日日の幻燈

歴史・音楽・過ぎゆく日常のこと

【note】この本は現代の「遠野物語・八王子版」である!

2022-06-12 | 日日の幻燈


■「八王子怪談」 川奈まり子著 竹書房
■「八王子怪談 逢魔ヶ刻編」 川奈まり子著 竹書房

八王子出身の川奈さんによる八王子の怪談集。なんでもSNSで情報を募集して、時には本人と面接までして話を聞いたということです。
地元民なら、ああ、あの話ね…とか、ああ、あの場所のことね…とか、わかってしまうんでしょうね。
八王子城関連とか、有名な廃病院とか、地元民なら知ってそうな話から、個人宅の怪異まで、よく集めたなぁという感じの力作です。

この本、帯などでは随分と煽っていますが、良くありがちなSNSで拡散された曖昧なネタを寄せ集めたものではなく、その真偽は別として、少なくとも出処ははっきりしている。
そして、著者は八王子の歴史や伝承・民話の類にまで踏み込んで(かなり調査した感じがあります)、その怪異の背景を探っています。

ん?これ、どこかで同じような感じの本を読んだことがあるなぁ…。あ、「遠野物語」だ!

そんなわけで、この本、ホラーというよりは、現代の「遠野物語・八王子版」といった感じで読みました。
八王子城や高尾山など、八王子には古い歴史と代々受け継がれてきた文化があります。そういったものを確認しつつ怪談と向き合うと、柳田国男や小泉八雲みたいに、または水木しげるのように、怖い話がまた違った側面から語られるのがとても面白いなぁ…と思います。

さらなる続編を期待しています!

ちなみに私、心霊・幽霊・妖怪・UFO・UMAなどなど、オカルト大好き人間です。ただし、あくまでエンターテインメントとしてです。さらに言えば、霊感もまったくないので、たまに不思議な現象に遭遇しても、きっと気のせいだったで済ましてしまっているのでした。



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【note】「最後の浮世絵師 月岡芳年展」、観てきました

2022-05-06 | 日日の幻燈


八王子市夢美術館で開催中の「最後の浮世絵師 月岡芳年展」を観てきました。

月岡芳年って誰?
リーフレットの解説によると、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師。歌川国芳に弟子入りし15歳でデビュー。無惨絵、武者絵、錦絵新聞の挿絵、美人画などを手掛けました。浮世絵というと江戸時代のイメージが強いのですが、彼はどちらかというと明治に入ってからの活躍が多い感じです。今回展示されていた150作品も、ほとんどが明治時代のもの。まさに「最後の浮世絵師」といったところですね。

では、展示されていた作品を、いくつか紹介します。
※下の画像はショップで購入した絵葉書です。美術館内での作品の撮影は禁止なのでご注意を!


【新形三十六怪撰 さぎむすめ】


「新形三十六怪撰」は妖怪画の連作。「皿やしき お菊の霊」「ほたむとうろう(牡丹灯籠)」「四ツ谷怪談」などの怪談話、鬼や土蜘蛛など伝説でお馴染みのものが中心です。
「さぎむすめ」は明治22(1889)年の作品で、文字通り鷺が娘に変じたというもの。鷺の白さを際立たせるため、帯は黒色としたそうです。


【風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗】


「風俗三十二相」は、江戸後期から明治にかけての女性をテーマにした美人画の連作。「にくらしさう」「うれしさう」など、各々、「~さう(そう)」とタイトルが付されています。
「うるささう」は明治21(1888)年の作品。若い女性が猫をかわいがっているのですが、猫からしてみると、とても「うるささう」。今だったらタイトルは「うざさう」でしょうか…。


【月百姿 玉兎 孫悟空】


「月百姿」は月をテーマにした連作(全100点)。基本的に作品のどこかに月が描かれていますが、あえて月を描かず、影や人物の仕草などから月を連想させるものもあるようです。
明治22(1889)年の「玉兎 孫悟空」は、月に住むという伝説の兎・玉兎と孫悟空の対決を描いたもの。孫悟空の、歌舞伎で見得を切るような姿が凛々しい。この愛らしい兎は、なぜ孫悟空を怒らせたのでしょうか?


ところでちょっと気になったのですが、浮世絵と錦絵の違いって何だろう?
帰宅してから調べてみましたが、いくつかある浮世絵の手法の中で、多色刷りの木版画のものを錦絵と呼ぶとのこと。江戸時代後期以降は、ほとんどが錦絵の手法となるそうです。
なるほど。
私は単純に、明治時代以降のものが錦絵なのかな?と思っていました…。


150点を鑑賞するとそれなりに時間を要しますが、コロナ以降、久々の美術館だったのでじっくり見入ってしまいました。
そんなに混んではいませんでしたが、ソーシャルディスタンス(最近、表立ってあまり聞かなくなりましたね)に注意しながら堪能してきた、「最後の浮世絵」の数々でした。



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【note】八王子古本まつり2022春

2022-05-04 | 日日の幻燈


JR八王子駅北口の西放射線ユーロードで開催されている、八王子古本まつりに行ってきました。春と秋、年2回の開催ですが、春の開催がユーロドで行われるのは3年ぶりではなかったでしょうか。27店舗、6万冊以上の規模です。

実は一昨日も来たのですが、お、あとでこれを買おう!とチェックしていた本を、すっかり買い忘れてしまいました。なので、今日はまずそれを買ってから、お宝を探そうと思っていたのですが、なんと!その本、なくなっていました。シリーズもので、その本だけがない…。
まさか、あんなマニアックな本を買っていく人がいるなんて。
これはかなりショック!
ああ、なんで買い忘れたのだろう。私のバカ!!
逃した魚は大きい…。



と、まぁそんな感じでしたが、仕方ないですね。今回は縁がなかったということで。


ところで、会場には「大久保長安の会」が、彼の偉業を伝えるためテントを出していました。
そこで、長安の小説を執筆された山岩淳さんと、長安の陣屋跡にある産千代稲荷神社の宮司さんに、長安についていろいろとお話をお伺いすることができました。
本当はもっとお話を聞いたり、質問をしてみたかったのですが、時間の都合もあり断念。
短時間でしたが、テント内外に展示されている手作りの資料を丁寧に説明していただき、長安初心者の私にはとても勉強になりました。
ありがとうございました。



登録証をいただきました。
え?会員・スタッフに登録されたのかな(笑)。
連絡先は公開していいのかわからなかったので、モザイク処理をしてあります。
よく見ると大久保長安「研究会」となっています。「大久保長安の会」と、また別なのでしょうか?


【大久保長安 家康を創った男!】


「大久保長安 家康を創った男!」
山岩淳著 揺籃社 2020年

こちらが山岩さんの著書。
古本ではなく、もちろん新品を購入。帰ってからすぐ読みました。
小説の体裁をとっていますが、長安の入門書のような感じです。馴染みのない用語は説明があり、これなら若葉マークの私でもよくわかります。
「あくまで小説ですから」と、山岩さん、念を押されていました。


【史実大久保石見守長安】


「史実大久保石見守長安」
北島藤次郎著 鉄生堂 1977年

そしてこちらは古本の中から発掘。箱入りで400ページを超える立派な本ですが1,000円でした。まだ読んでいませんが、八王子に限らず長安の事績を詳細に調査した本のようです。
八王子との関りも詳しく述べられていて(ここの章だけは目を通しました)、聖地巡礼にも参考になります。ただ、今から45年前に書かれた本なので、現在はもう残っていないとか、知っている人はいるのかなぁ…というものもありそうです。


そんなわけで、惜しくも手に入れ損ねた本があったものの、とても有意義な古本まつりでした。



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【note】またまた「黄金の日日」への想いを綴ってみる

2022-03-27 | 日日の幻燈


NHKのBSで再放送されていた「黄金の日日」が終りました。
信長-秀吉-家康の時代を、堺の商人・納屋助左衛門を通して描いた1978年の作品。
これまで何度かこの作品への想いは綴ってきましたが、やはり書かないわけにはいかない。

その昔、少年は石田三成と出会ってしまったのだ

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私が歴史上でいちばん好きな人物・石田三成。三成の生涯とか事績については、専門家や他の三成フリークがそれこそ語りつくしているのでそちらに譲るとして、じゃあ、三成へ...

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「黄金の日日」の三成は、ただひたすらカッコ良かったのだ

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去年の大河ドラマ「軍師官兵衛」の三成、ファンからすれば酷かったようですね。私は、多分そういう描かれ方をするんだろうなぁ…と直感していたので、最初から見ませんでした...

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今までにも書いてきた通り、「黄金の日日」は自分史上No.1大河ドラマ。史実重視の視点からは、おいおい…ってところも多いようです。また最近の映像技術からすればセットもちゃっちい。でも、そんなことは自分の中ではもうすでに超越してしまっている。いわゆるこれが信者っていうやつでしょうか?

以前、知人が「黄金の日日は、前半は冒険活劇みたいで明るくて前向きで好きだけど、後半はなんか暗くて好きではない」と言っていました。
再放送を見終えて、今回はこの知人の一言について思うところを。


確かに物語前半に比べて後半は暗い、というか重たい。主人公・助左(納屋助左衛門)が成長するにつれ、いつまでも無邪気ではいられない、といったところでしょうか。自由に生きようとするほど、政治的なしがらみに束縛され、押しつぶされそうになる助左。ドラマの後半が暗くなりがちなのも仕方ないのかな。そうそう、今書いていてふと感じたのですが、前半の助左は夢と希望に満ちた冒険家、後半の助左は巨大な権力に抵抗するレジスタンスの戦士といった感じ?

そして最終回。
関ケ原の戦いの結果、家康に堺を追われ(いや、自らの意思で堺を持ち去り)ルソンに向けて出港した助左の船。そこに私はかつての冒険家・助左を見ました。そして江戸・大阪へ向かう人々にも、堺を出ていく悲壮感よりも、やはり新天地を目指す希望が。
そして船には助左と同名の少年が乗り込んでいます(堺に置き去りにされた捨て子かと)。助左はその少年に船の舵を取らせます。

若き冒険家の誕生。

これからこの少年は、立ちはだかるいくつもの困難を、かつての助左のように乗り越えていくのだろう。
ラストで再び第1話に戻ったかのような、夢と希望に満ちた日々への回帰。最終回まで見続けた我々も、ドラマ後半の暗い時代を抜け、たどり着いた新世界。
こうやって上の世代から次の世代へ、人々の営みは何世代にも渡って続いていくんだなぁ、その先に今の自分がいるんだよなぁ…って思いました。


何度も繰り返しDVDで見た「黄金の日日」。
1年かけて再放送を見終えて、感無量。少年の日の心に焼き付いたものは(これはドラマに限らないかと思いますが)、いつまでも宝物なんだと、あらためて気が付いたのでした。





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【note】元日と富士山

2022-01-01 | 日日の幻燈


良く晴れた元日。近所の浅川の堤防から望む富士山。元日に富士山とは今年は良いことがあるかな?
今では建物のあいだに、申し訳程度に顔をのぞかせていますが、江戸時代、甲州街道を江戸方面から歩いてきて、浅川を渡り八王子宿に入るあたりでの富士山の眺めは、なかなかのものだったようです。


それにしても年々、1年が経つのが早く感じるのは年をとったせいなのかな…。


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