電車の中で眠ってしまったらしい。
駅員さんが肩をたたいて起こしてくれた。
おれは慌てて電車から降りる。
そのとき。
おれは確信した。
「ここは、駅じゃない。」
そこはとても駅に似ていた。
電車は止まっていたし、駅員さんはこれでもかってくらい駅員さんの格好をしている。
しかし、そこが駅ではない最大の要因があった。
本来ならそこが何駅かを示す看板のようなところ。
そこにはこう書いてあったのだ。
「ここは、駅ではありません。」
そう書いてあるんだから駅ではないのだろう。
駅にも偽装問題があるとは到底思えない。
ふとあたりを見回すと、新聞が落ちていることに気がついた。
拾い上げて読んでみる。
『ドッチボール大会は2組が優勝』
なぜこんなところに学級新聞があるのだ。
意味のない4コママンガがまたイライラさせる。
そのときだ。
背後に何かの気配を感じたのは。
振り返る視線の先にあったのは階段だった。
上の階から降りてくる階段。
そこに何かがいる。
音。
カツン、カツンという音。
この状況下では足音にしか聴こえない音が、耳を襲う。
「近づいてくる。」
そしてあいつは姿を現した。
この位置からではまだ足しか見えていないが、
その両足がゆっくりと一段一段味わうように降りてきているのがわかる。
逃げたい。
しかし、その願望はかなわなかった。
体が動かないのだ。
絶対であるはずの脳からの命令を、体が受け付けない。
そうしている間にも、あいつはまた一段階段を降りていた。
もう腰まで姿は見えている。
そしておれは思うのだった。
「絶対に顔は見てはいけない。」
そこに根拠はなかった。
ただ6つ目の感覚器官がもたらすSOSを感じていた。
あいつはまた一段降りてくる。
すでに姿は胸のあたりまで覗いている。
あと一段。
あと一段あいつが階段を降りれば、その顔が姿をみせるだろう。
しかし、それは絶対に避けたかった。
いや、避けねばいけなかった。
そんなときふと思う。
「肉まんの“まん”ってあの白い部分なんだろうなぁ」
そして、あいつは最後の動きを開始した。
おれは覚悟を決める。
その左足にあった重心を、先に降ろした右足へとゆっくりと持ってくる。
そして。
「…ください。起きてください。」
おれが目を開くと目の前に駅員さんが立っていた。
「終点ですよ。起きてください。」
やさしそうの駅員さんがおれを起こしていた。
どうやら夢を見ていたらしい。
頭はまだぼやけている。
駅員さんは言う。
「大丈夫ですか? もう終点ですよ」
「すいません、眠ってしまいました。」
荷物をもって電車から降りようとしたときに、おれは駅員さんに聞いてみた。
「あの、すいません。ここは何駅なのでしょうか」
あまり見覚えのない駅だったのだ。
「ここは、」
駅員さんはニヤッっと笑って答えた。
「駅ではないんですよ。」
駅員さんが肩をたたいて起こしてくれた。
おれは慌てて電車から降りる。
そのとき。
おれは確信した。
「ここは、駅じゃない。」
そこはとても駅に似ていた。
電車は止まっていたし、駅員さんはこれでもかってくらい駅員さんの格好をしている。
しかし、そこが駅ではない最大の要因があった。
本来ならそこが何駅かを示す看板のようなところ。
そこにはこう書いてあったのだ。
「ここは、駅ではありません。」
そう書いてあるんだから駅ではないのだろう。
駅にも偽装問題があるとは到底思えない。
ふとあたりを見回すと、新聞が落ちていることに気がついた。
拾い上げて読んでみる。
『ドッチボール大会は2組が優勝』
なぜこんなところに学級新聞があるのだ。
意味のない4コママンガがまたイライラさせる。
そのときだ。
背後に何かの気配を感じたのは。
振り返る視線の先にあったのは階段だった。
上の階から降りてくる階段。
そこに何かがいる。
音。
カツン、カツンという音。
この状況下では足音にしか聴こえない音が、耳を襲う。
「近づいてくる。」
そしてあいつは姿を現した。
この位置からではまだ足しか見えていないが、
その両足がゆっくりと一段一段味わうように降りてきているのがわかる。
逃げたい。
しかし、その願望はかなわなかった。
体が動かないのだ。
絶対であるはずの脳からの命令を、体が受け付けない。
そうしている間にも、あいつはまた一段階段を降りていた。
もう腰まで姿は見えている。
そしておれは思うのだった。
「絶対に顔は見てはいけない。」
そこに根拠はなかった。
ただ6つ目の感覚器官がもたらすSOSを感じていた。
あいつはまた一段降りてくる。
すでに姿は胸のあたりまで覗いている。
あと一段。
あと一段あいつが階段を降りれば、その顔が姿をみせるだろう。
しかし、それは絶対に避けたかった。
いや、避けねばいけなかった。
そんなときふと思う。
「肉まんの“まん”ってあの白い部分なんだろうなぁ」
そして、あいつは最後の動きを開始した。
おれは覚悟を決める。
その左足にあった重心を、先に降ろした右足へとゆっくりと持ってくる。
そして。
「…ください。起きてください。」
おれが目を開くと目の前に駅員さんが立っていた。
「終点ですよ。起きてください。」
やさしそうの駅員さんがおれを起こしていた。
どうやら夢を見ていたらしい。
頭はまだぼやけている。
駅員さんは言う。
「大丈夫ですか? もう終点ですよ」
「すいません、眠ってしまいました。」
荷物をもって電車から降りようとしたときに、おれは駅員さんに聞いてみた。
「あの、すいません。ここは何駅なのでしょうか」
あまり見覚えのない駅だったのだ。
「ここは、」
駅員さんはニヤッっと笑って答えた。
「駅ではないんですよ。」