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フツーの見方

フツーの論理で考えれば当然だと思うことが、なぜかマスコミでは出てこない。そんな意見を書き残しておきたいと考えてます。

FMチューナーはオワコンか 30T修復&改造編

2021-10-27 | Weblog

 それなりに経験も積んできたので、もしかしたら 30Tも直せるかもとTRYしてみた。
 当初全く音がでない状態だったが、試しに長時間付けっ放しにしてたら片chだけ音が出たので修復の可能性が出てきた。つまりRF~検波部は一応動作している訳で、MPX段以降に問題があると推定できる。
 ひろくんHPから回路図が入手できたので、各部電圧を比較した結果 +電源が正常に出ていない事が判明。たどっていくとPTに直接繋がっているケミCの劣化が疑われた。
回路図を分析すると本機の電源回路は極めてトリッキーな構成で、PTのAC9Vx1巻線からDC±12.7Vを作り出している。±の分離のためACに直接ケミCを繋いでおり、これでは電源オン時に短時間だがケミCに逆電圧がかかっている筈だ。さらに主電流が常時ケミCを通過して供給されるのでケミCに大きな負担が掛かる欠陥回路と思える。±独立巻線の回路に比べオーディオ的には何もメリットが無い筈で高級オーディオ機とは思えない設計だ。在庫のPTを流用したのだろうか?
 所が、ひろくんHPに30Tと同時期の YAMAHAの高級機 T-2の回路図もあったので見てたら同じようなトリッキー回路で±電圧を作り出していて驚いた。この回路に音質的メリットは無いと思うのだが、当時はPTの巻線を増やすのが相当コスト高だったのか?それだとしても普及機でなく高級機でケチるというのも妙な話だ。
 ともあれ問題のケミCを交換したら正常な電圧になり、安定して両chから音が出るようになった。外したケミCは容量が1/10程度まで劣化していた。これは酷い。こんな状態で片chでも音が出たというのも奇跡に近かった。

 本機では検波後の増幅に有名なOp-amp(NMJ4558DS)を使っていた。当初片chしか音がでない原因としてamp故障も疑って交換ICを手配したのだが、ついでにICを変えて音を比較してみようとソケットに付け替えた。そこに新品Op-amp(NMJ4558DD)を装着して一から調整をやり直した。RF感度やSメータの振れは改善。しかしVCOをいじってもSTEREOにならない問題が残った。
 最近たまたま携帯型オシロが4千円で買えることを知ったので波形や周波数チェックのため買っていた。帯域は200kHzと物足りないもののこんな価格・小ささでオシロが作れる事が驚きだ。中国恐るべき!  で、偶然買っていたこのオシロでVCOを19kHzに極力近づけたらSTEREOになる事が分かった。故障を疑っていたMPX-IC(AN363=入手不可)は壊れてなかったようでヤレヤレ。このVCO調整が結構シビアで、他のチューナーの様に適当にVR回しているだけではST.にならなかったようだ。

 セパレーションも調整で上がったが、本機ではSep-VRがL/R共通なので50dB位が精一杯。L/R単独であれば60dB以上いくのだが、まぁ実用上はこれで十分。Pilot Cancelも調整が非常にシビアだが19kHzピークは両chで-60dB位にできた。
 スペアナで観てたら、10kHzにも-50dB位のピークが立つ点が気になった。サブキャリヤ調整のCT701で10dB位変動するが消えない。ST-G560でも10kHzピークが立っていたので松下回路の特質なのかも。でも-50dBは耳では全く聴こえないので、これも気にしない事にした。

 一通り調整した結果、イイ音が出るようになった。遂に復活、捨てなくてヨカッタ~と喜んだ所でKT2と音質比較。SNは悪くないが吸込まれるような静寂感は無く室内的な静かさ、レンジや音の分解も僅かに負け、という印象でやはり時代差もあって勝てないのだろうと思った所で、ここからOp-amp(IC501と701)を交換して比較実験してみた。
 今回は4558互換で安価かつ定評のある3種を準備。最初に付いていた石も無事に音が出たので併せて試聴。
NMJ4580DD…4558DD比で少し分解が良くなった気もするが大差はない印象。KT2比で高域が鈍い。あとIF=Wide自動判定が不安定する傾向が少しみえた。4558より高ゲインが影響か。
NMJ2114DD…スッキリした音で分解が上がりレンジも広がりKT2に接近。低音が少しボンつく印象もあり。
NMJ4558DS…元々の石。表面に光沢が有り、ネットで「艶あり」と呼ばれる物に相当か。4558DDより音がクリヤで分解が良い印象。これが本来の音かな。レンジはKT2より少し狭めで2114に勝てない。不正電圧が長く掛っていたためICが劣化してる可能性もあるが、艶あり新品は最早入手不可で験証できない。少なくとも発売当時(KT2より7年も前)としては非常に高音質だった事が再確認できた。
 いずれも実際は僅差で、KT2と切替試聴しないと判らない程度だが、「艶あり」の違いもネット評に近い印象で面白かった。
 正直Op-ampで音が変わるかは半信半疑だったが、何度も入替えて一応再現性もあると感じられた。将来的に別のICも入手して比較してみたいものだが、当面は2114が最適と判断。
ICを2114にした結果、レンジや分解もKT2に負けない高音質になった。さらに切替え試聴してたら、驚いたことにKT2より弦や声では艶がある音に感じられた。これも比較してようやく気づく程度だが、KT2の方がクール&フラットな印象。ここを意識して聴くとKT1もKT2よりは艶感がある。音の艶とは主に倍音成分≒高次歪なのでKT2では歪が高度に抑えられていると言えるのかもしれない。
 以後、本機を30T改と呼ぼう。音域バランスとしてはKT2の方が安心感がある。30T改はエレキベースがややボンつき気味で耳障りに感じる時もあるが、クラシックでは弦の艶が増して好印象。遂にKT2のライバルが現れた。
 あと本機では可変と固定の2出力があるが、スペアナで見ると固定出力側はLPFが入っており、上記の19kや10kのピークが抑制される一方、音も一枚ベールを被る感じで空気感が落ちる。比較試聴して可変出力の方が原音忠実である事が確認できた。昔は気付かなかったこの違いが判ったのも大きな発見だ。判定音源としてNHK「音の風景」の自然音は自分で聞いたことのある音も多く、繰り返し放送してくれるので非常に有効だった。

 バリコンだと局の切替はやはり面倒でシンセの容易さには敵わない。固定局で使う前提で30T改をメインの一台にしても良いと思ったが、使ってたらWideとSTEREOが時々切れるトラブルが発生。この原因がはっきりせず保留。ICの問題なのか、それとも電源が不安定なのかもと思い、大容量ケミCを全て交換してみようと外した所で面倒になって現在中断。なお外したケミCも全部がほぼ容量半減していた。よくこれでイイ音が出てたものだと逆に感心。昔のケミCは容量誤差+100%/-50%とかだったから設計余裕が大きく取ってあるのだろうか。

(オマケ)
 音質の表現はどうしても抽象的になるが電気特性として見たらどうなのか推測してみる。定説がある訳ではないのであくまで私の推測。

アタックに対するクリップやレンジの広さはDレンジ、f特との相関として理解できる。ただし私には原音の質は分らないので(余程酷いチューナーでない限り)2台を比較してどちらがどの点で良いか悪いかの判断しかできない。
情報量が少ないと感じるのは主に高域(倍音成分)が落ちてる、過渡応答が悪い、ピークが丸められてる等の総合的な印象か。
低音がボンつくと聞こえるのは低音部でピークがある状態で、ピークの先は急激に落ちるので真の重低音は不足している事が多い。締まりのない低音もボンつく印象になるが、これは低域の立下りが悪い現象でチューナーよりはスピーカー原因が多いだろう。ただし、締りの良い低音となるとチューナーによる差があって、ダンピングが強く効いてる印象だ。
線が細い音は純音に近いという事だろう。しかし不純音が含まれると推定される線の太い音も音楽によっては魅力がある。
消えるような静寂感はSNが高いことは前提条件として、立ち下がりが速くてアンダーシュートが無い状態だろう。室内的な印象を受ける時はアンダーシュートの振動を反響と感じるのかも知れない。
楽器が分離良く聴こえるのは混変調が少ない事か。
キレが良いのは立上り/立下りが速い状態で、ヌケは混変調が少なくて静寂感が良い状態か。
音に艶があるのは二次高調波がきれいに出ている状態かな。本来歪成分だが、人の耳には適度な高調波は心地よく聞こえる。
音に深みを感じるのは適度な時間差のある残響か、低周波側の歪成分が効くのか、これはまだよく解らない。
しっとりした音も何に起因するのかよく解らない。語感は逆のドライな音は残響の少ない音というイメージだがそれだけでもないような。実際、残響を長くした場合にしっとりした音になるという印象はない。やや響きが暗めの印象だからマイナー調の高調波が付く状態だろうか。
少し似た感じだがちょっと異なるシルキーな音は主に高域で絹を触っているような滑らかな感触を音で感じるとしか言い様がない音質。これも何の特性が効いてるのか解らない。メーカーはどうやって音色を作っているのだろう。
 これらの音表現は昔のオーディオ評論家の発明と思うが、科学的には不明瞭でも聴き比べるとそう表現するしか無い違いを感じる。

(追記)しっとり感のあるSONYは響きが結構豊かである事が判った。線の太さとは異なる繊細な高調波の出方がこの特徴となって表れるようだ。シルキーな音も多分スペクトルが違う高調波成分の響きが効いてるのではないだろうか。高級チューナーの歪率は0.1%切ってるから(音色の違いは主に混変調歪成分と思うので測定値も正確ではないが)、どちらもf特では見えない微小レベルだろう。人の耳は微細な変化には実に敏感ということだ。KENWOOD系だって少し響きを出してるが、かなりニュートラルな成分なのだろうと思う。
最近入手したONKYO T-445が極端に響きの少ないチューナーで、これと比較試聴してようやくこの推論に至ったが、当たってるかどうかは不明だ。

 総合で見ると、線が細くて分解が良く静寂感の優れるTRIO/KENWOOD系が原音忠実という意味では一番HiFiなのだと思う。実際KT2やKT1はどんなジャンルでも不満なく聴ける印象。パナやビクターの廉価機でも傾向としては似た印象を受けた。
SONY、Technics、SANSUI、Victor、YAMAHAは原音忠実よりも音楽表現重視の方向性で、KENWOODより魅力的な音と感じるケースもある。特にYAMAHA上級機はシルキーな高域が音楽にマッチすると非常に魅力的で、これがヤマハトーンなのかと感心した。
この辺はTRIOが元は通信機メーカで、後は家電やオーディオ、ヤマハは楽器が出自だという事と関係してるのかも知れない。当然設計者に依存するので松下のような大手で多数の設計者がいればバラつくのだろう。
マランツの太い音は米国人好みなのかな。最近聴き直して音楽として非常に気持ち良く感じた。細かい音質より音楽を楽しめと言う主張かも。
DENONとONKYOは安物しか聴いてないので未判定。バリコン時代には定評があったが、レビューの少なさからもシンセでは今一な様だ。
東芝/日立/三洋はチューナーのレビュー自体がほとんど見つからない。同社製のICはほとんどのメーカで使われているのに不思議だ。東芝Aurexのチューナーを最近オークションで何種か見つけたが、正直デザインから完全に外してる感。統一感も系統性も感じられず、全然興味をそそられない。アンプは注力してもチューナーはオマケ的な扱いだったのか?
歴史を調べたらAurexは 1974年に国産初(Victorと同年)のシンセチューナー ST-910を出してた。技術的には先進的だったようだ。しかし技術者趣味的なデザインで定価28万円とか、殿様商売だったのだろう。営業もどうせ一式で売れるからチューナーはOEMでも構わないという話になったのかな。ひろくんに拠れば ST-S07は KT-770のOEMらしいし、ST-S5は外観も仕様もパナのOEMとしか思えない。大手半導体メーカーなのでICを売るのが主でオーディオ機器は片手間でやってたのだろう。
PioneerはF-120では原音忠実だったが、後期のF-777はソフトで聴き疲れしない音になっていた。
KENWOODもKT-6040では少し線の太い音になっていたので価格帯や時期によって変化するのも確かだが、上級機においてはメーカ別の個性が存在するように感じられた。
 人間の耳は結構いい加減だが変化には敏感ということで、以上は全てKT2かKT1と切替えて聴いた時に初めて判る程度の印象だ。
トータルでの音質はアンプやスピーカーとの総合バランスだし好みもあるのでどれが一番とは言えない。
 大まかに言って80年代の5万クラスの機種であれば情報量としては特に不満なく聴けると思う。90年代になると高級機があまり出なくなって玉石混交となり、3万クラスでも情報量の高い機種もある。ただし廉価機は安い部品を使ってるためかやはり安定性が劣るようだ。中古で狙うなら80年代中期の5万超の機種が良いだろう。余程状態が悪くなければ少し調整するだけで現在の安物よりはずっと良い音のはずだ。


FMチューナーはオワコンか まとめ編-1

2021-07-19 | Weblog

 入手した機種ごとに調整手順等も書いていこうと思ってたら全然進まなかった。思った以上に面倒なものだ。ひろくん氏は本当に偉大だな。
 その間にチューナーがやたら増えてしまったので取り敢えず、調整&試聴の簡単な感想をリスト化してまとめておこう。
 大体の機種のSpecは「オーディオの足跡」サイトにあると言うことで省略。逆にこのサイトに無い機種の情報を入手するのは非常に大変。すごい手間が掛ってる訳で頭が下がる。発売年等、一部疑わしいデータもあるが、信頼性のある情報源を見つけるのが難しく、余り修正提案もできない。
 なお音質比較にはピアノのアタック音が潰れずにきれいに鳴るかが一番判りやすいと思っている。NHKの「弾き語りフォーユー」が定期的に聴き比べられるので良き基準としている。

・テクニクス ST-G5 '83発 ¥49.8K
 30Tのテクニクスだからこれも音が良いかと期待して購入。サイズが小さい!というのが第一印象。独特のパネルデザインや選局ボタンI/Fは慣れてきたら結構気に入った。シンセ・チューナーの場合、一度setupしたら電源と選局ボタン以外はほとんど触らない。だから選局ボタンを大きく目立たせて、それを押す長さで2局選択できる様にして16局もメモリできるからまず不足はない。他のボタンは邪魔にならないよう小さくしてしまうという、今でもシンセとして一番合理的なデザインと思っている。ただしUp/Downボタンが小さくて押し間違いしやすいのでsetup時はやりづらい。多分そういう不評を受けて松下も後の機種では他社同様丸つまみを付けたり選局ボタンを相対的に小さくしてしまったのだろう。残念だ。
それよりANT入力が同軸ケーブル直結タイプで同軸が外側横方向に出るので狭いラック内だと配置が難しいと思われる。ここをF型にしなかった点と、本体が軽くてゴム足でもないので滑りやすいためボタンを押すと簡単に動いてしまう点の方が設計ミスと思う。決して安くはない定価に比べ大したコストダウンとも思えないのに。

 本機の調整記事は見つからなかったので、同時期の上位機ST-G7のひろくん記事を参考に試行錯誤で調整した。主要ICは以下の通りだが、G7とは一部しか一致せず、型番から検索して機能を推測。
IC101=NEC uPC1018C …AMチューナ内蔵 FM IF Amplifier
IC102=NEC uPC1167C2 …FM-IF with Quadrature Detector
IC301基板裏=松下 7471S …(G7記事によれば 4066B と合せてSample & Hold MPXを構成)
IC302=NEC D4066BC …Quad analog Switch
主な調整ポイントは
T101+T102 …FM IFT 同調点→TP101~TP102間電圧=0V と歪(音質)調整
VR301 …MPX V.C.O.調整→19kHz合せはオシロが無かったのでできず、全局が ST.になる様に調整
L301 …Pilot cancel→当面無視、後にスペアナで19kHz最小化
VR302/VR303 …FM separation
 VR501 …ANT入力レベル調整→無視

(追記)
 後にBLUESS氏が調整記事をUPしてたので調整するならそちらを参考にしてほしい。大筋は間違ってなかったようだ。

 本機は調整後もSTEREO時に薄いホワイトノイズ(WN)が入る。いくら調整を工夫しても消えず、モノにすると完全に消えるのでMPX周辺に故障があるのだと思う。
 この状態でKT1と比較すると、fレンジが少し劣り、分解能やキレは明らかに負け。何より静音時の高域WNが耳障りでクラシックでは致命的。WNを考慮外にしても音質がKT1に負けてるので頑張って修理する価値もなさそう。まぁ見た目では異常は無いので、修理する知識もないが。
 所が、WNが気にならない打込系の曲をNHKが特集で延々流してた日に、KT1と切替試聴してたら不思議とKT1より本機の方が何となく気持ち良いなと感じる気がした。Specから理由を邪推すると本機は低域f特が5Hzまで伸びている事が影響してるのかも知れない。いわゆる腹に響く重低音(20~200Hz程度)は寧ろKT1の方が強く感じるのだが、20Hz以下(超低音と呼称)も体の振動として感覚に影響するのかも知れない。当然大口径スピーカでないと差は出ないと思うが、家の30cmウーファーでは差を感じたということだ。あくまで私の印象に過ぎず、部屋のf特取る手段もないので真相は不明である。
 そもそもクラシック楽器だと超低音は直接出ないし、当時のアナログ磁気録音では20Hz以下は記録困難だったので当然FM放送でも20Hz以下成分はほとんど無かった筈。その状況で何故テクニクスが低域を伸ばしたのか意図が分からない。単にカタログ値で差別化したかったのだろうか。しかし今の所テクニクス以外にここまで超低域のf特を表記したメーカは見たことがないので他社が追従するほどのアピールはなかっただろう。
最近、ヤマハの T-6('80年頃)で10Hz~というSpecを見つけたが、その改良版 T-6a('81年)では30Hz~になってた。SANSUIの TU-S707X('84年頃)でも10Hz~のf特記載があった。それが後継のαシリーズではf特記載自体が無くなってた。やはり大したアピールにはならなかったのだろう。
 それが近年のエレキ楽器+デジタル録音だと超低域が簡単に再生・記録できるので実効性が出てきたのかも知れない。実際FMよりデジタルTVの方が超低音の出てる音楽や効果音が多い。本格システムに繋いで聴くと今のTVは非常に高音質で驚く。その分まじめに聴いてるとちょっと疲れるけど。

今は小型さとI/Fの良さを買って、PC付属のアクティブスピーカー(WNが気にならない)との組合せで寝室ラジオとして鳴らしているので一番活用してるとも言える。

・YAMAHA TX-100 '90発 ¥39.8K
 ヤマハTX-2000とほぼ同じレシオ検波回路と定価に見合わぬ良い部品を使ってる高CP機という事で狙ってみた。黒いボディに赤とオレンジのパネルデザインも洒落た感じで好みだった。
 音はクリヤでキレも良いが静寂感はKT1に負ける。KT1比で中域が華やかになる印象でポップス系の曲メインなら合うかも知れない。クラシックだとスッキリした音のKT1の方が好みだ。でもこの音質でTV対応+低価格だから当時としては高CP機だ。
 なお本機では19kHzフィルタ調整機能がないためスペアナで見ると19kHzピークが-40dB近く漏れている。しかし私の耳では聴いても全くわからないしメーカもこれで支障ないと考えて出しているのだろう。あまり数値に拘ってもしょうがない。
 本機はリモコン対応という事で、たまたまヤマハのAVアンプ用のRSリモコンを持ってたので使ってみたらちゃんと反応した。但し使えたのは選局ボタンをUp/Dwon+Shiftで選べる機能だけ。電源はアンプ側で連動という事か。
 TX-900のSメータが検波のS/N表示だったのと比べ、本機のSメータは音では変わらず局ごとに一定=他社同様信号強度表示のようだ。なおメモリ保持は非常に優秀で 2ヶ月AC抜いてたのに局メモリ残ってた。目立った調整ズレもなさそう。
改めて聴き直すと高域はやはり滑らかでキレイだ。でもTX-900の様にシルキーとまでは言えないという印象かな。低域はややボンつき傾向。キレや抜けは良く、常用機としても問題ないレベルと思う。ただ稀にだがゴロゴロとかボボボボという感じの音が薄く入った事があり、やはり部品劣化はあるのかも知れない。
 本機もPT&基板がかなり小さく(ひろくんHP参照)、すごくシンプルな作りに見える。90年代後期のパナやマランツもシンプルで小さい基板だったが、ヤマハはそれを先取りしていたようだ。スイッチ類の感触が良い点も総合デザインとして評価できる。

・ソニー ST-S333ESX '86.2発 ¥49.8K
 パッと聴いてKT1に負けない高音質&高SN。さすが人気機種。ロータリーつまみがなく古いためかST-S333シリーズ中ではESXは少し安値落札できたが、これ以降のソニー機の音質はほぼ横並びらしいし、後期は底面点検蓋がないので修理を考えれば前期の方が良いかも知れない。
 ただし当然部品の経年劣化リスクは増える。本機は電源部ヒートシンクがかなり温度が上がるので、ネットでも周辺ケミコン劣化やハンダ不良例が多いと書かれている。KT1やKT2は少し温かい程度でその点では有利だ。
実際、入手時点で電源ケミコンがやや膨れてる感じだったので交換も考えたが、今の所いい音がでてるからそのまま使ってる。手抜きだな。
 現状でも情報量の多い高音質で音色はKT1とは少し違う気がするが言葉で表現するのが難しい。KT1の方が少し線が細い感じでESXが少ししっとりした感じか。どちらが良いかは好みのレベル。
 なおソニーは穴が多数開いてるカバーなので内部に埃が多量に溜まっていたから清掃が大変だった。Kenwood系は穴なしカバーなので内部は比較的キレイな事が多く気分的には楽。

 その後、他のチューナーとの比較試聴を行って改めて気づいたが、ESXはKenwood系より重低音がよく響く。安物機のボンつきより重低音域なので嫌味は薄い。f特記載は 30Hz~15kHz(+0.2 -0.5dB)なので低域がどこまで伸びてるかのSpecはない。腹に響く音が出ていると感じるが、長時間聴いたり、曲によっては過剰感もある。しっとりした音色と相まってクラシックには向いてるかも。圧倒的な重低音を浴びたい人にも適。一方でKenwood系の方も重低音が出てない訳ではなく、締まってスッキリした低音と言える。ちなみにKT2のf特記載は 20Hz~15kHz±0.5dB なので低域が十分出てる事は確かだろう。
原音が判らないので曲と好みで評価が分かれる。メーカーの個性と言うべきか。

・KENWOOD KT-2020 '84発 ¥74.8K
 待望の高級機ゲット。入手時一応音は出たが典型的な周波数ずれの状態。そこから同調点だけ調整した状態では音はクリヤながら凡庸な音でKT1に及ばず少々ガッカリ感。しかしKenwoodの高級機がこんな音のはずはないと思い、コアドライバーを買ってRF調整したら、一聴してさすが高級機と判る深いイイ音に化けた。高級チューナーではRF調整も非常に重要だと勉強になった。
以後本機もメイン機として設置し、KT2と呼称する。
 本機ではKT1やESXではギリギリ感のあるPfアタックも余裕を持って再生できる印象。ならば万能かと言うと、音が全てキレイにされてしまうという感じもあり、意図的に歪を鳴らすロック系の曲だとKT1の方が迫力を感じる。
深いイイ音というのもある種の色づけとも言えるので、KT1の方がニュートラルなのかも知れない。ただ深い音は聴いてて魅力的なのも確かだ。
 キレイな音で聴きたい時はKT2、無色透明を好むならKT1、ESXは少し別の音色というのが個人的感想。ただし比較試聴しない限り、この3機(および系統機)を選んできちんと調整すればどんなジャンルでも不満はないと思う。
 入手したKT2は数日電源オンしないとメモリが消えてしまう欠陥持ちなので極力メインで使っている。

・Panasonic ST-G560 '89頃 ¥26.5K
 ひろくんが高評しており、Spec上もf特4Hz~だったので買ってみた。定価が格段に安く、基板構成も極めてシンプルなので半信半疑だったが、調整後の音はKT1に非常に近い高音質でびっくり。切替えてもあまり差が判らない感じ。KT2とは傾向が違うと思う。電波が弱い局だとWNが少し増える所で高級機と差がつく。といってもツイーターに近づかないと判らないレベルで、定価からすると非常に高CPだ。回路やIC技術がこなれてきた成果だろうか。
 なお出る音は優秀だが、無音部で比べると静寂感はKT1&2に敵わない。この辺はさすがに格が違うようだ。パナは何故か国内SpecにはSN値がないが、海外資料では73dB(IHF)表記だった。高級機レベルの80dBには達してない。
ただ、それほど大きい訳でもないしホワイトノイズは長く聞いてると段々慣れてくるので、このレベルでも音楽鑑賞に十分耐える。

 一方、ST-G5と比べてパネルは単色で地味。FLは安物なのか既に所々薄くなってる。あとMuteが手抜き気味な所とかコストダウンの影響はチラホラ見える。それに、たまにガサゴソというノイズが入る気もするが再現性不明で特定できていない。改めて同調点関係の調整をやり直したら出なくなった。温度の関係だろうか。やはり安定感で高級機には勝てないという印象。
 超低音に関しては曲に依るが大音量で鳴らすとKT1と違いを感じる気もする。が、元々曖昧な感覚なのでそれほど明確でもない。
 オークションでは高級機も価格的に大差ないので敢て狙う必要はないかな。

・Pioneer F-120 '82.10発 ¥45K
 パルスカウント検波の音を確かめたくて買ったが、当初私の耳では検波方式による音の違いはよく判らなかった。G560もクォードラチュア検波だがKT1との音色の違いは判らなかったし。メーカの個性や商品コンセプトの差の方が大きい気がする。
 音質としては透明感とキレがありKT1と非常に似ている印象。切替試聴するとKT1に比べて僅かに倍音成分が少ない気がする程度の差。発売がKT1の前年で1万円の価格差があるからこの音は立派だ。
 ただし SメータやAuto-tune機能が無いので使い勝手は劣る。
 本機は入手時の状態が非常に悪く、プププというノイズが頻繁に入り、ケミコンの液漏れ跡も多数あった。こりゃ失敗したかと思ったが、偶然からノイズに関してはパネルの切替SW周辺が怪しいことに気付き、潤滑剤スプレーして何度もSW操作してたら徐々に解消した。他のサイトで同様の故障例を見たので、この機種では必ず発生する選局ボタンのクッション劣化同様、起きやすいトラブルなのかも知れない。回路故障では無かったようだ。
当初、基板を調べてMPX部の近くでカットされたジャンパ線を見つけ(写真赤丸位置)、ひろくんの基板フォトと対照したら切れてなかったので、これが原因か!と思ったのだが接続してもノイズは変わらず。一方で Sep調整時にVR振り切って調整しきれなくなった。再び切断したら Min調整可能になったので ここでSep調整部のバラツキを吸収する設計と思われる。なかなか手ごわい。赤丸が切れてたジャンパ線
 ちなみに劣化クッションの代用品は皆さん色々工夫してるようだが、私は手元にあった1tの厚い強力両面テープを小さく切ってボタンの押し棒に2枚(SWと接する面だけカバー残し)貼り付けて対応した。1年経っても問題なく使えている。これもいずれ劣化するとは思うが、安上がりで交換は容易だ。
 先にケミコンを疑ってたので交換準備をしてたが、現状クリヤな音が出てるので保留。音が改善する可能性もあるが逆に壊す可能性もあるし、メインで使う予定もないし。局メモリもケミコンだけと思うが、コンセントを抜いても3day以上は保持されてる。

 調子が良くなったのでその後色々比較試聴してたら本機は一音一音が粒立って明確な印象を受けた。これがパルスカウントの特徴なのかな。音の粒に注意して比較するとクォードラチュア機は確かに一音一音はボヤケた(よく言えば響が付く)印象を受ける。音楽より寧ろ話し声の方が判りやすい。音楽としては問題になる事は少なく、私は情報量や全体のバランスの方を重視して聴いていた。
KT1より倍音が少ないと聴こえたのも余分な響が出ない本機の特質かも。確かにモニター機としては最適だが硬すぎる気もして、個人的には本機よりST-54の方が気持ちよく聴けたりする。しかし情報量は高く、十分常用機として使える事は確かだ。
 しばらくお休み後、通電したらまたプチッノイズが時々入るようになった。全ボタンを連打すると収まったが、本質的にはSWを外して洗浄した方がよいと思う。でもメイン機じゃないので誤魔化し使用。

・Marantz ST-54 '89頃 ¥36.9K
 これもひろくんが高評してたのと、出品時に落札値引キャンペーンやってたので購入。
 調整後は十分高音質である事を確認。KT1&2と比べると線が太く元気の良い音という印象。ロック系に合いそうだが、単独で聴いていればクラシックでも特に不満はない。定価からすれば非常に高CPだ。
 日本製とは異なる個性的デザインが気に入れば良。表示がLEDなので劣化の心配が少ない。I/FもST-G5と同じ長押しで1ボタンに2局メモリ型で慣れれば使いやすい。
 大音量で鳴らしたらスケール大で味のある非常に良い音に聴こえた。これがアメリカンサウンドか。適度な高調波or低周波が乗ってるのだろうか、低歪だけが音楽の良さでは無い訳だ。ソロよりはオケの方が合う印象。一方、ピアノソロは音が濁ってるような印象を受けるので線が細いチューナーの方がキレイに聴こえる。むしろ万能では無い所が個性的で良い。
 久しぶりに聴いてたら静寂部でゴロゴロという微かなノイズが入る気がする(季節によっても変わるので室温が影響か?)。似たようなノイズは後期の安い機種(TX-100,G560)でも経験があり、調整し直せば大抵改善するが、やはり廉価機は安部品を使ってるためか安定性に劣るのだろうか。それでも本機は面白いのでサブ機として持つ価値がある。

・Victor FX-E77 '86頃?
 安かったのでシスコンの音サンプルとして購入。検索したが本機のSpec情報は見つからなかった。個人サイトの「オーディオの足跡」に比べて、メーカにはオーディオの文化的記録を残すという意識が無いのだろうか。個人サイトを巡って何とか分かったのは、80年代バブル期ミニコンのFM/AM/TVチューナー。上位にE99シリーズがあってその一段下の中級機らしい。AIWA/マイペースのOEMという説もあった。こっちも詳細情報が出てこないので真偽は不明。
 ミニコンなのに底板が外せる構造で点検修理が容易な造り。資料&参考サイトがないので部品番号から調整点を推測したが、TVやAMに比べFMの調整点が他のチューナーよりずっと少ない事に驚き。
FM部の主要ICは LA1265+LA3401 で、調整点はクォードラチュア検波の同調コイル2個と19kHzフィルタが終段にあるだけ。それでちゃんとチューニングできてる。その後、FE内(何でこんな所)にあるVRでセパレーション調整ができることに気づいた。その結果Specも意外に良くなった。低コスト化のための量産向き設計か。
 音はKT1と比較するとレンジや透明感・分解能は負けるが、結構クリヤで抜けも良い。単独で聴けば十分気持ち良い音で、調整点が少ないから安定性も良さそうだ。ミニコンで聴くには丁度よい音質なのかも知れない。

・ONKYO T-411M '94頃 ¥28K INTEC275シリーズ
 最近の低スペックチューナーの音質チェックとして購入。本機も詳しいSpecが見つからなかった。何とか探せた情報は、発売時期と価格の他は 幅275x高さ79x奥行308mm 2.2kg 歪0.2% ワイドFMとAM STEREOに対応がウリ、といった程度。後継のT-422Mが SN76dB 歪0.2% Sep45dB だから多分同レベルだろう。
 意外なことに使ってるFM関連のICは LA1266+AN7470 で上級機と大差ない。T-422Mの調整記事はあったのでそれを参考として、ICを基準に近くのコイルやVRを試行錯誤調整した。E77よりは調整点が多く、クォードラチュア検波のコイル調整で音色もかなり変化した。SNやレンジ感はそこそこ良い。音のキレや分解能は他のチューナーより明らかに劣る。調整前は三味線がギターに聴こえた位。調整でマシには成ったがアタックは全般にヌルい。スペアナで見ると16kHz以上の落ち込みがKT1より大きい。音の情報量を減らしてラジオ的に聞き易くした印象。本気の音楽鑑賞というより聴きやすさ重視で設計してるのだろう。
(追記)
 T-445XGの調整後に考えたのだが、本機も音質調整で線が細い音に寄せすぎたのかも知れない。響き優先で調整し直したら違った音になった可能性もありそう。しかし既にIFT流用した後なので再現不能。新たに買ってまで確認するレベルの機種じゃないし。
もし持ってる人がいれば、響き重視の調整してみると面白いかも知れないです。但し自己責任。

 ネット検索で T-405W,T-422M,T-433 は取説や解説が見つかったが T-411M は設定法が出てこなかった。一方オークションではまだ出品されてる物もあるので、私が試行錯誤して調べた結果を残しておこう。機種ごとに微妙に異なってるので。
時計:CLOCK ADJをダブルクリックしてADJが表示されたら{←→}で時刻合せ→MEMORY押して了。24時制のみでAM/PMや曜日の機能は見つけられなかった。
PROGRAM:{EVERY|ONCE|REC}のどれかを押してから時計同様に時刻とCHを選び→MEMORYで了。/消去はERASEボタンを押してから{EVERY|ONCE|REC}のどれかを押すと消える。
CH登録:周波数を合せ→MEMORY→CH{←→}で選択→MEMORY。消去はCH表示時にERASE。
CH自動登録:MEMORYを長押しするとAUTO SCANが始まり、見つかった順にCH登録してくれる。
番組名登録:CH選択後、CHARAを押し{←→}で文字選択してMEMORYの繰返し→最後CHARA押して終了。あくまでCHに登録されるので手動Tuneしたら表示されない。
DISPを押すと周波数と番組名が切替わる。
CLOCKを押すと時計と切替わる。

・ソニー ST-V9900TV '88頃 EE Liberty LBT-V9900
 バブル期の最上級シスコンのTV/FM/AM Timer tuner。デザインがESXⅡそっくり(サイズは少し小)で格好いい。ソニーのシスコンレベルはどの程度かと思い購入。これも単体のSpec情報がほとんど見つからない。Libertyは有名シリーズでその最上級機なのに。
 到着時の状況は、表示クッキリ,内部埃多量,AM受信可,FMは典型的な同調点ズレ,局メモリは正常。
本機も調整記事は見つからなかったので、典型的なクォードラチュア検波とみなして基板の部品表記とICとの位置関係から調整点を推測して弄り回し、何とかイイ音になった。
本機もクォードラチュア検波のIFT*2個(T201とT202)の微調で音質がかなり変わる。Pfのアタックがなるべくキレイに聴こえるように調整した。最終的にT201傍のTPが<10mVになるよう合わせれば正常にAuto-tuneできた。
 FEは3段でTV兼用と見えるのに意外なほど感度が良い。ESXも4段でTRIOの5段と張り合ってた訳でソニーの設計は優秀なのだろう。
 音質もESXに非常に近くて驚き。回路的には IC:LA1266+LA3401 の組合せのクォードラチュア検波で歪補正はないと思われるが、少しシットリ感のある音色や音の出方(キレや抜け)はESXと非常に似ている。検波方式よりメーカによるアナログ回路設計の個性の差が大きいと思える。
 さすがにESXやKT1と細かく比較すると打楽器のアタックや残響感が弱いし、重低音も量感不足。これはシスコンの小型スピーカに最適化しているのかも知れない。比較しなければ不満なく聴ける音だと思う。
 コンセント瞬断でも時計がリセットされるのは残念な仕様(多分)だが、局やタイマーのメモリは保持されてるらしく時計を再セットすればタイマーが復活する。時計セットは10キー入力できるので非常に簡単。ということで合理的な設計かも。なお時計の時刻入力は、CLOCK+AM/PM+12時間制+NEXT でできるが24時間制で入力すると点滅し続けるだけではっきりエラーが判らないので当初戸惑った。
 それとTuningツマミはロータリーでなく単に丸い形のUp/Down-SWで、見た目重視だった。商売としては巧い。
 あと他機とMute動作が違うようで、電源オンした後にANTをつないだ場合、選局ボタンを押すまで音が出ない。機種の切替試聴時に判ったのだが、最初面食らった。まぁ普通こういう使い方はしないから問題にはならないだろうけど。
 ESXでベースがよく鳴る音楽を長く聴いてると私は重低音の過剰感を感じるので、BGMとしては本機の方が聴きやすいかも。ただBGM用途なら後に入手した TU-S707 や F-777 の方が向いてると思うので結局出番がない。

 本機入手時、1日数秒単位で時計が遅れ、誤差がちょっと大きすぎ。基板表記によれば CT501:CLOCK ADJ で近くのTP=400kHz に合わせる事で時計精度を調整するようだ。ただ400kHzは簡易オシロの帯域外だったので、何度か試行錯誤することでほぼ正確な精度に合わせた。しかしクオーツ時計と同じなんだから設計次第で無調整にできる筈では…他社のタイマー付チューナーでは調整点自体が見つからないが時計はほぼ正確なので、後から気付いた。ソニー設計陣に妙なコダワリでもあったのだろうか。

・KENWOOD KT-V990 '86発 ¥59.8K
 KT-3030と同じ回路基板使ってるという事で購入。しかしIFT調整しても電圧が3V以下にできず、FMの同調が正しく取れないため一応音は出るもののSTEREOにならない致命的故障。本機はST/モノが完全自動で切替SWはないためどうにもならなかった。
恐らくIFTの容量抜けが原因かと思い小容量コンデンサをパラに入れてみたりしたが全くダメ。やむなく使わないチューナーから7mm角の代替できそうなIFTを探した。
まずT-411Mから取ったコイルは抵抗値が違っていた。試しに交換した所、IFT電圧は0Vに近く調整できたものの両端の赤バーが点滅する状態になり、やはりSTEREOにならない。
次にE77のコイルを外したら抵抗値がほぼ近く、交換後同調に成功。これで調整が進み、完成かと思ったが、半日鳴らした後でTuningするとまた両側赤バー点滅でSTEREOにならなくなった。やはりパラメータや温特が適合してないのだろう。ひろくんの ST-S5ES の記事~によると互換IFTを持つTunerも多々あるようだが、IFTのためだけに買うのもメイン利用する予定もないから勿体ない。
 本機は通電してると内部がかなり熱くなるのも信頼性的には問題か。電源Trの放熱器はESX以上に熱くて触っていられない程。KT1やKT2は少し温まる程度なのでコストダウンのため電源部とか無理してるのかも知れない。
 一日冷却して電源ONすれば正常に同調取れるのでその時に調整して音質比較した。
 音質は聴いた瞬間に判るKT2似(あるいはそれ以上)の深いイイ音系。TVもこの音質で聴けたとしたら当時は大変高CPといえる。でもアタック余裕度は僅かながらKT2の方が上の気がする。歪調整で変わるかもしれないがまともな測定器がないので何とも言えない。
ともあれ高級機並の上質の音だ。しかし今やTV部分は全く無駄だし、オークション価格差は小さいのでやっぱ高級機を狙った方が良いかな。

 前の調整は6~7月に行ったのだが、冬になって久々通電したら連日稼働しても正常にAuto-tuneできる。温度の低さが効くのだろうか。本当に直ったのならラッキーだが。→室温22℃の日に長時間稼働した後、またtuneできなくなった。残念。
 音質は相変わらず重低音量感もあってキレの良い深い音。ところが、Pfのアタックで時々明らかなクリップ歪を感じた。弦楽器でもギターや三味線だと大丈夫。だが、Pfやハープだと酷く、フルートの破裂音でもやはりノイズっぽい症状。
寒さのせいで調整がズレたかのと思ったが、F-120やKT-6040およびソニー機に切り替えても本機ほどではないが同じようなクリップ歪を感じた。スピーカーやアンプも複数台で切り替えてもやはりクリップ感が出たので原因が解らず悩んていたが、チューナーをF-777やTU-S707、KT-770に替えたら多少マシになる事が判った。
 まともな測定器がないため再現性のある実験ができず、未だ完全な証明は得られていないが、スピーカーが高域のスルーレート(SR)の大きな波形に付いていけてないのが原因ではないかと今の所推定している。サブシステムの部屋は暖房を入れてないため今は10℃近い寒さ。そのためエッジが固くなっているのが原因だろうか。でも10℃の日なら確実に出るとも言えないので結局証明は不可能かも。
しかし、各種Tunerの中でも特にクリップ感の強かった本機は特に高SRと思われるので実はかなりスピーカーを選ぶのかも知れない。
 あと本機はESXに似た少し重低音過剰感があるので曲によっては疲れる。個人的好みでは、引き締まった低音を出す TU-S707や Victor系の方がしっくり来る。当然、曲によって低音がよく鳴った方が嵌るものもあるが。

 本機で余りにクリップ歪を感じるケースが多かったので再調整してみた結果、歪み感が大幅に減った。L12,L11,L10辺りの調整が効くようだ。当時の調整が未熟だったか、気温変化が影響するのか。L12の電圧変化は非常に敏感で苦労。ひろくんHPでは20mV以内と書いてあるが頑張って合せても暫く経つとズレている。0.2V程度が限界な気もする。BLUESS氏の記事だとL11はL12と合せてTP7-8間電圧で調整となっているが、L11はTP電圧との相関性は薄い感じで、ひろくんHPの調整法が正道のようだ。その調整基準とされたR16はL17の傍でようやく見つけた。印字が抵抗の真下にあるため少し抵抗を曲げないと判らなかった。でも安定な発振器がないと調整に使えないので、結局耳(邪道)でPfの歪み感が少なくなるように合せた。注意して聴くとPfの強アタックではまだ少しクリップ感があるが一応聴けるレベルになった。
 まぁ手持ちの中でもPfアタックを完全に歪感なく鳴らせる機種の方が少ない。アタックに効く調整ポイントがどこかよく解らないし音源を自在に選べないので調整は難しく、まだ改善余地はあるのかも。一方で原則的に高額機の方がPfアタックの歪感は小さいので機種限界もありそうだ。あるいは部品の劣化もあるのか。
 なお、ひろくん記事でFE調整時の CN3の4pin とあるのはどこだか見つけられず、BLUESS氏の記事にある D42の電圧の方で調整した。両者の情報を総合して参考にさせてもらっている。
 最終的に調整不良の影響が大と思われるが、スピーカーの低温影響は上述の通り他のチューナーでも少しクリップ感があったので無いとも言えず、不確定。最近は気温が上がってきたためか他のチューナーも含め、音が軽くなってクリップ感は薄くなって来た印象。だからスピーカーの温特もあるような気がするが、如何せん印象であって確証は取れてない。

(追記) 1年経ってまた寒くなったら他のチューナーでもPfアタックがビリつく感じが再発した。多少程度の差はあるが多くのSPで同じ様なアタック潰れ感が特に寒い時に出るのでやはりSP側の問題のようだ。暫く大きめの音でSPを鳴らすと少しマシになるし。

 再調整後、本機を長く聴いてたら、確かにイイ音なんだが深い響が強調されすぎてちょっと人為的な感じもしてきた。重低音もESXの様に少しブースト気味。深い音系なら私はKT2の方が上品で好みかな。ひろくんの言う「KT-1010Fよりずっと良い音」説は個人的には異論ありで、KT1シリーズは無色透明系で方向性が違うと思う。
 ともあれ本機は常用して不満のない高音質には違いない。他と比較しない方が吉。

 暖かくなってきたら、Pfのクリップ感はどの機種でも改善した感じだ。やはりスピーカエッジの温度依存も一因だったと思われる。原因特定はなかなか難しいものだ。

・TRiO KT-770 '83発 ¥49.8K
 店頭で「受信できないジャンク品」表示で330円と格安だったので、IFT流用できるかと思い買ったが、なぜか完動品(受信可能という意味で)だった。もしかしてMutingオンでチェックしてたのだろうか。これまで中古入手したTunerはほとんどがMuting切らないと受信できない状態の物ばかりだったからMuteオフでテストするのは中古の常識かと。一方IFTは10mm角で、V990には流用不可だった。
 ということでまじめに調整したらKT1に匹敵する音になった。正直切替えても全く差が判らない。ひろくんHPによれば、本機を基にKT1が作られたのだから当然か。回路的にもほとんど同じでIF=narrowと局メモリ数だけの差らしい。表示はLEDだけなのでKT1のように球切れの心配がない点は寧ろ良。KT1同様非常にニュートラルな音で、一聴大人しくて特徴が薄いから店頭では目立たないかも知れない。ESXやV990で重低音が強調されてるのも店頭で差別化するための営業戦略ではないかと疑っている。低音の出にくい小型スピーカを補正する狙いとも考えられるが…。本機一番の不満点はメモリ6局が少なすぎる事。当時はFM局が少なかったから十分だったのか。
 F-120よりは軽度だが本機にも電源周りのケミコンに液漏れ跡があった。40年近く経ってるのだから仕方ない。音的には問題ないように思えるので今の所放置。局メモリもケミコンだけなのに1wkも保持できてる。意外に丈夫なものだ。

・Kenwood KT-6040 '91発 ¥45K
 定価が安い割に高級機を超える6連相当バリキャップ仕様。で音はどうだろうかと思い購入。6連といってもトラッキング調整は無いのでそれほど高性能という感じはしない。
 基板を見ると歪補正回路を中心にOp-ampが多数使われており従来のKenwoodとかなり違う印象。VR数もやたら多いので調整点を探すのが面倒だった。
 あと本機は同調点コイルがシールドケースに収められてるのが他機種と違ってるが、見せかけでなく実際恐ろしく敏感で先端金属の時計ドライバーでコアを触っただけで値が変動する。よってコアドライバー必須。
 ひろくんのHPに沿って一通り調整したが、翌日になったら同調が全く取れなくなり壊れたかとビックリ。調べた結果、FEの最大電圧を25Vに合せると余裕が殆ど無いためか、いつの間にか27Vの振り切り状態になってたのが原因。そこで最大値を24Vに合せたら安定になった。低コスト化で部品がギリギリの設計になってるのかも知れない。中古入手したチューナーはFE電圧低めになってる事が多かったが、それでも大体は正常にTuning取れたからこの程度は問題ない範囲だろう。
 この時期のKenwoodはFLが安物になってるという話通りで、赤のSTEREO表示が半分暗くなってる。長期使用は想定されていないようだ。従って実は80年代中頃の高級チューナーを入手してメンテした方が長持ちするかも知れない。
 感度は我が家の環境では適当な遠方局が無いので検証できず、Auto-tune時ノイズ電波で止まる事があるから寧ろ邪魔感。Muteレベルを変えられれば良いのだが不明。
 音はこれまでのTRIO路線と違い、無音時に吸い込まれるような静寂感を感じないというのが第一印象。音質はマランツほどではないが少し線の太い音になった感じ。これは失敗作かと思ったが、音楽を聴いてると特にSNが悪いという感じはなく、これはこれで力強いサウンドで十分イイ音と感じてきた。Op-amp多用といい、設計方針が変わったようだ。

 以上、中古なので個体差もあるはずだが、割と系統的に違いが見えたので結構正しい機種評価だろうと思ってる。でも、あくまで個人的な感想。

 高級機の特長は重低音の厚みに出る事が多いが、調べてみたら今やまともなスピーカーも絶滅危惧種でビックリ。現代はスマートスピーカーで音楽を聞く時代か。本格派はシアター向きのトール型か一気に数十万円の海外機になってしまう。昔の30cmクラスの中上級機は殆どない。今のスピーカーが壊れたら中古を探すしか無いみたいだ。しかしスピーカーの中古は確実に劣化してるだろうから今一信用できない。
 幸いにして毎日鳴らしている大型のSS-G5は非常に長持ちしてる。長く使って無かった中型ブックシェルフは最近引っ張り出したらウーファーエッジがボロボロに崩壊してた。まあこれ以上壊れないように祈るばかり。今どき廃棄するのも簡単じゃないし。

 


FMチューナーはオワコンか GT8編

2021-04-12 | Weblog

 KT1で満足した後、そういえば30Tの前、最初に買ったチューナーがあったことを思い出した。部屋の奥から探しだしたのがトリオが組立キットとして発売したケンクラフト/GT-810。これに関してもほとんど記憶がないのでネットで情報を探すと、
Kencraft GT-810 '73年発 定価¥39.8K
 仕様:FM4連AM2連バリコン搭載 キットモデル W400×H140×D330 約7kg ~中身はTrio KT-6005('72発 ¥49.8K)とほぼ同等らしい。そのSpecは 歪0.3% SN70dB Sep≧38dB MPX部=ダブルスイッチング・デモジュレーター方式(D.S.D.) レシオ検波 非PLL MPXで回路はディスクリート
(参考)
BLUESS Laboratory https://bluess.cocolog-nifty.com/labo/2012/10/kencraft-gt-810.html
オーディオの足跡 https://audio-heritage.jp/TRIO-KENWOOD/tuner/kt-6005.html

 さて30Tと交代して以来ほとんど通電もしてなかった物だ。アンテナがM型端子になってるのはトリオが通信機メーカだった名残。もう持ってないので300Ωフィーダーで接続。電源オンすると、なんと我が家で受かる77.7~89.7MHzの放送がキレイに受信できた。周波数もほぼ正確。音質もKT1に近い切れの良い音でびっくり。Specや回路方式が音質の全てではない事が分かる。
不具合点としてはSTEREOランプが点灯しない、Sメータが振れない、照明ランプが一部切れてる位。Tメータは振れ、音はちゃんとステレオになってる。
これなら新たに買う必要なかったかと思った位だが、切り替え試聴するとKT1の方がレンジが広く分解能が高い印象。やはり時代は進歩してたようだ。でも単独で聴いている分にはそれほど不満を感じないレベル。30Tはこれに勝る音質だったはずでやはり相当劣化していたのだろう。
ひろくんの説に反して40年経っても調整が余りずれてないのは「キットで調整不要とするため高級部材使用」という事らしい。再調整すればもっと良くなるかと中を見たら調整部はガッチリ固定されてたので断念。キットといってもコネクタ間の配線をした位で回路そのものは基板で完成していたと思う。
作業してたら電源が入らなくなり壊したかと思ったがヒューズ部の接触不良で挿し直したら回復した。今の製品はヒューズなんて使ってないので時代を感じる。当時はACラインにはヒューズを入れる事が法律で義務付けられていたと思うが、いつ廃止されたのかも記憶にないな。
基板の目視では異常はなく、接触不良を疑い基板コネクタにもスプレーして挿し直ししてみたがSメータは回復せず。断線の疑いもあるがコネクタ部を分解するのは大変すぎ、メインで使う予定もないので再度お蔵入り。

その後スペアナが使えるようになったので改めて特性測定してみたら、やはり10年以上経つと半固定VRはズレてたようでセパレーションが15dBしか取れてなかった。まあこの程度でも聴いてステレオ感はある。実際の音楽はL/Rが混じり合ってるのが普通だからだろう。KT1と比較すれば音が中央に寄り気味に聴こえるのでさすがに特性不足か。
歪も2kHzが-40dB,3kHzが-30dBも出ててちょっと酷い。0.3%Specとしても調整すればもう少し良くなりそうだが、使うわけでもないので断念。
Pilot漏れは-80dB以下と超優秀。
あとスペクトルで、通常出力はLPFにより16kHz超でガクンとレベルが下るのが、REC出力側だと20kHzまでスムーズに見える。私の耳では全く判別できないが。
切替比較してるとKT1の方が色々な周波数でピークが立ち易く、GT8では全般になだらかなスペクトルという印象。特に19kHz近傍の応答は全く違う。回路方式の違いだろうが、これも音の違いとどう関連するかは不明。まだ十分使える音質と思えたが、再々度お蔵入り。

 しかしスペアナ見てると放送局によって高域の落ち方が大きく違う事も判って面白い。ローカル局の方が15kHz超で急激に落ちてる印象。
今や特別なアプリでないとネットアクセスもできないXpノートでも WaveSpectraは十分使えるので古いPCの余生としては上出来だ。ちなみに家庭内LANではWinXpはWin10とWin98の両方からアクセスできるという利点もある…と言ってもWin98を使ってる人も殆どいないだろうが。

(追記)
 改めて Sep調整してみた。幸いなことにSep-VRは縦配置のMPX基板の上方にあって分解しなくても調整可能だった。スペアナ見ながら調整して45~50dBが確保でき、音場が左右に大きく広がった。SNも十分な静寂感。感度もかなり高く、今でも十分聴ける音質だ。シンセのKenwoodとは一味違うが剛直で艶感のあるイイ音と感じられた。線が細く透明感がありアタックが鋭い点は今のKenwoodに通じる音かな。
555ESと比較するとボン付きは無く素直な低域、高域は少し荒くESの方が上品。元気が良い音ともいえる。
FX711と比較するとアタック速度・分解、無音時のSNで負けてるかな。やはり価格と時代の差はあるようだ。
 STEREOランプは単なる球切れで12VのR入LED(赤)を繋いだら無事点滅するようになった。元の電球は固定部ゴムをカッターで切断しないと抜き出せず、リード長もギリギリで交換修理を全く考慮してない設計のようだ。最終的に赤の"STEREO"が点灯するとパネル全体の色バランスが取れて締まった印象になる。
 Sメータの方は感度調整VRを少し回してみたが反応なく、必要性も薄いので断念。
 Muteレベルが低過ぎるせいか信号が強いと選局中ノイズが消えない。ゴーストも受信する。調整できる筈だが面倒なので略。あとオン直後は周波数が目盛と少しずれる。暫く使ってると正常化するので温度の影響だろうか。この辺は時代なりだな。


FMチューナーはオワコンか KT1編

2021-03-22 | Weblog

Twitterの方に注力して、ずっと長文Blogを書いてなかったため趣味の記事でリハビリ始めてみる。Twitterと違い、延々修正が続き投稿までやたら時間掛かってしまった。

 昨年、長い間使ってきたFMチューナー(30T)から遂に音が出なくなってしまった。改めて調べた所、
・Technics ST-9030T '77頃発売 定価80K円
 幅450x高さ92x奥行370mm 7.0kg 歪率:0.08% SN:80dB(mono) 周波数帯域:20Hz~18kHz(+0.1 -0.5dB) Separation:50dB FM専用8連バリコン PLL方式MPX
(参考)オーディオの足跡 https://audio-heritage.jp/TECHNICS/tuner/st-9030t.html

確か数年落ちの現品処分を買ったと思うが、かれこれ40年も使ってきたことになる。日常BGMとして毎日ほぼ付けっ放し。途中でランプが切れ、SWも効かなくなったりしたものの誤魔化して使ってきたが流石に寿命か。
という事で買い替えを考えネットショップで探したら、今やFMチューナーの新製品はほぼ出ていないことにショックを受けた。もう音楽もコンポで聴く時代じゃないということか。量販店でも高級オーディオ製品はまず置いてないし、多数競合していた日本のオーディオメーカもほとんど撤退してるしなぁ。数十年でこんなに社会が変わってしまうとは。
しかしFM放送自体は自動車ではまだ必須な上、帯域も14MHz程度だから敢てデジタル化するメリットも小さく、当分は無くならないだろう。
それでオークションで探したら往年の名機が格安で多数出品されていた。ネット上でチューナーの調整法を公開している「ひろくんのホームページ」「BLUESS Laboratory」があり、調整すればまだ使えそうだ。
測定器はテスター位しか持ってないので完全な調整は無理っぽいが、失敗しても安いなら諦めも付くかという事で自前の調整に挑戦してみることにした。高価な測定器が無くてもこの程度の調整はできるという実例として記録を残しておきたい。

いくつか入札した内で TRIO KT-1010 が数千円で落札できた。出品写真でランプが点灯してないしボタンが一部欠損しているという事で人気が低かったようだ。趣味の品だから確かに外観も重要だ。しかし私の場合は実用重視だから問題なし。
ネットで調べた主要Specは、
・TRiO KT-1010 '83.11発売 定価59.8K円
 幅440x高さ64x奥行317mm 3.8kg SN:88dB 歪率:0.0095% Sep.:68dB 帯域:20Hz~15kHz±0.5dB 5連バリキャップ PLL検波方式
(参考)
オーディオの足跡 https://audio-heritage.jp/TRIO-KENWOOD/tuner/kt-1010.html
BLUESS Laboratory https://bluess.cocolog-nifty.com/labo/2015/07/trio-kt-1010-2-.html
ひろくんのホームページ http://nice.kaze.com/av/kt-1010.html

 なお以降の記事でも標準として、Specに関しては「足跡」、調整法に関しては「ひろくん」「BLUESS」各氏のHPを参考にして詳細は省略している。載っていないものに関しては私の調べた範囲での情報を記述している。

TRIOは元が通信機メーカーだったのでチューナーの評価は全般に高く、本機は中級機ランクの価格ながら高級機並Specで音質も高評価されていた。これの後継機 KT-1010F はオーディオ評論家の長岡鉄男氏が絶賛していたらしい。ちなみに 30Tも長岡氏が推奨してた記事を見て買った覚えがある。実際いい音だった。

さて到着時の状態は、AutoTuningが効き Sメータ感度も十分出た。しかし音はノイズ混じりで歪感あり、音楽鑑賞には全く適さない音質。
出品時のコメントではFM受信を確認とあったので嘘は無かった。ひろくんが繰返し記してる通り「10年も経てば必ず調整がずれている」と覚悟してたので音質もまぁ想定内。ということで調整実行。

チューナー調整に必要な工具類は、
・カバーを外すためのドライバー(主に太めの+)
・潤滑スプレー…堅くなったネジやコネクタの錆を落とすのに活躍。接触不良のスイッチにも有効。
・±100~200mVレンジのあるテスター…今や千円以下で買える。
・時計ドライバーセット…製品によってVR等のサイズが色々なのでセットが必要。本来絶縁型が望ましいが金属製でも大体間に合う。但し回路に影響を与える可能性もあり、調整のたびにドライバーを外して値の確認を繰り返す等ちょっと手間を掛ける必要がある。チューナー回路は全般に電圧低めだが一部は100Vが来てる部分もあるので感電には注意。最近100円ショップでコストダウン目的だろうけど軸をプラスチックにした絶縁型を売ってた。6本組で110円は買いだ。但し先端は金属なので場所によっては多少影響あり、外しての値確認は必要。
・コアドライバー…この時点では持ってなかった。後にRF部の調整で必要になり購入した。RFコアの穴は六角や四角と様々なので、現物を見てから選ぶか、絶縁型ドライバーも入っているセットを買った方がベター。セットでも数百円だし。
・FMトランスミッタ…セパレーションや歪調整に有効。しかしセパレーション調整はしなくても多くの場合問題はないと思うから必須ではない。私のは88MHz近傍しか出せないが、今調べたら2千円位で76-90MHzを出せる物もあるようだ。これならトラッキング調整にも使えるかも。12V電源も必要だが外付HDD等の使わなくなったアダプタがあれば利用可。
・ノートPC…WaveSpectraでスペアナ観測すると調整に役立つ。PCにLINE入力があればアンプのREC OUTからそのまま繋げば良いが、MIC入力しかない場合、普通はモノなので片chずつ差替えて観測する。ステレオミニプラグで両chを繋ぐとMICバイアス電圧がチューナーやアンプにかかるので危険。テスターで電圧測れば分かる。
・エアダスター…基板上に埃があると邪魔だしショートの危険もあるので清掃は大事。
・ピンセット…無くてもいいけど落とした部品やゴミを取るのにあれば便利。
・小型のLEDライト…基板上の文字は小さくて照明がないと判読できない。
・デジカメ…調整過程は逐一記録しておいた方が良い。でないと戻せなくなる。
・部品交換もするならハンダゴテ等も必要だが、経験のない人は部品交換が必要なレベルの故障品はすっぱり諦めて別の獲物を探した方が早いかも。

さて、主にひろくんのHPを参考に、RF部は現状Okとみなしてスルーし、82.5MHzの放送を受信しながら IF段以降をいじってみた。調整してて再現性がないのでVRを色々回していたら段々と音が良くなってきた。今回は調整ズレというより、半固定VRがガリオーム化していたのが主原因だったようだ。
その後、FM同調点とPLL検波部のテスターで測れる箇所はHPの通りに調整。ただ、ひろくんの説明で WIDE GAIN の所はちょっと説明が不明瞭で、NARROWと同じ電圧になるようVR1を合せた。シンクロの必要な所は省略。VCOは回してステレオになる範囲のほぼ中央へ。
歪は計測できないので歪調整はとりあえずスルー。後から耳を頼りに暫くの間カバーを開けたまま放送を聴きながらチョコチョコいじって妥協点を探した。私見ではピアノのアタック音や女声のサ行の音がキレイに聞こえる様にするのが判りやすいと思うが、放送次第なので繰り返し調整ができないのが困りもの。自分で納得できるまで時間を掛けることが大事。耳で判別できない調整点は入荷時の位置か、VRならほぼ中央に合わせておけば当面は問題ないと思う。本機は基本的に高音質で調整点は製品Specをギリギリまで追い込むために付いているという感じだ。大体、歪が-40dBか-50dBかなんて耳では判らないだろう。
セパレーションは調整しなくても一応音楽は聴けたのだが、車内でMP3を聴くためにFMトランスミッタを既に持っていたので、L/R片chだけのMP3音源を作って、これを受信しながら反対側の音量が最小になるように調整した。数値は不明だが実用上十分。
後に WaveSpectraWaveGene というソフトでPCをスペアナや信号発生器にできることが分かり、1kHz信号の差から調整し直して50dB位取れる事が確認できた。
Pilot信号は当初無視したが、スペアナが使えるようになって19kHzピーク最小になるよう調整した。本機では VCOも19kHzに強く影響するので先にVCO調整をしてからPilot Cancel部の調整をしなけれなならないようだ。L/Rのバランスも重要で片chずつ結構根気がいる作業。最終的にPilot信号が -40dB近く漏れていたのを -60dB程度に改善できた。それでも私の耳はモスキート音が話題になった時にネットに流れた音源で19kHzどころか15kHzもほぼ聞こえなかったレベルなので、違いは判別不能だった。市販でも調整できない機種もあったのでスルーしても問題ないのかも。
WaveSpectraが使えるようになって高調波歪も1kHz信号を入れて2kHz以上の高調波が最小になるように調整すれば良いと判ったが、本機では元々-50dB以下だったので、私の環境ではそれ以上の調整は無理だった。耳での音質判定もそれほど間違っていなかったようで、あえてスペアナ調整までやらなくても十分満足行く音は聴けると思う。
なおAMに関しては一回だけ調整してみたが、私の所だと電波状態が悪くてマトモに受からないし聴くこともないので諦めた。

80年代製品だからケミコンは完全に耐用年数を超えてるが、現実にいい音が出てるから、まイイカの精神。一応目視で焼け気味に見えたケミコン1個を交換したが、換える前もしっかり音は出てたのでそのままでも使えそうだった。オーディオ全盛期の製品なので比較的良い部品が使われていたのかも知れない。無論ケミコン全部交換した方がいいに決まっているが部品代と交換の手間を考えると別の出品物を探した方が安あがり。という事でスルー。
 最後にカバーを閉める際、家電では主にタッピングネジが使われてるから角度が合ってないと固くて回らない事がよくある。無理に回すとネジ山を壊すので角度や場所を変えて極力スムーズに回る所を探す事が肝要。

以上、かなりイイカゲンな調整だと思うが、結果的に高SNで透明感のある素晴らしい音質になった。特に無音時の静かさが絶品で、吸い込まれるような静寂感には感激した。楽器の音もキレがあって分解能が高い。多分 30Tは気づかぬ内に相当劣化していたということだろう。
FMチューナーの音質は電波レベルでも大きく変わるし、当然アンプやスピーカーにも左右されるし、主観も入る。さらに中古だと部品の劣化具合も個体ごとに違うので、これがこの機種の音だ、と断定は難しい。でも複数のチューナーを聴き比べた結果、やはり世間の定評と同じ傾向の印象を受けたので、私の耳評価もまあまあいい線行ってるんじゃないかな~。
操作面でもシンセ式はバリコンに比べ選局が断然楽。もうバリコン式には戻れないな。以後、メイン機と設定し、KT1と略称で呼ぶ。
これが数千円とは申し訳無いぐらい。テスターしか持って無くても落札してTRYする価値はあると断言しておこう。人に渡すわけじゃなければ自己満足できれば勝ちだ。30年前の製品でもまだまだ使える。
FM放送は良いチューナーで聴けばCDにも負けない音が出るという事が確認できた。

 チューナーは部品の故障より調整ズレによる不調で出品される例が多い様だし、アンプに比べれば軽量かつ端子接続も少ないため作業しやすい。もう有力な新製品も出そうにないからオーディオ機器では特に実用的だと思う。
落札で狙うなら、寧ろ調整点の多い上級機の方が変化が独立してるので失敗が少ないと思う。Fコネクタ付の方が接続が安定で楽。できれば点検蓋の付いてる物の方が作業性が良い。
なおRF部の調整は非常にシビアで、ミスって放送が受信できない状態になってしまうと、まともな測定器がないと修復も難しい。
中古品の状態は千差万別だし、部品が壊れている場合には原因を見つけるにもかなりスキルが必要。なので音が出ない物は素人には無理筋で、最初は受信確認済と書いてある物を狙った方が良いだろう。
到着時に音がキレイに出ている様に思えても10年以上前の製品なら調整することでさらに良い音で聴ける可能性は高い。無論作業中にミスして壊しちゃっても当方は責任取れないので、授業料として許せる額で落札しよう。

 最近の中価格帯チューナーだと歪率0.2~0.5%なんて低Specで、全く買う気が起きない。この程度でも聴いて違和感ないのかも知れないが、FMは基本的にアナログなので音作りに力を入れていた時代の物と、この程度でいいやという製品とではやはり到達点も違うはずだ。だから中古品を再調整した方が良い音が聴けると思う。ま、最近のチューナー持ってないので実際に比較はしてないから断定はできないけれど。
なお最近の製品だとレシーバーアンプの様な小型複合タイプが増えてるが、中身がユニット化されてて調整不可な物もあるし、分解からして難しいと思われるので、中古落札では避けた方が無難。

 と、ここで満足していれば平和だったのだが、このKT1が中級機というなら上級機は一体どんな音なのか、と昔のオーディオマニアの虫が騒ぎ出してきて、チューナーコレクターへの道に嵌ってしまった。

 


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