いつもながら、小川さんらしいお話でしたが、普段より更にもっと、ひっそりと哀しげだったかな・・・。4つ★半
人と上手くコミニュケーションが出来ない、ちょっと変わっている兄弟。生まれつき少し精神的な障害を持った人たちであろうと思われます。特に兄は普通に社会生活が出来ない人で、弟が兄の側にいつもいます。ただ弟はそんな暮らしを負担だとかイヤだとかは全く思っていないんですよね。
いつもキチンと、自分なりに決めた形式的な暮らしを毎日を繰り返し。妙な処へのこだわりがありますが、人に迷惑をかけるような過激さは全くないんですよね・・。
弟だけにしか解らない言葉を話す兄、兄は水曜日に行きつけのお店でポーポーというキャンディーを買う。次の週の火曜日の午後になって、やっと兄は何時間もかけてその飴をなめるのだった。そしてその包装紙は綺麗にシワを伸ばして保管していて、沢山集まったある日、地層の様に美しい色のバランスで整え重ね糊つけし、カッターで鳥の形に切って、ブローチにして母にプレゼントした。母はいつもそのブローチをしていました。(泣)
その後も、兄は鳥のブローチをお店の人にあげたりしたが、お店の人はそれを大切に扱わなかった。それに憤る弟。凄くその気持ちが解りました・・・。
でもね、兄が用事も済んだのに、ずっとだまってレジのところに黙って立っているのをお店のおばさんが困る・・というのも解ります。謎ですよね・・じっとしている兄・・。
幼稚園の鳥小屋に長年頻繁にやって来て、フェンス越しにじっと見つめている中年男性って、怪しい変な人と思われてしまう可能性は確かにありますね・・。
★以下 ネタバレ 白文字で書いています★そうこうしている内に、兄はぽっくり亡くなってしまいます。
その後、弟はボランティア?で、幼稚園の鳥小屋を綺麗に掃除するのが日課というか、生き甲斐になっていて、慎ましく暮らしていただけなのに、幼女いたずら事件の犯人と疑われる様になってしまい、小鳥(子取り)ことりのおじさんと言われる様になってしまうなんて・・・。
中盤から、図書館の若い女性に、淡い恋心を抱く弟でしたが、アッサリとそれは終わってしまいます・・・。
その後、虫を入れた小箱を持ち歩く謎の老人と知り合いになりますが、その老人もいなくなります。最後に怪我をした小鳥を偶然拾って育てます。すっかり良い声で鳴く様になったその鳥に目をつけた、怪しい男(鳥声コンテストを趣味にしている)から誘われて、コンテスト会場に行ったりもします。
冒頭と最後で、小鳥のおじさんは、静かに息を引き取っている様子が語られます。かたわらには小鳥がいました・・・以上
これを読みながら、江國香織さんの「間宮兄弟」を思い出したのですが、間宮~は、現実的な普通の兄弟のお話でした。草食系ではあるものの、微笑ましく、時に可笑しく、ちょっと哀しくて、とても面白く読みました。7割は面白くコミカルで、2割がちょっと哀しかったんです。あとの1割は・・・何かな
しかし、こちら小川さんの「ことり」は、可哀想な度合いが9割強で、結構深刻に感じられました。淋しげで哀しかったな・・・。こういう世界は大好きですが、「猫を抱いて象と泳ぐ」の時もそうでしたが、中盤までは楽しく読めるのですが、自分が予想もしていなかった方向に話しが進んで、悲しい感じに終わってしまうのが切なくてね・・・。
最近長年連れ添ったペットの犬を亡くした小川さん、それがこの作品にも大きな影響を与えている気がしました。
ことり 小川洋子 (2012/11/7)
内容紹介 amazonより
12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説。
親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、
そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。
小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。
兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。
弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。
・・・・・・・・・・・・・・・
とにかく散歩いたしましょう
小川洋子:2012年07月
小川さんのエッセイ集。
長年の愛犬だったラブちゃんが、段々老いて亡くなってしまった経緯や出来事が書かれていました。
その後、小鳥を飼い、それが「ことり」製作に繋がった様ですね・・・。
「最果てアーケード」「余白の愛」小川洋子
刺繍をする少女
人質の朗読会
妄想気分
原稿零枚日記」
「ホテル・アイリス」「まぶた」「やさしい訴え」
「カラーひよことコーヒー豆」
小川洋子の偏愛短篇箱
猫を抱いて象と泳ぐ
「偶然の祝福」「博士の本棚」感想
妊娠カレンダー、貴婦人Aの蘇生、寡黙な死骸 みだらな弔い
薬指の標本 5つ☆ +ブラフマンの埋葬
「おとぎ話の忘れ物」と、「凍りついた香り」、「海」
「ミーナの行進」「完璧な病室・冷めない紅茶」感想
寒くなってきましたねー。
最近はコーヒーを飲みすぎです。
またまた小川さんの小説が出てるんですね。
小川さんの作品も最近読めていません。
映画も見れていません・・・
latifaさんのblogがちょっとした羅針盤です。
私もですよー。寒いから何か暖かいものを飲みたい→コーヒーや紅茶など飲む→トイレが近い の繰り返しです
本や映画は、放置していても何年かは逃げて行かないのが良いですよね。見たい時、読みたい時で大丈夫。
40年前だったら、映画はロードショーで見逃すと、もう見れない可能性があったんですね・・・(レンタルビデオとか無かったし・・。だいたいビデオデッキというものが存在しなかったんですよね・・・)
老犬ラブを失った悲しみはどんなにか深いことでしょうね。
また、小説にされたりするのかな。
お返事遅れてしまって、すいません。
子供のセンター試験があって、なんだかPCに向かえなかったんです。
エッセイ読まれたんですね。
ペットを失うのって、本当に辛いと思います・・・。
でも、たいがい寿命の関係で、人間よりも先に逝ってしまうのが辛いですよね・・・