ポコアポコヤ

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「注文の多い注文書」感想 小川 洋子, クラフトエヴィング商會

2014-06-25 | 小説・漫画他
全ての作品に、注文書・納品書・受領書の3編が書かれています。
クラフト・エヴィングが納品書を担当。それ以外は小川さんが書いています。
いかにも本当にありそうな、注文品等の不思議な物の写真も数枚収められていて、とてもユニークな造りの本です。
面白かったです。4つ★

特に「バナナフィッシュの耳石」が可笑しかったです。
文字を並べると、イヤーストーンズになるとか、ウナギレストラン(爆笑)でフルコース後の、シェフがウナギの耳石を愛でてるとか、小川さんってば、可笑しすぎるー
「冥土の落丁」も好き。本当に初版本は、こういう風なのかな?
「貧乏な叔母さん」のクラフトさんによる納品書の部分は、ちょっとガチャガチャしちゃった感じがするかも・・・。小川さんが担当したら、どういうストーリーを書いたのか?興味あります。

川端康成(たんぽぽ)「人体欠視症治療薬」
彼氏の体に触れた部分が見えなくなってしまうという状態に・・同じ症状の女性が登場するという「たんぽぽ」それは川端康成が最後に途中まで書いていた未完成のお話だった。川端康成マニアだったお爺さんのお宅にお邪魔して、その病の治療薬が記載されいるのを見つけ、それを注文。

★以下ネタバレ★
彼にフラれた後は、その状態が治りました。以上

サリンジャー(ナイン・ストーリーズ)「バナナフィッシュの耳石」
サリンジャーファンの集いには、梯子派とグライダー派があった。
依頼は梯子派の3代目会長からで、ナイン・ストーリーズのタイトルの最初の文字を数字化して、ある規則で並べてみると「イヤー・ストーンズ」(耳の石)という言葉になる事を発見する。
ある日会合を、うなぎ三昧のお店でやった時、帰りに偶然、シェフがビニール袋に入った、ウナギの耳石を愛おしんでいるのを目撃する。耳石それは、神からの声を聞けて芸術にそれを表現できる特殊な才能で、なんとサリンジャーは、バナナフィッシュの耳石作家だったのだ(他にも耳石音楽家などもいる)
サリンジャーが、ぱったり小説を書かなくなってしまったのは、きっとバナナフィッシュがいなくなってしまったからだ。それでバナナフィッシュを探す依頼をした。

★以下ネタバレ★
せっかく、「バナナフィッシュ成熟判定ボード」なるものを納品してもらったが、現在はグライダー派が会を仕切っており、梯子派の前会長は、縄ハシゴとともに行方不明になっているのだった。
彼は彼で、マンハッタンの下水管に自らバナナフィッシュを探しに行ったのかもしれないが、もしかしたら、グライダー派の陰謀による仕業かもしれない。
判定ボードから成熟度の高い壜は、庶務係りの私が、特別ルートでサリンジャーを探し出して届けるつもりです。
なお、グライダー派が最近ライ麦の穂に潜む秘密の解読に成功したらしいですが、何か彼らが依頼してきても、断った方が良いですよと、告げるのだった。
以上

サリンジャーの本はライ麦畑でつかまえてを昔読んだっきりで、ほぼ何も知らないのですが、ある時から、ずっと小説を書かなくなっていたのですね・・・。小川さんが、この小説を書いている9年の間に、悲しくもサリンジャーはお亡くなりになられたそうな・・。

村上春樹「貧乏な叔母さん」
僕は郵便配達の祖父と2人暮らしだった。祖父は大の読書家で、部屋には沢山の本があった。キリンの孫の手を使い本を抜きだして読む、そんな静かで穏やかな日々を送っていた。しかし祖父が亡くなってしまう。ひどく傷心の僕に、謎の叔母さんが背中に常にいるようになった。彼女は、自分の事は、おおよそ村上春樹の「貧乏な叔母さん」に書かれていると言う。叔母さんは、ちょっとお節介で「さあ読むのです」と読書することを薦めて来るのだった。読書をし続け、悲痛な状態も、だいぶおさまった頃、彼女はある日突然いなくなってしまった。その叔母さんを探してくださいという依頼。

★以下ネタバレ★
その手紙を書いたのは、1985年当時大学生だった夏木純一郎さんで、現在49才で、祖父と同じ郵便配達の仕事をしている。
彼は、1985年、祖父のレターセットや切手を使って投函したが、それは実はクラフト社が昔作成していた、特別な時間差郵便に使うものだったようだ。どうやらクラフト社先代と、夏木さんの祖父はつながりがあるのかもしれない。
その手紙を投函した後、叔母さんらしき人から手紙が届いていて、中には祖父の2番目ボタンと、「さあ読むのです」と一言書かれていた。しかし、その手紙は2011年9月の消印だった。どうやら、その手紙は未来2011年の自分が、過去の自分に送る様に仕向けたらしい。今、こうやってクラフト商会にお願いしているわけで。
以上

「中国行きのスロウボート」に含まれていた作品。私も当時読んだのですが、もうすっかり忘れてしまっていて、小川さんは村上ファンであり、かつ一番好きなのは、中国行きの~だと以前何かで読んだ事があったっけ。表紙の可愛いイラストを描いていた安西水丸さんも、去年お亡くなりになられました。再読したいです。

ボリス・ヴィアン「肺に咲く睡蓮」
蓮が肺に巣食うという奇病。この他にも人間の体に寄生する病気があって、それら体内植物のコレクションボックスの中央に、肺に咲く睡蓮を入れるガラス壜がある。ボリスも弟子丸さんも、どうやらこの奇病にかかっていたようだ・・・。
弟子丸さんの遺骨の肋骨の一部には、睡蓮が咲いていたらしい形跡が残っていた。

くしくも、2か月ほど前、この小説の映画を見たところなんです。アメリのオドレィ・トトゥ主演、ミシェル・ゴンドリー監督で、ユニークな映像が印象的でした。

内田百耳「冥途の落丁」

岡山出身の内田百の生家の近くに実家があった夫。そこはもう今は誰も住まない空き家だ。時々行くと、静止したままのはずの物が変わっていたり・・という不思議な現象を目にするのだった。
夫は税理士で毎日規則的で真面目な生活を送り、唯一の趣味の卓球も、やはり規則的で、それらはまるで苦行の様でした。ある日、測量をすることになり、実家に戻った夫は、謎の老人と世間話をする。老人から帰り際に内田百の「冥途」の初版本を、文学に全く興味のない夫は、なぜか買ったのだった。それはとても貴重な本で、ページが打っておらず、サインや、墨の染みがついているのだった。
帰宅後、そのシミを、6歳で蜂に刺されて死んだ娘だと言う夫と口論になった後、夫は2日部屋にこもって出て来なかった。私は夫に、「落丁の境界に足を取られた困るから」その本を読むなと言った。
3日目、本を読み終えたらしい夫は、今まで規則的な曜日以外の日に初めて卓球をしに出かけ、そこで突然死んでしまった。
この本は珍しい落丁本だった。章の最後に空白があるのではなく、最後の一文の前に、途中に空白があるのだった。

注文の多い注文書 小川 洋子 (著), クラフトエヴィングクラフト・エヴィング商會 (2014/1/23)

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2 コメント

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今日はこっちに (牧場主)
2014-06-25 17:47:24
とりあえずこっちに。
私も先日コレ読みました。
表紙の青いの、気になりますよね。
私は「冥途」が一番好きです。
「貧乏な叔母さん」は、これ? このボタン? って意外な印象でした。何かピッカピカじゃなかったっけ。雨で濡れたアスファルトに落ちたガソリンの色っていうか。
振り返って原作の方を読み返したりしていると、こういう楽しみ方もあるのだな、リサイクルっていうか(私は村上春樹さんの貧乏な叔母さんの話はあの短編の中で、全く覚えていなかったので)生まれ変わる感じがとても好きです。イメージを時間を超えてリレーして行く感じが。
あと、クラフトさんの納品書も品があって、写真も素敵だし、良い本ですね。
またゆっくりお話を時間ある時に。
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牧場主さん☆ (latifa)
2014-06-27 14:35:12
こんにちは、牧場主さん
牧場主さん、これお読みになられていたのねー。
冥途が一番お好きですか。

貧乏な叔母さんは、村上春樹の方の元ネタになった小説を読み返してみたいのですが、押入れのすごい奥の奥に本があるはずなので、面倒で、結局まだ読んでいないんです。
私も記憶に残ってないんですよ・・。

クラフトエヴィング商會さんて、実は全然知らなくて。(函館を舞台にした映画の原作だったそうですが、その映画は途中で挫折してしまったこともあって・・・・)
今回、これを機に、数冊借りて来て、今読んでいるところです。
「ないものあります」とか、ちょっとくすっと可笑しいです。
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