本語
ISBN-10: 4909151044
ISBN-13: 978-4909151049
発売日: 2019/1/11
¥ 1,080


内容紹介
人はなぜ装うのか──。

どのような素材や染料を用いて、どんな文様が描かれた服を、いかなる場面で着用する選択をしているのか。

私たちも含む世界の人びとの装いには、個人の嗜好のみならず、帰属する社会や集団の文化や価値観が反映されています。

本書では、衣服の起源から素材や加工技術の発見とトランスナショナルな拡散までの「装い」をめぐる歴史を追い、現代における世界の「装い」の諸相を比較するなかから、装う行為および衣服そのものに表れる民族性や地域性を考えます。

◆座談会I「装う素材と技術の発見と伝播――なにを用いて、どう加工し、いかに染めるのか」
井関和代+大井理恵+金谷美和+川村義治+小磯千尋+坂井紀公子+鈴木清史+山田孝子

◆論考
「人はなぜ装うのか──「装い」の起源と多様な展開からみる」
山田孝子

◆論考
「更紗がつなぐ装いの文化──インドからヨーロッパ、アフリカ、そして日本」
井関和代

◆座談会II「地域性・社会性の表象としての衣服――いつ、どんな場面で、なにを、いかに纏うのか」
井関和代+金谷美和+川村義治+川本智史+桑野萌+小磯千尋+小西賢吾+坂井紀公子+鈴木清史+アヒム・バイヤー+山田孝子

◆論考
「伝統ある絞り染め布をファッションとしてまとう──装いからみる現代インド社会の変容」
金谷美和

◆論考
「装いからケニアの現在を読み解く――プリント更紗と生活環境を手がかりに」
坂井紀公子

◆「伝統と近代のつむぎかた──オーストラリア先住民アボリジニの場合」
鈴木清史

◆座談会III「現代の『装い』にみる宗教性・ジェンダー・個別化──宗教間・地域間・男女間・時代間の比較から」
川村義治+川本智史+桑野萌+小磯千尋+小西賢吾+坂井紀公子+アヒム・バイヤー+山田孝子+ジェームス・ロバーソン

◆論考
「インドを表象する装いの変遷──都市部の観察からみえる男女差」
小磯千尋

◆論考
「『加賀友禅』という文化表象──誰がブランドを生み出したのか」
本康 宏史

出版社からのコメント
世界のどの地域に出かけても同じような「もの」があふれ、文化の違いがなくなりつつあると感じる一方で、文化による差異を思い知らされ、異文化理解に当惑することも少なくありません。 比較文化学は、文化人類学のみならず、地域研究、宗教学、社会学、文学、言語学など、さまざまな視点からの比較によって、文化の相違と共通性とを明らかにする学際的な学問領域です。 比較文化学を学ぶことは、文化を相対化するまなざしを身につけ、他者(異文化)理解を深めることにつながります。 シリーズ「比較文化学への誘い」は、比較文化学の可能性を考え、その学びの世界へと誘う入門書です。

愛とフロムについて学べる一石二鳥の本「フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学 」

2019年01月13日 | 新刊書
フロムに学ぶ 「愛する」ための心理学 (NHK出版新書 573)
鈴木 晶 (著)


『愛するということ』という本は世界的なベストセラーになったらしいですが
この本は原題が「愛という技術」であったことからも分かるように、
フロイト左派と呼ばれたフロムは、アメリカに亡命して、
精神分析の成果をわかりやすく説明することに巧みでした。
本書はこの本の改訳を担当した鈴木晶さんが
愛をテーマにフロムの心理学を解説した書物です。
愛について、そしてフロムの心理学について考えるための
一石二鳥の本かもしれません。


新書: 216ページ
出版社: NHK出版 (2019/1/10)
言語: 日本語
ISBN-10: 4140885734
ISBN-13: 978-4140885734
発売日: 2019/1/10
¥ 842


内容紹介
現代人は、愛を誤解している!
「恋に落ちる」という最初の体験と「愛している」という持続的な状態を混同してはいけない。愛は、誰もが生まれながらに持っているものではなく、学ぶべきものだ──。アドラーの「勇気」からフロムの「愛」へ。世界的ベストセラー『愛するということ』の翻訳者が、フロム心理学の奥義を極める。

目次
第1章 愛は技術である
第2章 フロムって、いったい誰?
第3章 孤独の克服
第4章 愛はどこからきたのか
第5章 現代社会における愛
第6章 愛の習練

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
鈴木/晶
1952年、東京生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。法政大学名誉教授。専門は文学、精神分析学、舞踊学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)