LHFトーク"GONDLA"

LHFの二人のだらだらトーク。

時をかける少女

2009年07月31日 | 過去の記事
先週のライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルのゲストは細田守監督だった。番組では、彼の最新作である「サマーウォーズ」について話していたのだが、それがとても面白そうだったので、彼の過去の作品を観ることにした。とりあえず借りてきたのは「時をかける少女」と「ワンピース~オマツリ男爵と秘密の島~」。ワンピースをやっていたことは少し驚いたけど、とりあえず細田監督が名を上げた代表作とも言える「時をかける少女」から先に観てみた。

「時をかける少女」という作品は、元々は筒井康隆の小説なんだけど、どこかでこの名前の映画か何かを観たような記憶がある。調べたら、1983年に映画化されている。だけど、おれそんなの観てないよ。と、思ったら、モーニング娘が主演でドラマ化してたのを観たんだってことを思い出した。そうだ。なっちが主役だったんだ。当時はなっち好きだったなぁ。

そんなこんなで「時をかける少女」。いや、もう単純に面白かったです。98分っていう時間もよかったと思うんだけど、最初から最後までだれることなくエンディングまで突っ走ってくれた。ストーリーは本当に気持ちいいくらいに“起承転結”って感じで。“タイムリープ”で時間軸は行ったり来たりするんだけど、今何が起こってるのかも分かりづらくない。ラストに行くまでの加速力も良かったし、そのラストも清々しい終わり方で、テーマの行き先もきれいに解決していた。

この映画を観て、「なっちが出てたやつと話違うな」と思ってたら、これって原作の20年後っていう設定なのね。そしてあの美術館のおばさんが当時の主人公で。だから「私も“タイムリープ”したことある」って言ってたんだけど、あれって彼女が本当にタイムリープしてたからそう言ったわけじゃないと思うんだよね。彼女がそれについて少し冗談っぽく「日曜日にやることがなくてどうしようと思ってたら夜になってた」って言って真琴に「真剣に話してるのに」って言われるんだけど、結局それもやっぱりタイムリープの一種なんだと思って。この映画ってSF的な設定が使われてるから“非日常”の話だと考えがちだけど、僕は十分これは“日常”によくある話だと考えられる思う。

この映画って真琴の妄想の話だと考えても成立すると思うんだ。最後に未来人である千明は、突然外国に留学するっていう理由で姿を消す。このとき功介が「あいつ真琴にも何も言わないで…!」って言ってるんだけど、本当はこっちが現実に起こったことって考えることができると思うの。つまり好きだった千明に何も言われないまま姿を消されて。その逃避として「千明は未来人だった」っていう設定を自分で考えたっていうこと。いや、まあそれはひねくれた考え方かもしれないけどさ。ここで大切なのは「そう考えることもできる」っていうところで。つまり“タイムリープ”ってそんなもんなんだ。“選択されない未来”を作る点では妄想と同じなんだって。そう考えるとやっぱりこの物語は“日常”に落とし込むことができる作品だと思うわけ。つまり「あのとき、ああしとけばよかった」って思うことの一つの答えとして。

主人公の真琴は最初にこう思う。「こんなことなら今日もっと早く起きればよかった」。これは不運な出来事が続いた7月13日に、「そもそも朝寝坊したのが悪かった」と思って言う言葉なんだけど、この「あのとき、ああしとけばよかった」っていうのは誰もが思うことだと思う。特に高校生なんかは想像力とかのところで、大人に比べてそう思うことが多いんじゃないかな。それが“タイムリープ”を使うことで、真琴は「ああしとけば」が実際にできるようになる。だけどその変更後の世界が素晴らしい世界かって言ったらそうじゃなくて。自分が良い目を見てる一方で悪い目を見る人の存在に気づく。それで結局は「散々変更しまくった世界」よりももっと前に戻ることで「何も変わってない世界」に生きることを選ぶ。

ラストに千明に“タイムリープ”の装置を渡す直前に、功介にこんなことを言われる。

「真琴、前向いて走れよ!」

つまり今までずっと“タイムリープ”っていう力で“後ろ”を見てきた真琴が、物語の最後で前を向く。そこにはもう“タイムリープ”は無くて、過去に戻ることはできない。それでも真琴は「前を向いて走る」のだ。過ぎ去った過去は過去でしかなく、触ることなんてできない。真琴は物語の中でそのように成長し、そして映画はナナメ上の空を見上げた真琴を映して終わる。

ストーリーはストーリーでとても良いのだが、映画としてみてもこの作品はとても良い。“分かれ道”を表した道路標識や、二重の意味を持った台詞なんかはとくに良い。ラストに繋がる最後のタイムリープのところは涙が出そうになった。いやー、この映画を撮った細田監督の「サマーウォーズ」は期待できるんじゃないのかな。うん、楽しみ。


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2 コメント

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はじめまして (ゆい)
2009-08-01 17:04:01
時をかける少女、

ゆいも映画館で観ました。

ラストは、涙でしたね。


映画1本分を、こんなに色々感じて文章に出来るなんて、凄いですね。

のんびり主婦をしていると、すっかり頭もゆっくりしちゃって、

尊敬しちゃいます。
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Unknown (市村)
2009-08-01 20:33:38
初めまして。ありがとうございます。
映画館で観たんですか。
僕は上映時はこんな映画がやってることも知らず。
最近になってようやく知りました。
ラストよかったですよね。
僕も涙が出そうになりました。
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