パール博士の”日本無罪論”と理不尽な東京裁判〜戦争を裁く事は可能なのか？

　第二次大戦の連合国が“事後法”で敗戦国の日本を裁こうとした東京裁判(極東国際軍事裁判)にて､連合国側の判事の中でたった一人日本の被告団を無罪とする意見を出したインド代表判事がいた・・・
”東京裁判は無効だが､A級戦犯は実在する”

　”事後法”で裁いた理不尽な東京裁判とは？そして､靖国神社に新たに建てられたパール博士顕彰碑の意味とは？　
　｢”ラダ•ビノード•パール博士顕彰碑”にて､事後法で裁いた理不尽な東京裁判｣というコラムを読んで､戦争を知らない世代の私は不思議と興味を覚えた。以下､一部抜粋です。

　パール博士は､1946年の東京裁判(極東国際軍事裁判)における国際法を専門とする判事で､”被告全員を無罪”とする意見書(パール判決書)を提出した。特に､”平和に対する罪(A級犯罪)と人道に対する罪(C級犯罪)は､戦勝国により作られた｢事後法」であり､その事後法をもって裁く事は､国際法に反する”との理由で､被告人全員の無罪を主張した。　

”事後法で”裁いた東京裁判の不条理と

　東京裁判は､連合国によって東条英機元首相を始めとする日本の指導者28名を､平和に対する罪(A級犯罪)と人道に対する罪(C級犯罪)および通常の戦争犯罪(B級犯罪)の容疑で裁いたもので､25名が有罪判決を受け､うち7名が死刑となった。
　ラダ•ビノード•パール博士(1886−1967)は､判決に先立ち1275頁の意見書を提出し､”東京裁判は<法は遡らない>という大原則に違反する事後法だ”と主張したが､法廷で受け入れられなかった。

　東京裁判でA級戦犯が問われた”平和に対する罪(戦争を指導した罪)”については､当時これを犯罪とする国際法は存在せず､連合国が新たに加えた罪で､これは国際法に違反する”事後法”であるというのが､パール博士の主張でした。
　パール博士は､”裁判の方向性が予め決定づけられ､東京裁判は判決ありきの茶番劇である”と､裁判そのものを批判した。
　一方で､”日本の戦争責任や日本軍の残虐行為が存在しない”という立場でもなく､”親日家として日本を擁護し､欧米に不利な主張をした”というのは､博士自身も事実誤認だと強く否定している。

　戦争犯罪人(A級戦犯)が合祀されている靖国神社を政治家が参拝する事について､中国や韓国などが強く反発しており､日本としては単なる歴史認識の違いとして片づけられない､ややこしい問題になっています。
　こうした中､靖国神社が2005年になって唐突に､｢パール博士の顕彰碑｣を建立した意図は何なのか？パール博士は､”A級戦犯に戦争責任はなかったという立場ではない”ので､私には不可解です。　
　以上､白象さんのコラムからでした。

”パール判決書”の全容

　このパール判事の意見書は､当時のGHQが発表を禁じたが。後年､広く国際法学者の間で研究され､現在では世紀の名判決として高く評価され､学会の定説となっている。
　この顕彰碑は､終戦60年にあたる2005年6月25日､その業績を称える｢パール博士の顕彰碑｣が靖国神社に建立されたとある。
　確かに､パール博士が無罪と唱えたのは､”真珠湾攻撃以前の戦争においてであり､日本軍指導部に戦争責任がなかった”と言ってる訳ではない。

　以下が､全7部で構成された｢パール判決書｣の全容だ。
　第1部は､裁判官が戦勝国出身者のみで構成されてる事と､侵略戦争の責任を個人に求めてる事の明らかな矛盾と不条理。
　第2部は､侵略戦争と自衛戦争の区別。パール氏は､日本の戦争を一方的な侵略戦争とは断定できないと。
　第3部と第4部は､証拠や手続きに関する規則の検討や”共同謀議”論の否定。
　第5部は､真珠湾攻撃以前の案件は”事後法”となり､裁判の管轄権を侵害してると。
　第6部は､非戦闘員への生命財産の侵害が戦争犯罪ならば､”原子爆弾投下こそが戦争犯罪であろう”と説いた。
　第7部は､パール氏が裁判に対して行った勧告で､前述した”全被告人は無罪である”とした事。

　この様に誰が見ても､東京裁判はペテンであり､明らかにナンセンスでもある。戦争責任を敗者に一方的に押し付ける事自体､それこそが重犯罪とも言える。故に､パール博士がブチ切れるのも無理はない。
　以下､ウィキその他から抜粋&編集です。

日本軍の虐待行為の実情と

　一方でパール博士は､日本軍の虐待行為の実情を認めてはいる。

　まず｢南京事件｣については､”この物語の全てを受け入れる事は困難である”とし､検察の提示した数十万もの証言や証拠に強い疑問を呈したが。
　”日本軍が犯した残虐行為は､その占領した地域の一般民衆､また戦時俘虜に対したものである”とし､犯罪行為は少なくとも存在したと判断している。一方で､退却中の中国兵が､ 相当数の残虐を犯した事もまた事実ではある。
　｢バターン死の行進｣についても､”実に極悪な残虐である。輸送機関も食料もなかったという理由があったとしても､弁護し正当化できるものではない”とした。

　またアジア太平洋各地で､戦争の全期間を通じ､日本軍により非戦闘員に対し行われた残虐行為の事例を示した。
　”主張された残虐行為の鬼畜のような性格は否定しえない”と述べ､”これらの鬼畜行為の多くは､実際に行われた事は否定できない”と主張した。
　その後､”しかしながら､これらの恐るべき残虐行為を犯した人物はこの法廷には現れていない。現在我々が考慮してるのは､これらの残虐行為の遂行に何ら参加を示していない人々に関する事件である”と述べた。

　この様に､パール博士は日本軍のA級戦犯を擁護したものではない事は明らかで､そのA級戦犯を奉った靖国神社にパール博士の顕彰碑が靖国神社に建立されたのは､やはり不可思議でもある。前述の白象さんが疑問に思うのも当然ではある。
　つまりパール博士は､”戦争中における犯罪は中立的な視点で捉えるべきで､確かに日本軍も犯罪にあたる行為があった事を認め､戦勝国もそれ以上の犯罪があった”と指摘する。
　更に”特にアメリカは､原爆投下や一般市民への無差別空爆から目を逸らせる為に､敗戦国日本を事後法で裁いた。その東京裁判自体が全くの理不尽だ”と言ってるのだ。
　

戦争そのものを裁く事は可能なのか？

　”日本軍が全て無罪放免だ”という事ばかりに注目が集まるが､あくまで”原爆を投下したアメリカが無罪なら”という前提なのだ。
　それに戦争そのものを裁く事が可能なのか？戦争自体が犯罪なのだ。
　事実パール博士は､”戦争の勝ち負けは単に腕力の強弱であり､正義とは関係ない。ハルノートの様なものを突き付けられたら､モナコ公国やルクセンブルク大公国でさえ戦争に訴えたろう”と訴えた。

　その上でパール博士は､”米国の原爆使用を決定した政策こそが､ホロコーストに唯一比例する行為”と論じ､”原爆投下こそが国家による非戦闘員の生命財産の無差別破壊として､ナチスによるホロコーストに比せる唯一のもの”とした。つまり､”原爆投下やホロコーストに比べれば､日本軍の虐待行為など戦争犯罪ではあるが､取るに足らない”と､パール博士は訴えてたのだ。
　日本の政府は､この”パール博士の悲痛な叫び”を国連で主張すべきだった。靖国はその後でもよかった。
　それに軍指導部の合祀よりも､戦争で犠牲になった現場の兵士や一般市民への弔いが先決だった筈だ。東京裁判の不条理なんて最初から明らかだったのだ。

　ここにも何でもかんでもゴチャマゼにする日本人の悪い癖が露呈する。更に言えば､何でもかんでも力と合理主義で押しまくるアメリカの自分勝手も露見する。
　パール博士の主張と靖国神社とは全くの無関係である事に関係者は気づくべきだ。故に､靖国神社に建てられたパール博士顕彰碑の意味も全く曖昧に思える。

　こうした曖昧な日本人の美学が靖国という誤解を生んでると言える。それに軍指導部だけが合祀されているのも､東京裁判と同様に全く解せない。
　こういう事を考える度に､東京裁判と靖国神社が同類に見えてならない。そう思うのは私だけか？