「ホテル・アイリス」1996年
なんだか外国の上品なSM小説って雰囲気でした。舞台がフランスとか・・そういうイメージで、「薬箱の標本」と似た湿度感というか透明感というか・・。
それにしても、小川さんの小説はおおかた読んで来たつもりでいたのに、これと「まぶた」は未読で、今更読んでびっくり! かなりエロティックな内容で、、小川さんったら、こんなの書いてたんだ?!凄い・・勇気があるわー!という衝撃が。
きっちり毎日母親から椿油で結えられたシニヨンの美少女と、ロシア語の翻訳家の中年男、海岸に建つ古びたホテル、こういうキャラや設定が、もう~~小川ワールド爆裂ですよね。大好きです、こういうの。
そういえば、川上弘美さんが、小川さんファンで、中でもこのホテルアイリスが一番のお気に入りと言われていました。私もかなり好きだな。4つ☆半
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
普段は優しくて小さくまとまった中年男が、いきなり島の自分の部屋では激しいS人間へと変貌 少女は幼い頃から厳しい母に縛り付けられており、かなりの。素晴らしく相性の良い2人なのです、はい。凄くエロくて耽美で堪能させて頂きました。以上
この作品の前身となったらしい「まぶた」も早速読んでみました。↓
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まぶた」2001-03
8つの短編集で、過去に書かれた作品を集めたそうです。どれも小川さんらしい味わいのお話ばかりで素敵なのだけれど、他の彼女の小説と似た部分があちこちにあって、既視感がある感じなので、強いインパクトには欠ける気がします。でもどれも面白いです。4つ☆
「飛行機で眠るのは難しい」
たまたま飛行機で隣り合わせになった男が語る、その男がかつて飛行機で出会った老女の話。彼女と日本人の男は長年文通をしていたが、実はお互い嘘を語っていた・・。
☆飛行機で眠るのは難しい(すごい同感)
誰でもその人固有の眠りの物語を持っているはずです~~~眠りの世界へ導いてくれる案内役をね・・ ってところが、この後の「詩人の卵巣」での眠りの案内人に繋がる様にも思えます。
「中国野菜の育て方」
見知らぬ野菜売りの老婆からもらった鉢植えを育ててみたら、夜に光る野菜が・・
「まぶた」
最初に書かれたのがこちらで、その後長編の「ホテルアイリス」に繋がる短編だそうです。確かにかなり雰囲気が似ています。まぶたの方が小川さんらしく、ホテル~の方は小川さんらしくないというか、そんなセリフ書いちゃうの?!という驚きがありました。先にホテル~を読んだ後、こちらだったので、薄味な印象でした。
ホテル~と大きく違うのは、部屋にはいつもハムスターがいて見ていた。ハムスターのまぶたをカット・・という処でしょうか。ホテル~の方が2人きりの張りつめた緊張感が凄くて、かつ卑猥度が激しくて好きです。←オイ!
「お料理教室」
お料理教室に行ってみたら参加者が自分一人だった。偶然、配水管処理業者が来て・・・。
「匂いの収集」
これを読みながら、小川洋子さんは「香水」 ある殺人者の物語(1985年作品)が、絶対好きだろうなぁ~と思いました^^
「バックストローク」
天才的才能を持つ背泳ぎの選手の弟と、弟を溺愛応援する母のお話。ある時突然弟は片腕が上がったままの状態になってしまい、泳げなくなる・・。
これは初期の作品『冷めない紅茶』に収録されている『ダイヴィング・プール』を思い出す内容でした(教会で育った子供達。プールの選手・・)
狭い処にいると安心というのは、「猫を抱いて象と泳ぐ」のアリョーヒンともどこか共通しますね。
「詩人の卵巣」
不眠症の私。
☆人はそれぞれ自分だけの眠りの召使いを雇っている~~夜になると森を抜け出し主人を訪ね耳の鼓膜の奥の骨をノックする・・
というのが、なんとも素晴らしい!
「リンデンバウム通りの双子」
双子の兄弟、幼い頃に第二次世界大戦のナチのせいで、家族離散する過去を持つ・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やさしい訴え」1996-12
今回のお話は、チェンバロを作る男とその弟子。主人公の女性は、医師の夫が愛人を作ってしまい、孤独を感じ別荘に逃げて来ている。主人公はチェンバロ男を愛するのだが、チェンバロ製作師弟コンビの肉体関係を超越しているような関係には及ばない・・と感じるという内容。天才的な演奏家だった男は、ある時から他人の前では演奏することが出来なくなってしまう・・(というのは、小川ワールドで良く出て来る哀しい状態ですよね)
小川さんらしい小説。他の作品よりは地に足がついた?わりと現実的な内容で、夫と愛人と自分、そしてチェンバロ師弟との3人の関係などが、小川さんにしては珍しくところどろこ生々しい感じがありました。普通に面白かったですが、特にガツーンと来るお話ではなかったので3つ☆
タイトルになった曲、ジャン・フィリップ・ラモーの(Les Tendres Plaintes)「やさしい訴え」をYOU-TUBEで聞いて来ました。そうか~こういう曲だったんだ・・・という感じでした。
「カラーひよことコーヒー豆」
小川洋子の偏愛短篇箱
猫を抱いて象と泳ぐ
「偶然の祝福」「博士の本棚」感想
妊娠カレンダー、貴婦人Aの蘇生、寡黙な死骸 みだらな弔い
薬指の標本 5つ☆ +ブラフマンの埋葬
「おとぎ話の忘れ物」と、「凍りついた香り」、「海」
「ミーナの行進」「完璧な病室・冷めない紅茶」感想
最近、また小川さんの作品を読みたいなと思って「海」を買ったのですが、こちらも買いたくなってきました。
あらっ、海、ご購入されたんですね?
う~ん、海は、普通に面白かった様な気がするのですが、特に印象に残って無くて・・・。
存在する音楽さんが気に入られると良いのですが・・・。
とても小川洋子らしいSM小説というか。芸術的で堪能できるものでした。
「夜明けの縁をさ迷う人々」も買っているのですが、「海」もまだ読んでいる最中で・・・
海より、断然ホテルアイリスでしょう~~?
私は大好きです。(あっと・・私は別に変な趣味は無いのですけれども・・)
小川さんの小説は、淡い感じの作品と、インパクトの大きい作品とがあって、海は、どんな内容だったか、もう忘れてしまっています
夜明けの縁をさまよう~も、、、忘れちゃってます
今、私も小川さんの「原稿零枚日記」という新作が手元にあるのですが、数ページ読んだ処で止まってしまっています・・・
驚きながら読みました
私も「好き」な世界です*^^*
>ただ「まぶた」程度に抑えてもらって読者の想像に任せる、くらいが好きかなぁ、なんて
解ります 私もそれ位のが好きですし、小川洋子さんは、そういう風にしか描かないって印象があったんです。それだけに、予想を裏切って、こんな処まで書いちゃって、だ、だ、だいじょうぶ?!どうした?小川さん!!いいのか~~~
という心意気というか、勇気に。
他の作家さんで、エロティックなのをバンバン普段から書く人だったら、断然控えめモード希望なんですけども
昨日新作の「妄想気分」を読みました。なかなか面白かったです。