象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

知ってるようで知らない、ハマスの真実と歴史(更新)

2023年11月06日 02時29分51秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 今月7月にイスラエルとハマスの衝突が始まり、ガザ地区の死者は9000人以上に上り、うち子供や女性が約65%を占めるという。
 イスラエル軍はガザ地区の400箇所以上を空爆したが、そのイスラエルも1400人以上が死亡し、240以上が人質になっている。 
 一方で、停戦の仲介が期待されたアメリカは人道目的の一時的な戦闘停止が必要だが、”停戦はハマスに利益をもたらす”と仲介には消極的である。

 今日は、イスラエル軍と激しい戦闘を続けているイスラム組織”ハマス”の歴史についてです。
 「イスラエルとパレスチナ」の続編と思って頂ければですが、私達平和ボンボンな日本人は、こうした中東のシリアスな惨劇には目を瞑る所がある。しかし、こうしたニュースをきっかけに中東の複雑な歴史を振り返るのも、同じアジアの民族として必要であろう。

 当初私は、バイデン政権がウクライナ支援の予算を勝ち取る為に、敢えてハマスを刺激し、イスラエル=パレスチナ戦争を仕掛けたものではないか?と勘ぐっていた。
 事実、ガザ地区北部の病院にミサイルを着弾させたのは、ハマスの誤爆ではなく”イスラエル側だ”という声も西側にメディアには少なからずある。因みに、英国メディアは爆弾の破片の飛び散り方を見て、”イスラエル側から放たれたものだ”との調査報告もあった程だ。

 今やアメリカの政府や経済の中枢の多くはユダヤ人で占められる。故に、米国内のユダヤ人ロビーも大きな権力を持ち、予算編成に多くの影響を及ぼしてきた。
 イスラエル軍がハマスを撃退するには、アメリカの軍事支援は必須である。イスラエルのネタニヤフ首相が強気でいられるのも、アメリカの支援が確約されてるからだろう。
 事実、バイデン米大統領は先月の20日、ウクライナとイスラエルに対する支援を含めた1060億ドル(16兆円)近い追加予算を議会に要求。因みに、ウクライナ支援に約610億ドル、イスラエル支援に約140億ドルのほか、台湾への追加軍事支援の予算も含まれる。
 但し、議会下院は多数派の野党・共和党内の対立で議長が不在の状況が続き、予算審議を進めるめどは立ってはいない。


ハマスとは?

 つまり、ハマスを刺激し、イスラエル=パレスチナ戦争を再燃させ、ユダヤ人ロビーの圧力を利用して、一気に上述の緊急予算を可決に持ち込むバイデン政権の魂胆も見え隠れするが、陰謀論に思えなくもない。
 ともあれ、これ以上、ガザ地区での民間人の犠牲者を出してはならないし、その為にアメリカとイスラエルは結束すべきだが、多くの障害が存在するのも事実である。
 そして、その障害の1つがハマスというイスラム組織である。

 では一体、ハマスとはどんな組織なのか?
 ハマス誕生の歴史を紐解いて見えてくるのは、意外な顔であった。
 ガザの住民に支援物資を渡し、子供たちには鉛筆やノートを与え、子供向けのテレビ番組まで放送していた。その一方で、力を強めていく軍事組織としての顔もある。
 今回テロ攻撃に至ったハマスのキーワードである”民衆のヒーローがなぜテロを?”と題して説明する。
 以下、「ハマスの光と影・・」より大まかにまとめます。

 武装組織としての印象が強い”ハマス”だが、実は3つの顔がある。
 今のパレスチナ自治区は、ヨルダン川西岸地区と地中海に面したガザ地区の2つに分かれる。ヨルダン川西岸地区をパレスチナ自治政府が統治し、イスラエルとの激しい戦闘が続くガザ地区をイスラム組織ハマスが”実効”支配している。
 因みに、ハマスの名前の由来はアラビア語で”イスラム抵抗運動”を意味する頭文字の略で、情熱や熱狂という意味がある。
 では、ハマスはいつどのように生まれ、ガザ地区を実効支配する事になったのか?
 17年前、ガザ地区で撮影された映像にはテロ組織として知られる”ハマス”の原点とも言える活動が映し出されていた。

 ハマスのはじまりは、1970年代から始めた”福祉活動”で、難民や貧困層への慈善活動を行い、その地位を確立する。
 その後、1987年に起こったイスラエルに対するパレスチナ住民の大規模な抵抗運動が発生。ハマスは実力行使部隊としてその戦闘に参加すると、非道な自爆テロを繰り返す”軍事組織”として国際社会で問題になる。
 2000年代中頃からは政治の場にも足を踏み入れ、2006年の選挙で過半数の議席を獲得し、その後はガザ地区を実効支配し、時と共に組織を拡大させていく。
 

ハマスの3つの顔

 ハマスは、およそ30年間で”福祉団体”と”軍事組織”、そして”政党”という3つの顔を持ちながら組織を拡大させていった。
 ”民衆のヒーロー”の様な存在のハマスだったが、なぜ民衆からの支持を獲得していったのか?
 ハマスが民衆からの支持を集めたきっかけは1970年代で、ガザ地区の難民や貧困層への慈善活動として始めた福祉活動にある。
 当時のパレスチナは、1948年に建国されたイスラエルと4度の中東戦争を行い、イスラエルの占領下となった。そうした状況下で、イスラム原理主義組織”ムスリム同胞団”が母体となり、後の”ハマス”となる活動が始まった。
 元々、貧困層への食料や子ども達に文房具を与える”弱者救済の組織”だったハマスだが、そのハマスはどんな環境から出てきたのか?

 イスラエルの研究者の間では”ハマスは占領下の環境で育ち、最初は福祉団体から出来た”とされる。
 当時、ガザ地区含め、ヨルダン川西岸地区もイスラエルの占領を受け、第3次中東戦争(1967年)以降、イスラエルの占領下にあった。
 こうした占領下にある社会では、国が提供する社会福祉や行政サービスの類が殆ど機能しない環境にある。その中で、NGOやNPOと呼ばれる様な団体が幾つも活動し、その中の1つがハマスに発展した。
 困窮した弱者を救済していく中で支持を獲得していったハマスだが、その活動の1つに生活支援や教育支援があった。そして、活動の場を”政治の世界”に広げていく。
 そこで注目されたのが、2006年に行われたパレスチナ自治区の選挙である。

 ハマスは、当時パレスチナの実権を握ってた、中東和平を目指すPLO(パレスチナ解放機構)の主流派勢力”ファタハ”に勝利し、第一党の座を獲得した。が、状況は一転する。
 選挙後に欧米などから、過去のテロ行為などを理由に猛反発を受けたのだ。更に、イスラエルに加え、国際社会から”ハマスが参加するパレスチナ自治政府に対しては支援も承認もできない”との声が上がった。
 こうした中で、各地でファタハとハマスの戦闘が発生し、パレスチナ内部での抗争に発展した。結果、ハマスはパレスチナのヨルダン川西岸地区から追い出される事になるが、ガザ地区でファタハの勢力を武力で制圧し、実効支配を始める。
 これをきっかけにハマスは、ガザ地区での存在感を更に高め、民衆にとってハマスは常に日常にいる存在になる。
 例えば、公務員が行う市役所の業務などをガザ地区ではハマスが担当し、保健施設や健康相談もハマスの職員が対応する様になった。
 こうして行政の役割を担う様になったハマスだが、市民にとってどんな存在だったのだろうか?

 ハマスは2007年6月からガザ地区220万人の行政や社会福祉を担うが、ごく普通の公務員の服装で出てきて、日常の中でも人々はハマスのメンバーを目にする。秘密組織ではないので日常生活で彼らを目にする、そんな存在だった。
 こうした身近な存在だったハマスだが、その後イスラエルとの関係は次第に悪化し、4度の中東戦争を経てイスラエルの占領下となった。しかし1987年に、イスラエルに不満を募らせてたパレスチナの人たちが立ち上がり、抵抗活動”第一次インティファーダ”が勃発すると、当時、行政・福祉団体だったハマスに変化が起き、軍事組織の顔をもつ事になったのだ。
 やがて、徹底した訓練を行いながら軍事組織としての力を付けていくハマスだが、そこで繰り返されたのが人々に恐怖を与えてきた”自爆攻撃”である。
 最初に自爆攻撃が行われたのは1990年代で、その後2000年代に入ると攻撃は更に頻発した。その標的になったのはイスラエルで、2002年にはイスラエル中部のリゾート地で自爆テロが発生し、4人が死亡。このハマスによる自爆攻撃により、イスラエルでは市民を含め1000人近くが犠牲になったとされる。


軍事組織としてのハマス

 こうした2000年頃から自爆攻撃などを激化させたハマスだが、イスラエルとも大規模な戦闘が複数回あり、今回のイスラエルの一般人を巻き込む衝突へと発展する。
 民衆の側に立っていたハマスが、なぜテロ攻撃を繰り返し、軍事力を誇示する様になっていったのか?
 ハマスが民衆側に立っていたのは、市民活動を支援する為だけではなく、占領下にあるパレスチナの人々の側に立つ。それは占領者だったイスラエルに対しての実力行使でもある。 
 前述の様に、1987年にヨルダン川西岸地区とガザ地区ではイスラエルへの抗議活動が起きた。その中で、ハマスは実力行使部隊を持ち、政治団体や政治組織として強く自分たちの行動を実行で示していった。
 ハマスが自爆攻撃や自爆テロと呼ばれるものを行い始めるのは1994年で、この年にヘブロンというヨルダン川西岸地区南部の町で”マクペラの洞窟虐殺事件”(ヘブロン虐殺事件)が起きた。
 これは、イスラエルの入植者だったゴールドシュタインが、モスクで礼拝中のパレスチナ人に対して銃撃を行い、多くのが亡くなった。それに対しての報復という形で、ハマスが(またはイスラム聖戦が)編み出した自爆攻撃だった。

 ハマスが軍事組織としての色合いが強くなるにつれ、反イスラエルの姿勢を強め、やがては子供たちにも驚きの教育を行っていく。
 例えば、カメラの前でポーズを取るハマスの戦闘員の傍らには、写真に隠れてしまう程の小さな子供がいる。銃を持っている男の子の額には、アラビア語で”アッラーの他に神はなし”と書かれている。
 かつては貧しい子供たちへの食事の提供や学校教育にも力を入れていたハマスだが、ガザ地区でテレビを見る子供たちの映像とその真剣な目で見つめるその視線の先には、ミッキーマウスそっくりのキャラクターが何度も殴られる衝撃のシーンがある。勿論、殴られてるのはイスラエル当局に扮した人物だ。
 この番組は、2007年にハマスが運営するTV局が制作した子供向けのテレビ番組である。
 こうしたメディアを使い、子供たちにイスラエルへの憎しみを教え込むハマスのやり方に、イスラエル側は強く批判した。

 子供を軍隊に取り込み、テロ行為を繰り返すハマスに対し、市民はどのように感じているのか?
 今年9月に、パレスチナ自治区で行われた”次ぐの指導者を選ぶ”世論調査では、ハマス指導者のハニヤ氏が58%でパレスチナ自治暫定政府のアッバス氏の37%を上回る結果となった。
 しかし、ガザ地区のハマスにおける実効支配開始後からイスラエルの締め付けが厳しくなり、ハマスも財政面などで統治するのに苦労し、重税などを住民に課した。その不満が住民らにも強まっているが、一方で言論弾圧が強まり、ガザ地区の住民もメディアも自由な言論が展開できないという。
 事実、イスラエルによる封鎖が行われ厳しい状況化では、ガザ地区の現状を考える必要がある。ガザ地区は人口の半分が18歳未満とされるが、物や人の移動が制限される中で経済活動ができない。2023年初めの世界銀行の調査では、19歳~29 歳までの失業率は70%で、若者達が希望を持てない状況になっている。うつ病の人も7割を超えてるというデータもあり、若い世代がハマスの様な過激思想に向かう温床は何ら変わってはいない。


ハマスは何処へ向かうのか?

 軍事組織としての顔を拡大させ、イスラエルへの奇襲攻撃を実行するハマスだが、その内部では”ある異変”が起きてる可能性があるという。
 ハマスという組織は”政治局”という内閣的な役割が実権を担っている。一方で、軍事部門には1万5000人から2万人ほどの構成員がいて、その多くはパレスチナ人だ。
 そして、政治部門のトップに立つのがハニヤ最高指導者だ。彼はイスラエルへの奇襲攻撃後には、戦場真っ只中のガザ地区から遠く離れた中東のカタールにいて、海外メディアは”ハマスの指導者らはカタールで5つ星の豪華な生活をしてる”と批判した。
 そして、もう1人の軍事部門のトップがモハメド・デイフ氏。彼はガザ地区では伝説的なヒーローとして扱われている。
 今回の戦闘では、軍事部門が先導してハマスの政策を決める事はこの十数年なかった事だが、もしこのパワーバランスが変わったのだとしたら、彼ら(軍部)を”厄介者”とみているとの声もある。

 例えば、対外的な広報活動だが、それはイスラエルから見ればプロパガンダ活動とになるが、それを担ってきたのが政治局。そして、その政治局の指導を受ける様な形で軍事部門が実行力を行使してきた。
 2008年~2009年にかけ、ガザ地区で大きな戦闘があったが、この時は政治局の(今のハニヤの前の)ミシュアルという政治局長がイスラエルとの停戦破棄を宣言し、戦闘に突入した。つまり、政治局が決定を担っていたのだ。
 しかし、今回の戦闘では軍事部門の報道官から出る声明と、政治局の声明には若干の温度差がある。つまり、軍部が出す好戦的で戦闘的なイスラエルへのメッセージと、政治局が出す国際社会に訴えかける”ガザの人道状況を救って欲しい”というメッセージだが、明らかに温度差がある。
 この温度差がハマス内部の調整不足なのか?または組織内で変化が起きているのか?少なくとも疑問を持たせるような兆候がみられる。つまり、軍部を制御できなくなってる可能性があると。

 ハマスにとってはある意味、”攻撃は手段では無く目的だった”のではないか。
 つまり、イスラエル社会に対して最大限の打撃を与える事が目的であり、その先の事を計画的に考えていなかったのではないか。勿論、人質をとっているので、それを巡る交渉はあるのだが、現在の対立状態は続くだろう。
 一方で、アメリカ人2人を解放したのは、ハマスによる揺さぶりであり、イスラエル政府とイスラエル世論に対し、”我々には人質がい
る。地上侵攻は許されるのか”となる。

 以上、FNNPRIMEオンラインから長々とでした。
 先月23日の記事ですが、状況は更に酷く深刻な状況になってきている。
 事実、イスラエルが僅か1カ月余りで殺したパレスチナの民間人の数だが、ロシアが2022年2月から21ヶ月間でウクライナで殺した民間人9700人と同レベルに達する勢いである。
 国連の人権当局は、イスラエルによる空爆であまりに多くの民間人が殺され、こうした攻撃は不均衡で”戦争犯罪にあたるかもしれない”と述べた。
 バイデン大統領は、表向きはイスラエルの武力攻撃を支持してるが、同時に、”正しいやり方が必要で、民間人は保護されるべきだ”と、イスラエルが交戦法規を順守する事を求めている。
 一方で、政治・軍事・福祉という3つの顔を持つハマスだが、その実態は明らかにされてはいない。だが、イスラエルのネタニヤフ首相がハマスをテロ組織とみなし、大規模な軍事作戦をガザ地区で展開していいという理由にはならない。事実、ガザ地区の大半は無防備なのだから・・・
 最後に、「イスラエル・ガザ戦争〜五つの新しい現実」(BBC)から大まかにまとめ、終わりにします。


解決策はどこに・・

 ”イスラエルは交戦法規を順守しなくてはならない”と、アメリカ政府がこれほど公然と言明した事は記憶にない。
 ブリンケン長官の今回のイスラエル訪問は”イスラエルがバイデン氏の助言に従っていない”という認識の表れだろう。
 勿論、ネタニヤフ首相には忠実な支持者もいるが、イスラエル軍や治安当局で重要な人たちの信頼を失ったのも事実である。
 ”これはイスラエル国家の歴史において最大の失敗だ。軍事的な失敗であり情報機関の失敗であり、そして政府の失敗だ。統括していたのは(そして全ての責任を負うべきなのは)ネタニヤフ首相だ。イスラエルの歴史で最大の失敗の責任者は首相に他ならない”との、イスラエル陸軍の退役将軍ノアム・ティボン氏の言葉には説得力と真実味が滲み出てる。

 これまでのイスラエルとパレスチナの常態は不快で危険だったが、厳しくお馴染みの一定の安定性もある意味で備えていた。
 しかし、パレスチナ側から起きた前回の武力闘争が2005年ごろに終わって以来、双方の関係性にはあるパターンが生じ、ネタニヤフはその繰り返しを維持できると考えていた。が、それはパレスチナにとってもイスラエルにとってもとても危険な幻想だった。
 つまり、パレスチナはもはやイスラエルにとって脅威ではなく”分割して統治すべき”という(飴と鞭を使った)古くからの戦術だったのだ。
 ネタニヤフは1996年~1999年に首相を務めた後、2009年以降は殆ど常にイスラエルの首相だったが、その間ずっと”イスラエルには和平のパートナーがいない”と主張し続けた。
 勿論、パートナーになるかもしれない相手はいた。ハマスの最大のライバルはパレスチナ自治政府(パレスチナ国家)だが、イスラエルの実支配を受ける脆弱な政府に過ぎない。それでも自治政府は1990年代に、”イスラエルと共存するパレスチナ国家の樹立”という案を受け入れていた。

 一方で、”分割統治”はネタニヤフにとって、パレスチナ自治政府を犠牲にし、”ガザ地区におけるハマスの権力拡大を認める”事を意味する。
 ネタニヤフの本音は”パレスチナ人に独立国家を持たせたくない”事にある。パレスチナ国家が建国されれば、イスラエルは東エルサレムを含むヨルダン川西岸の土地を手放す事になるが、イスラエルの右派は東エルサレムはユダヤ人のものだと信じている。
 事実、ガザ地区のハマスとヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府の分断が深まれば、”パレスチナ国家の建国は不可能になる”とのネタニヤフのコメントもリークされている。それに加え、アメリカの後押しを得てるイスラエルが”ハマスの権力を認めない”事も明白で、その場合、大量の流血が続く事も確かである。更に、”何がハマスの代わりになるのか”という重大な問いにも、今の所は答えは出ていない。

 ヨルダン川と地中海の間の土地について、その支配権を巡るアラブ人とユダヤ人の紛争は、100年以上続いてきた。大量の血に染まった長い歴史の中で、一つの教訓が得られている。つまり、軍事的解決は絶対にありえない。
 1990年代のオスロ和平プロセスは、東エルサレムに首都を置くパレスチナ国家を樹立し、イスラエルと共存させる事で紛争を終わらせようとするものだった。が、一旦合意した後は何度も交渉が立ち消えし、約10年前に破綻した。以来、パレスチナとイスラエルの紛争は悪化を続けるまま放置された。

 (バイデン大統領を始め)大勢が口を揃える様に、これ以上の戦争を回避する唯一のチャンスは、”イスラエルの隣にパレスチナ国家を樹立する”事だ。が、イスラエルもパレスチナもお互いに(現在の指導部では)それは不可能である。
 両国の双方にいる過激主義者は、1990年からずっとそうしてきた様に、”2つの国家共存”という計画を台無しにするだろう。その中には、”自分は神の意志に従ってるだけだ”と信じる者たちもいる。その場合、世俗的な妥協案を受け入れるよう説得するのは不可能である。
 しかし、根深い偏見を打破するだけの衝撃をこの戦争によって受けないなら、今のこの戦争の衝撃によってさえ”2国家共存”の和平案が復活しないなら、もはや何をもってしても不可能だろう。
 そして、双方が受け入れられる紛争終結の方法がないまま、パレスチナ人とイスラエル人は今後何世代にも渡り、戦争を繰り返すしかなくなってしまう。



8 コメント

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ガザ地区の悲劇 (paulkuroneko)
2023-11-06 15:30:47
”肥沃な大地”として知られたパレスチナですが、16世紀以降はオスマントルコ帝国の支配下で、イスラム教徒・キリスト教徒・ユダヤ教徒が共存してました。
19世紀になると西欧帝国主義が中東に進出し、オスマン帝国は崩壊し、独立を目指すアラブ人の民族主義の動きが活発化します。

その後、第一次世界大戦におけるイギリスの”三枚舌外交”の結果、ユダヤとアラブの二つの民族主義の衝突のキッカケを作りました。
一方で、第二次大戦中にヨーロッパで差別や迫害を受けていたユダヤ人にも、パレスチナに民族国家建設をめざす”シオニズム”が生まれます。
1947年、国連はパレスチナにアラブとユダヤの二つの国家を作る”パレスチナ分割”を採択しますが、逆に二国間の武力対立を生みます。
当時パレスチナを統治していたイギリスは撤退し、1948年にユダヤ側はイスラエル建国を宣言。更に、4度に渡る中東戦争でイスラエルはパレスチナを軍事的に支配&占領し、多くのパレスチナ難民が生まれました。

この様に、西側帝国主義の一方的で傲慢なエゴがパレスチナ難民を生み、ガザ地区を本拠とするハマスをテロまがいの組織に育てたとも言えます。
とても悲しい事ですが、これも西側民主主義の現実なんですよね。
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paulさん (象が転んだ)
2023-11-06 18:53:21
ホントそうなんですよね。
結果論ですが
こんなに酷くなるんだったら、オスマントルコの支配下にいた方が、ユダヤ人にとってもアラブ人にとってもベストだったと思います。
西欧の民主主義と言っても、その本質は武力による侵略主義であり、それは歴史が証明している。
1993年のオスロ合意ですが、和平とは名ばかりで、結果としてハマスの暴走を生んだだけで、イスラエルの軍事支配をより強固に過激にしました。

イススラエルのパレスチナへの慢性的に続く武力鎮圧を一度も非難する事はなかった西側メディアにも大きな責任はあるんですが
今回に限っては、明らかにパレスチナ寄りです。
つまり、今回のイスラエルの暴走は西側民主主義神話の崩壊を象徴してると思います。
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アメリカとイラン (腹打て)
2023-11-07 13:34:41
ハマスはイランを
イスラエルはアメリカを後ろ盾としてるから
引くに引けないところもあるんだろうね。

paulさんのコメにあるけど、トルコ帝国支配の時は平和と自由が約束されてたが、西側支配となると武力と占領と略奪。
アラブ民族が怒り狂うのも当然なのかもしれない。
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腹打てサン (象が転んだ)
2023-11-07 18:39:06
今回だけは
西側メディアも国際世論も完全にパレスチナ寄りです。
まるでイスラエルのパレスチナ侵攻みたいな構図で・・・でも、今後の展開はウクライナ戦争同様、全く読めません。
まるで、同じ時期に違う場所で第三次世界大戦が勃発した様な様相ですから。
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西側支配主義 (#114)
2023-11-10 08:57:55
我々日本人は
1993年のオスロ分割合意にばかり
目が行くんだけど
第一次世界大戦時の
大英帝国の曖昧な三枚舌外交が
イスラエルとパレスチナの亀裂を生む
きっかけを作った

今後パレスチナを支援する国は
イランの他にロシアや中国にも及ぶだろうから
世界規模の戦争に発展する可能性は大いにある 
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#114さん (象が転んだ)
2023-11-10 14:27:23
お久しぶりです。
一方で、イスラエルを支援するアメリカですが、ガザ地区だけではなく中東全体に戦火が広がれば、イスラエル有利という構図は逆転します。

共和党内部では、バイデン政権の対イラン弱腰外交や米軍のアフガン撤退をきっかけに、ロシアのウクライナ侵攻とイスラエル=ハマス紛争の連鎖が起きたとの指摘もあります。
お陰で、アメリカ国内でもイスラエル派とパレスチナ派の真っ二つに分かれてますね。

言われる通り、第三次世界大戦の序章みたいな感じになってきましたが、今こそ世界は1つになって戦争拡大を阻止すべきですが・・・
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世界核戦争 (UNICORN)
2023-11-10 15:06:20
「サピエンス全史」の著者アルハラリ氏だが
もしイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラやその他のイランの仲間が、脅し文句通りにイスラエルにミサイルの雨を降らせたら、イスラエルは核兵器の使用に踏み切りかねない。
従って、どの陣営も聖書に根差す幻想や絶対的な正義の実現の要求を捨て、目の前の紛争の鎮静化と和平や和解の為の下地作りに向けた具体的な手順に的を絞るべきだと語っている。

但し、ユダヤ人である著者は”ハマスが和平案を潰す気でイスラエルに戦争を仕掛け、イスラエルは和平を維持する為にハマスの本拠であるガザ地区を攻撃した”と語るが、イスラエルも(内心では)和平を潰す気でいる事は、転んださんの記事でも明らかです。
したがって、ハラリ氏が主張するイスラエルの勝利ではなく、停戦に持ち込み人質を開放する事が先決でしょうね。 
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UNICORNさん (象が転んだ)
2023-11-11 00:54:15
ハラリ氏もとうとうボケてきましたね。
今回の戦争も全ては”ハマスが悪い”と来た。
良い悪いの次元で言えば、イスラエルはもっと悪いのに・・・

そもそも和平案って、イスラエルによるパレスチナへの軍事制圧による、好都合な均衡状態に過ぎなかった。
結局は、ユダヤ人にとってアラブ人は排除いや抹殺すべき人種で、和平というのはイギリスの三枚舌外交と同じで、表向きだけなんですよ。
そういう意味では、ハラリ氏もネタニヤフ首相と同じ超右翼的な考えなんですよね。

でも救いは、バイデン政権がイスラエルによるパレスチナ支配を批判しつつあるという事です。
何だか、こういうテーマは感傷的になりますが、コメントとても勉強になります。
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