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「口笛の上手な白雪姫」感想 小川 洋子

2018-07-03 | 小説・漫画他

いつもながら、小川さんの作品は、面白い。
安定感があって、安心して読めますね。
こういう不思議で、ちょっと偏執的な世界、大好きです。

最近発表された短編を集めた本です。
なんとなく、なんだけど、小川さんにお孫さんが、生まれたのかな?って(勝手な想像)
息子さんがいらっしゃるっていうは知っていたし、先日数年前の本で、大人に成長されたらしい親孝行な息子さんのお話があったから、なんとなくご結婚されて、子供が生まれて、それを小川さんがケアする時があったんじゃないかな?なんて想像しちゃいました。
赤ちゃんの描写とか、とても詳しく描かれていたから。
デビュー作の頃も、そういった描写あったけど、今回のは、かなり詳細に描かれていたから。

私は表題作と、「かわいそうなこと」が、好きかなー。


以下、あらすじを、ネタバレで書いていますので注意です!


「先回りローバ」
吃音の7歳の少年。そもそも、そのきっかけになったのは、本当の誕生日ではなく、宗教的に意味のある日まで、両親が日時を6日ほどごまかしたせいのようです。少年は両親が出かけている時、家に電話がかかって来たら、どういう対応をするのかを教えられているのだけれど、吃音のため、電話口に出て話したくないために、117番にずっと電話をかけ、時報のアナウンスを聞いているのでした。

ここらへんの黒電話が来た頃、そして親の留守中に電話した時報とか天気予報とか、あと昔、芸能人の電話コーナー?なるものまであって(笑)懐かしくあの時代の電話事情を思い出しました。

少年にしか見えない、ちょっと僕の先にいる、小さな老婆が、僕の言葉を、ちり取りとホウキで上手に集めているという設定は可笑しくて楽しいです。そして、老婆だと聞こえが悪いから、ローバって 笑
ラストは僕の8歳の誕生日を祝ってくれたローバ、その後、彼女の姿を見ることはなくなり、急に吃音が治るようになったところで終わっていて、めでたしめでたし^^

「亡き王女のための刺繍」
自分が幼い頃、母に手を引かれて行っていた洋品店。そこでドレスを作ってもらっていた。
刺繍の上手な店員さんの、りこさんと仲良くなり、こっそりお菓子を頂いたり・・・・
りこさんとの関係は、いまだ続いているのでした。というのも、誰か身近な人に子供が生まれたと聞けば、出産祝いのよだれかけに刺繍をしてプレゼントする、というのをやっていて、りこさんに刺繍をお願いしているのでした。
りこさんは、刺繍の天才で、図案集から好きな柄を選べば、なんでも素敵に刺繍してくれるのでした。

「かわいそうなこと」
秘密のノートに、かわいそうだと思った人やことをスクラップして集める趣味の少年。
これ、解るわーーって、凄い反応しちゃいました。
昔の映画スターの写真で、一緒に写っているのに、一人だけ触れられてない人がいて、その人の事が気になってしょうがない。いてもいないこととなってる存在に対して、みんなは無関心なのに、彼はそうじゃないんですよ。
博物館のシロナガスクジラ、親類などがない天涯孤独のツチブタ・・

野球を愛する父と兄や家族とともに、兄の試合の応援に家族で繰り出す一家。弟の自分は運動があまり得意ではなく、野球チームに入れる年齢になった時、腎臓に心配があると判明し、無理をしないほうがいいため、野球をやれないと解った時に、とてもほっとしたこと、そして、自分だったかもしれない、野球がとても下手な少年を見守り、自分の身代わりのような気持ちになっているシーンとか・・。

「一つの歌を分け合う」
伯母と僕は「レ・ミゼラブル」の舞台を観にいく。伯母には僕よりもちょっと年上の息子がいて、僕とはまるで兄弟の様な関係だったが、ある時突然若くして亡くなってしまう。
伯母は、ショックの為なのか、あの子が出てる!と、いきなり「レ・ミゼラブル」を見に行くと言い出す。僕は、突然伯母が変な事をしないようにと、伯母の見守り役として同行することとなった。

死んだ息子が、みんなの前で歌を歌うシーンで、ラジカセでその歌を録音することになったのに、僕が失敗したらしく、その時の声が残ってない・・・という処、とても悲しかったなあ・・・。そうよね、昔、あの録画ボタン押したい気持ちになったし、失敗することもあったっけ・・・。

「乳歯」
外国で迷子になるも、落ち着いている少年。
たどり着いた聖堂で語り掛けてくる男

「仮名の作家」
ちょっと怖い、ストーカー的な感じもある・・妄想が過ぎる女性が主人公。本当にいたら、結構ホラーかも。
小説家MMの大ファンである主人公。小説を暗記してしまうほど。
彼女は耳鼻科の受付で働いている。(この耳鼻科の様子や受付の設定などが笑える)
彼女は、作家を交えた読者の集まりに、しょっちゅう参加するのだけれど、質問コーナーで、小説にはない部分を勝手に作って、作家に質問してしまったところ、臨機応変に答えてくれた事が嬉しくて、以後も似たような行動を続ける。
最後は、他のファン達に、その発言をとがめられて、矯正退場?になる。彼女はこの後どうなっただろうか・・・

そうそう、この女性、こっそり本を買って、あちこちに忘れ物のように、そっと置いて去るって行動をしてるのだけれど、これって、以前、小川さんの小説で、こっそり手紙をわざとじゃなく、自然に見えるように苦心しつつ、あちこちに置いて来る、って趣味の人がいたのを思い出しました。

「盲腸線の秘密」
廃線寸前の電車、盲腸線。
ひ孫と曽祖父は廃線を防ごうとして、その電車に乗り続ける活動?をしている。乗る際に、勝手に決めた役割というか、こういう事情で乗ってるんですよ、という役になりきって2人は乗車していた。
そして、下車先で、ウサギがいて、彼らはウサギを可愛がったり(ウサギを優しく撫でると赤ちゃんが産まれると信じている)、人参をあげたりしていたのだが・・・
最後は駅員さんに、困るなあ!苦情が来てるんですよ!と、怒られてしまう(そりゃそうだ)
その後、曾祖父は亡くなってしまう。

「口笛の上手な白雪姫」
これは、いいねー。こういう人が昔、銭湯にいたのかもしれないなあ・・・。
森のそばの公衆浴場にいる謎の女性、目立たないように、ひっそりいるのだけれど、実は赤ちゃんを彼女に預けて、ゆっくり湯船に入れる事で、密かな人気があるのだった。彼女は小さな口笛という武器があって、赤ちゃんにそれを聞かせるとてきめんの効果が表れるようで、普段から練習を怠らないのだった。

彼女は公衆浴場のそばに、まるで白雪姫が住んだ小人の家のような家に一人で住んでいるのだった。そのお家に憧れを抱く少女も少なからずいて、そこに入り込んで行方不明で騒ぎになるという事件まで起きたりしていた。

この「口笛の上手な白雪姫」を読む前に、小山田浩子さんの「庭」を読んでいたのですが、どことなくシュールな日常を描く処とか、小川さん同様、芥川賞受賞作家さんという共通点があったんですけど、「庭」の文字が小さくて、キツキツに詰まっていて、とにかく私みたいな老眼には、読みにくくてたまらず、半分くらいまで、結構面白い短編もあったのですが、途中で挫折してしまっていたんですよ・・・
そして、この小川さんの本。
開いて、ほっ・・・
文字が大きく、とても読みやすい。
是非、小山田さんの小説も、これくらいの文字の間隔で読ませてもらいたいです!
そもそも、シュールな内容の小説って、空間や余白がある装丁の方が絶対素敵に感じると思うし。
よろしくお願いしたいです。

口笛の上手な白雪姫 2018/1/25 小川 洋子

小川洋子
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