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象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

”銀鱈の煮付け”と日本人の食の王道

2021年06月29日 05時24分29秒 | 映画&ドラマ

 「恫喝とバカはなくならない」に寄せられたコメントに、”平井デジタル相、NTTから8度の迎賓館接待直後に71億円受注!”とあった。
 NTTと平井氏との会食は、2回(実は8回とも)とも和食だったようで、和食の場合2万4千円のコースに1本10万円の高級ワインなどを加え、1人5万円が目安らしい(アホ臭)。
 元々、”デジタル担当大臣”というペテン臭い役職からして、こうした腐った接待(会食)が行われる事は明白だった。

 でも、2万を超える和食とはどんなメニューだったんだろうか?
 丁度、「孤独のグルメ」(Season7第6話)を見てた時に知ったから、余計にそう思ってしまう。
 政治屋は、”オモテナシ〜”的会食が大好きな無能で世間知らずの農耕族である。それに接待と言えば、その殆どが高級料亭だ。万が一にも立食いソバなんて事はあり得ない。

 確かに、料亭で食べる高級和食は美味しい。座敷から眺める庭園は情緒たっぷりだし、料理を彩る器も実に凝ってはいる。
 そこで、平井のバカはなんて口走ったんだろうか?
 ”NECはオレが脅したから、NTTさんは何も心配は要らないよ。オレが本気になったら本当に怖いよ。オレは干すからね”って、腐ったウンコ面して、兜の煮付けでも頬張ってたんだろうか。

 ここら辺で、無能な政治屋の話はやめにして、今日は日本人の理想の食について考えてみたい。


私が少食になった、その理由

 そういう私は大食感でもないが、そこそこの食いしん坊ではある。ただ、子供の頃から腸が弱く、特に白米がダメだった。
 それでも20歳を超え、身体が出来上がり、何でも食える様になった。早食いでも有名で、バキュームみたいに呑み込む様にして食ってた時期もある。お陰で、30を超える頃は、肥満気味の体型になった。
 食生活に極端な変化が現れたのは、営業を始めてからだ。支店長の運転手の様な扱いだったから、毎日の様に接待に呼び出された。
 昼も夜も接待が続いた。酷い時は、1日に3回ほどの接待を受けた事もある。
 それでも最初の頃は、タダで高級料亭の豪勢な料理を食えるのだから、元々食いしん坊の私には”めっけもん”って感じだった。

 しかし、すぐに厭になった。
 というのも接待の後も、延々と支店長の会食に付き合う羽目になったからだ。
 接待は何か理由を付けて断る事も出来るが、ずっと世話になってる支店長の会食を断る事は不可能だった。今から思えば、何故あの時に勇気を持ってNOと言えなかったのだろう?
 それに私が断ろうとすると、”お前独りで何が出来る?ここまで面倒を見たのは誰なのかな?”と、やんわりと脅す。
 平井のバカみたいに、”干すよ、干すよ、オレは本気だよ”と安直に脅してくれれば、断る事も簡単だったろう。
 脅しや誘いに弱い私は、結局断る事が出来なかった。

 調子づいた支店長は、私に少しづつカネをせびる様になった。深刻な事情を吐露され、私はまんまとデブ親父の罠にハマってしまったのだ。
 支店長は私から借りたお金で、豪勢に飲み食いをする様になった。断ろうとすると、腰を低くし、やんわりと脅す。
 勿論、給料日には返してくれたが、それも次第に滞る様になっていた。
 下手な同情心だったが、カネを貸したのは私だから、会社にバレれば私の立場が悪くなるのは明らかだった。

 でも私はキレた。
 ”借りたお金を粗末に扱わないで下さい。お金に困る深刻な事情があるのなら、料亭の料理よりコンビニのおにぎりで済ませましょうよ”
 それから私はこの会社に居づらくなった。軽い拒食症に陥り、朝はモーニングと夜はハンバーガー2個と、懐も食事も急速に冷え込んでいく。
 私は支店長から離れた。その後の展開は言わずもがなである。
 干されたのは支店長ではなく私だったのだ。それに、貸したお金の大半は、結局は返してもらえなかった。
 しかし、いい事もあった。軽い拒食症のお陰で、あまり食べなくなった。いや、食べなくとも平気になった。逆に豪勢に食べようとすると、営業時代の厭な接待や会食を思い出すからだ。
 それ以来、集団で会食する事も、仲間と呑み歩く事も殆どなくなった。ごく親しい友人とも飲まなくなった。
 若い頃は腐るほど飲み食いしてたのに、人間は変わる時は変わるもんだ。


高価過ぎる?B級グルメ

 という事で、食いたくても食えなくなった私だが、料理番組は大好きで、特に大食い選手権は録画して何度も見るほどである。大食い戦士の彼ら彼女らは、私の代りに”食の欲望”を極限にまで満たしてくれる。
 同じ様に、「孤独のグルメ」も大好きだ。今はYouTubeで過去のシリーズが無料配信されてるから、密かな楽しみになりつつある。
 しかし、回を重ねる毎にB級グルメの筈が、次第にA級グルメっぽくなっていく。

 1食に3000円を超える食がB級と言えるのか疑問だが、見る側がお金を払う訳でもないので、ストレスを感じる程でもない。
 孤独なサラリーマンを演じる井之頭五郎(松重豊)だが、長身で大学時代は柔道で鳴らしただけあり、食いっぷりが豪放磊落で実に圧巻だ。
 下戸という笑えない設定だが、お酒を呑めない人は、こうした多種多様な外食に結構なお金を掛けるんだろうって、思わず納得してまう。
 そう言えば、前述の支店長もお相撲さんみたいな体格で大食感だったが、下戸だったし、使うカネの殆どが食事に消えた。
 超のつく孤独な人には変わりはなかったが、井之頭五郎に似てないとも言えない。”憎めない人”という点では共通していた。

 このドラマの特徴は、毎回異なる食処を中心としたショートストーリーにある。井之頭五郎を除けば、彼を登場人物たちは毎回異なる。
 単なる”グルメもの”でなく、何を食ったかではなく、何を食いたいのか?
 その時点で勝負が決まる。食材がどうとか、レシピがどうとか、人気のある店だとか、そんなのはどうでもいい。こんな店でこんなものを食いたいという、大衆が普段から抱いてる食の大らかなる欲望でもある。

 
銀鱈の煮付けと鮒の甘露煮

 井之頭五郎はいつも 凄い品数を食べるのだが、今回は銀鱈に圧倒されたのはかなり控えめである。
 ”銀鱈の煮つけ、それにお刺身を付けて〜”と注文する。これで1450円は安い!因みに、写真上は追加のモズクの小鉢である。
 銀鱈の煮付けは、羅甸(らてん)の名物で、客の80%がこれを食べに来るそうで、12時半前には注文受付終了というから、その人気の凄まじさがわかる。

 井の頭五郎演じる松重豊や原作者の久住昌之のその表情を見ただけでも、この銀鱈の煮付けこそが「孤独のグルメ」史上、ベストオブベストである事は容易に想像がつく。
 真っ黒に染まった銀鱈の煮付けを見た時、小さい頃によく食った”掘の魚の煮付け”を思い出した。正式名称は”フナの甘露煮”で、田舎では”ホンの魚”と呼んだもんだ。
 ”堀の魚”とは鮒(フナ)の事である。堀割(水路)に生息するから、普通に調理しては臭くて食えない。
 因みに、柳川の地に人々が住み始めたのは2200年程前で、元々湿地帯であったこの地に掘割を掘る事で、土地の水はけを良くし水を確保し、住みやすい環境へと整えられた。

 鮒は大きければ大きいほど臭みは少ないから、甘露煮に向いてる。小さいのも食えなくはないが、やはり臭くて食えない。
 新鮮な水をたっぷり吸わせ、臭みをとってから、内蔵を取り去りよーく洗う。卵を妊んでるメスなら絶品である。
 内蔵をとった鮒をそのまま鍋に入れ、水と醤油と砂糖(水飴)と生姜を入れ、煮汁がドロドロになるまで3時間近くグツグツと煮る。
 臭みが消え、黒飴状に煮詰まった身は分厚く堅いからとても美味しい。

 私の田舎にも掘割があったから、小さい頃の食の贅沢と言えば、”堀の魚”だった。
 地元では鯉こく(鯉の味噌煮)や鯉の刺し身もよく食べるが、ハッキリ言って不味い。料亭でもよく出るが、どうも吐き気がする。
 同じ堀の魚でも、鮒と鯉では調理法も味わいも違うので注意が必要ですが・・・
 ”銀鱈の煮つけ”も旨そうだが、”鮒の煮付け”も負けちゃいない。個人的にはそう思う。


最後に〜クチゾコの煮付け

 私が今まで口にした最高の食は、魚屋さんで食った、とれたての”クチゾコの煮付け”だ。
 因みに、クチゾコとは有明海で獲れるシタビラメの仲間で、形が“靴底”に似ているから”クツゾコ”、それが訛り、”クッゾコ””クチゾコ”という呼び名になった。
 高校の時だった。麻雀をする為に魚屋の知人宅に行くと、いきなりご馳走が待っていた。
 麻雀仲間はホタテやマグロの刺し身を貪る様に食い漁り、私が食いたいものはすぐになくなった。
 詰まんなさそうにしてる私を見て、おばさんが”クチゾコの煮付け”を運んできた。
 しかし、私には有難くはなかった。クチゾコはいつも食ってたからウンザリだった。干からびた味気ない食感が好きになれなく、”クッゾコ”と下魚呼ばわりしてた程だ。

 しかし、目の前にあるクッゾコはいつものとは違った。とにかくデカく立派なシタビラメなのだ。
 ”とれたてだから早く食いなさい”とおばさんが言うから、私は仕方なく箸を伸ばした。
 口にした瞬間、頬がストンと堕ちた。それ程の衝撃だった。身が分厚くてフワフワ、いやホワホワなのだ。
 今まで私が食ってたクチゾコは干からびた典型のクッゾコだったのだ。しかし、今口の中に入ってるのは高級魚である大きなシタビラメである。
 周りは、この舌平目の煮付けには目もくれなかった。私は一人でこの高級魚を独占した。

 それ以降、色んな美味しい食材を口にしたが、このシタビラメの煮付けに叶うものはなかった。
 やはり食の王道はサカナの煮付けにある。



4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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象が転んだ様へ。 (りくすけ)
2021-06-29 06:24:40
お邪魔します。

鮒の煮付け、クチゾコの煮付け、
旨そうですね。
朝から喉が鳴りました。
個人的にはエイの煮付けが好きです。
醤油、みりん、酒、砂糖、生姜で、
生のエイヒレを煮て、
軟骨のコリコリ食感を
楽しみつついただきます。

僕も大食い観覧、好きです。
あれは立派な「競技」と思う。
孤独のグルメも好きです。
食べっぷりも気持ちいいですが、
「つかの間、自分勝手になり自由になって」注文を悩んでいるトコロもいいですね。

では、また。
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りくすけサン (象が転んだ)
2021-06-29 11:28:32
エイは私の田舎ではエイギンチョと呼び、煮付けで食った事あります。
独特の食感がありますよね。

「孤独のグルメ」はSPAという雑誌で初めて知ったんですが、その時からのファンでした。
お酒が呑めない所がグーで、食のみで勝負する所が粋なんですよ。
コメント有り難うです。
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Unknown (びこ)
2021-06-29 14:17:26
今日の記事にはヨダレが出ました。私はお魚が好きだから。最後のクチゾコの煮物は特に。

私の祖父は釣り船を持っていて高知の新堀川という川に係留させてありました。その船を借りて父の休みの日に家族で浦戸湾に釣りに行くのが恒例でした。が、どういうわけか釣ってきた魚は全然美味しくなかった。料理の仕方が悪かったのかな?魚の種類もわからないくらい幼かった頃の私の思い出です。

松重豊氏は柔道をしていたんですか?直接会ったことはないですが、夫のいとこの娘婿になりますから彼の話題は興味津々です。
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ビコさん (象が転んだ)
2021-06-29 21:26:50
釣り船とは羨ましい限りですね。それも魚の宝庫の高知ですから。
私は鯉がだめですね。鯉こくも刺し身も全く受け付けません。食感も味わいもダメですね。
私も偶にアラを食いますが、調理の仕方が悪いのか?臭みのとり方が悪いのか?美味しかったり不味かったりの繰り返しで・・・

因みに、私と同級で柔道2段の松重豊さんの得意技は払い腰らしく、190cmの身長から落とされたら、一般人は一溜りもないですね。
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