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「約束された移動」小川洋子 感想

2020-02-07 | 小説・漫画他

相変わらず、小川さんらしさが溢れている短編集。とても楽しく読みました。4つ★

表題作 約束された移動
主人公はホテルの客室係の仕事をしている。
Bはブラッドピットをイメージしていたとは!
特別室にある書棚から毎回1冊だけ本が抜き取られている・・・ ちょっとだけ空いた隙間から、何の本だったのかを突き止め、その本を買って自分も読み、自宅の棚に溜めて行く・・・。
最初に抜き取られた本は「エレンディラ」だった(偶然その本を昔読んだ事があったので嬉しかった!確かにガルシア・マルケスの本なのに薄めの本)
その後、Bが泊るたびに、今度は何の本が無くなるのか?と推測するようになる。

決して悪口を言わないマッサージ主任と土木工事のおじさんが、早朝の仕事終わりに、アイスクリームを食べるだけの仲・・っていうのが良かった。

ダイアナとバーバラ
祖母と賢い本好きの孫娘。
「わかりますよ、わかります」というバーバラの口癖
ダイアナ妃の服を再現して自作し、それを着て、孫娘とデザートを食べに出かける。

控え目で目立たない、そっと慎ましく人を助ける仕事をしている人(迷子係、エレスカレーターの補助員、病院の案内係、乗り継ぎ補助員)という設定が小川さんらしくて大好き。素晴らしい^^

元迷子係の黒目
老女と少女は、少女がお家で飼っている水槽(グッピー、ゴールデンネオンテトラ)を介して交流を持つ。
老女は「ママの大叔父さんのお嫁さんの弟が養子に行った先の末の妹」という遠い親戚関係なのだが、少女の家の路地を挟んだ裏庭に老女の家がある。
この老女はタバコを頻繁に吸っていて、言葉も小川作品にしては珍しく、上品な口調ではないのですが、落ち着いた人で、決して下品な人ではないんですよね。

寄生
六篇のなかでいちばん古く、十年前書かれた小説
(設定は、今から25年前とのことで、当時携帯がなく、外出先から彼女に電話で連絡が出来ない状況だった)男性がこれからプロポーズをしに行こうと出かける途中、老女にいきなり体を密着されて離れてくれずに困って警察に行くというお話。
彼女と出会ったのが、虫博物館(目黒区の寄生虫館?)の来場者100万人記念ということでカップルに間違われた事、というのが面白い。

黒子羊はどこへ
これは唯一、テーマがあたえられて書いた小説です。名前に動物が隠れた作家が、それぞれの動物をテーマに書くというもので、「洋子」のなかには「羊」がいました。
羊の写真集を一日じゅう眺めて、思いもよらない姿をした羊をたくさん知りました。

 とのことですが、小川さん、洋子の中に羊がいましたってーー!

主人公は託児所「子羊の園」の園長です。彼女は羊と子どもたちの面倒を見ながら、夜になるとこっそりJの歌を聴きにクラブへ出かけます。彼女なりに着飾り、Jが幼い頃に描いた黒羊の絵を切り抜いて作ったイヤリングをし、こっそり酒場の裏口の換気扇とゴミ箱のある狭いスペースに座り、垂れて来る油にもめげず・・って、凄すぎなんですが! 笑
こっそり誰もいない、こんな処でそっと一人で聞いている、という設定がツボで凄く好きです。

巨人の接待
翻訳者と巨人と言われている作家さんのお話


『約束された移動』刊行記念  著者・小川洋子による全作品解題

先日、読んだ今村夏子さんの本で、「むらさきのスカートの女」でホテルの客室係、「あひる」であひるを見に来る子供たちが集う場に・・、遠い親類の老女が少女の自宅のすぐそばの離れに住んでいて・・・という処が偶然共通しているものの、全然違った内容・雰囲気で、それぞれの個性の差異を感じられて楽しかったです。今村さんは小川さんの事を「神さまみたいな人」とおっしゃっているそうです^^

小川さんの小説は、どこかヨーロッパのお話のような気がしてしまうのが不思議で、そして、品が良くて、貧相なかっこの老女であっても何故か差し迫った貧困を感じる事があまりなく、なんだろうな・・生活に余裕がある感じがあるんですよ。エキセントリックな処と、たまにグロテスクな描写がちらっと入っている処もスパイス効いていて好きです。
小川さんの本を読むと、一気に別の世界にワープしてしまう感じがしますが、今村さんの描く世界は、身近な日本のよくある場所で起きている感じで、生活が苦しいとか、そういう描写も割とあるかな・・・という印象です。
2人とも大好きな作家さんで、これからも楽しみです。

小川洋子
「約束された移動」
「あとは切手を、一枚貼るだけ」
「口笛の上手な白雪姫」
「シュガータイム」
「不時着する流星たち」
「琥珀のまたたき」
「注文の多い注文書」
「いつも彼らはどこかに」
「ことり」「とにかく散歩いたしましょう」 感想
「最果てアーケード」「余白の愛」小川洋子
刺繍をする少女
人質の朗読会
妄想気分
原稿零枚日記」
「ホテル・アイリス」「まぶた」「やさしい訴え」
「カラーひよことコーヒー豆」
小川洋子の偏愛短篇箱
猫を抱いて象と泳ぐ
「偶然の祝福」「博士の本棚」感想
妊娠カレンダー、貴婦人Aの蘇生、寡黙な死骸 みだらな弔い
薬指の標本 5つ☆ +ブラフマンの埋葬
「おとぎ話の忘れ物」と、「凍りついた香り」、「海」
「ミーナの行進」「完璧な病室・冷めない紅茶」感想


 

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2 コメント

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私は・・・ (todo23)
2020-02-09 17:10:10
>とても楽しく読みました。4つ★

私は残念ながら★3つ
なんだかどの短編も引っかからず。。

持った印象が
「私なんかよりもっとコアなファン向けなのかもしれません。」
私はどうも小川さんがもっとも小川さんぽくなるとダメなのかも(涙)
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Todo23さん☆ (latifa)
2020-02-10 12:18:03
こんにちは、Todo23さん
いやあ、小川さんファンの私ではありますが、本作は、小川作品の中でも、そんなに凄く面白かった!とか、凄く良い出来!とは、思いませんでしたよ。

もちろん私は楽しく読んだものの、小川作品でもっと良い作品は他にもっとあるかな、と思います。

既に以前あちこちで書かれた短編を集めた小説ということもあるのかな・・・
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